意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「スマホ認知症」です。


ダラダラ長時間のスマホ使用による脳へのリスク

「スマホ認知症」という言葉が話題になっています。スマートフォンを長時間使用し続けることにより、集中力が低下し、注意散漫や記憶力減退など、認知機能が低下する可能性があるといわれています。ただ、まだ研究段階で、医学的な用語ではありません。

東北大学助教の榊浩平さんの著書『スマホはどこまで脳を壊すか』がベストセラーとなり、この言葉が注目を集めました。東北大学加齢医学研究所と仙台市教育委員会の共同プロジェクトが約15年間続けた、子どもの生活習慣と学力テストの相関関係の研究によると、スマホの使用時間が多いほど成績が低下するという結果が出たそうです。その後、脳の発達の研究により、毎日インターネットを使う子どもたちは前頭前野の発達が遅れて、思考力や記憶力、コミュニケーション能力に悪影響が出ていることがわかりました。

大人でも1日に5~6時間以上ネットを見るのが習慣になっている場合は、脳疲労を起こし、スマホ認知症のリスクが高まるとのこと。特に、寝る前のダラダラ使用は睡眠中の脳の情報処理を妨げ、翌日の思考や判断に影響を及ぼすので、注意が必要なのだそうです。

一方、アメリカのテキサス大学などのチームが『ネイチャー・ヒューマン・ビヘイビア』誌に発表した、高齢者に関する研究では別の報告もありました。平均年齢68.7歳の約41万人を追跡した研究によると、パソコンやスマホなど、デジタル機器を日常的に使う高齢者は、老年期の認知機能障害リスクが半分以下に。ビデオ通話やメッセージ交換など、複雑な技術を駆使して脳を刺激し、人と繋がることが認知機能維持に有利との見解です。ただし、こちらも長時間の使用や、漫然と画面を眺める、記憶を機械に頼るなどによる悪影響は指摘されています。

やはりスマホは適度な使い方が大切ですね。スマホを眺める時間ばかりが増えると、認知症以前に広く情報をとることができなくなります。デマや陰謀論が出回る時代、自分の思考が偏っている可能性を考えるためにも、実際に見聞きしたことをもとに判断すること、対面によるリアルなコミュニケーションが必須なのだろうと思います。

五十女ケイ子解読員から一言

推しの情報を見たり仕事用ツールにもしているので、全部これ一台ですむスッキリさに心地よさを感じていけません(この文もスマホで書く私)。でもインスタをしているご老人には憧れます。スマホに支配されずカッコよく操れる自分でありたいですね。

解説員

Profile

堀 潤

ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜18:00~19:00)が放送中。新刊『災害とデマ』(集英社)が発売中。

解読員

Profile

五十女ケイ子

そおとめ・けいこ イラストレーター。楽 しいグッズが買える、五月女百貨店が好評。細川徹との共著、 ゆるくておバカな昔ばなし『桃太郎、エス テへ行く』(東京ニュース通信社)が発売中。

写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

anan 2462号(2025年9月10日発売)より

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