今、ドラマに映画にと、存在感を放っている青木柚さん。「ずっとひねくれてきた人生」と語る青木さんの、じつは誰より素直なのでは、とも思わせる人となりに触れてみました。


青木柚さんは、“ただそこにいる”を演じられる俳優だ。“ただそこにいる” だけのようなのに、役の葛藤だったり悲しみだったり、優しさだったりを滲ませ、こちらの想像力を喚起してくる。だからこそ、もっと見ていたい、もっと見てみたい、と思わされてしまうのだ。

── 目の前に控える舞台『ピーターとアリス』は、「不思議の国のアリス」のモデルとなった80歳の女性と「ピーター・パン」のモデルといわれる35歳の青年の邂逅の物語です。約3年ぶりに舞台出演を決めたのは?

自分の中で変化になる気がしたんです。自分がピーター・パン役をやれるってすごいチャレンジだし、新しい何かを得られるんじゃないかと思ったんです。

── ピーター・パン役が大きい?

ミュージカルの印象が強いけれど、それとはまた違ったピーター・パンを肉体で表現するのは新鮮だなと思いました。キッズでいたい気持ちはとてもわかりますし。

── どんなところが?

やっぱりどこかしらあるんです。仕事はちゃんとやるけれど、どんなことにも遊び心を忘れずにワクワクできる人ってカッコいいなと思っているんです。

── 本作は、ふたりの会話を軸に、現実の世界にピーター・パンと不思議の国のアリス(古川琴音)が登場し、現実とファンタジーが交錯してゆきます。人生の苦味も感じられる作品ですけれど、脚本をどう読まれましたか?

読み進める最中から面白い! となりました。世界観はファンタジー要素があるけど、シリアスな空気が常に漂っていて、まさに演劇でやることに意味がある作品だし、自分は多面的な人間像だったり作品に惹かれるのですごく好きでした。熊林(弘高)さんの演出を受けてみたかったのでとても嬉しかったです。

── まだ稽古が始まったばかりとのことですが。

今は、キャスト全員集合しての本読みの段階なんですけれど、熊林さんが他の方にかける言葉も全部が役のヒントというか…吸収できることが多くて。これから仕事を続けていく上でも学びになるようなことが多いです。

つねに聞く耳と考える心のバランスは考えています

── 今回の出演を決めたのには、前回出演した舞台、岩松了さん作・演出『カモメよ、そこから銀座は見えるか?』での経験も大きかったのかなと感じました。

熊林さんと岩松さんでは演出の仕方が全然違いますが、どちらも一回自分がゼロにされるような、リセットされる感覚があります。今まで持っていたものを一回すべて手放してみる時間をもらえるというか。もちろん根っこには持っているんです。いまだにあの作品の全部を理解できてはいないけれど、自分の中にすごく残っているし、形には残らなくても記憶には残る、みたいなのが舞台のいいところなのかなって、思っています。

── 岩松さんの舞台は、説明的な部分が少なく受け手の解釈に委ねる部分が多いと感じます。そういう作品の時、監督や演出家にあれこれ質問するタイプですか?

聞けなかったというか、美学として、安易に答えを出そうとするのは違うのだろうなというのを全員肌で感じていて。やっている時は不安ではありましたけど。

── 作り手の美学を感じ取って、合わせていくんですね。

映像でも舞台でも、そうかもしれません。もちろん自分の中で「こうしたい」という気持ちがゼロなわけではないんです。でもそういう自分の考えにとらわれて、エゴにならないようにとは思っています。ただ、作品は監督とか演出家だけのもので俳優はコマ、と振り切ることもできない自分もどこかにいて。聞く耳と考える心のバランスは、つねに考えています。

── エゴを出したくなることは?

あまりなかったですね。子役時代のオーディションでも、身ぶり手ぶりを大きくして自分を活発に表現する、みたいなことにずっと違和感を持っていたんです。

── 子役時代、敢えてそっちを求められることもありましたよね?

できなかった、というのが正直なところかもしれないですね。たぶんそこで器用にできてしまっていたら、今の自分じゃなかったと思います。まだ映画に出たての頃って、自分のこともよくわかっていなくて。でも周りの人が、「柚ってこういう作品に合うよね」とか、「この役ハマるよね」とか言ってくれて、だんだんそれが自分の個性なのかなって意識するようになっていて。最初から自我がなかったのが、今となってはよかったのかもしれません。ただ、たまに当時を思い出して、あの頃は何も考えていなかったけれど自由だったなとか思ってしまって、悩む時もあります(笑)。

最近はあんまり自分に執着しなくていいかなって

── 作品の中に自然と溶け込んでいるリアルなお芝居は、どうやって生まれるのか知りたいです。役を自分の中にどう落とし込まれているんでしょう? 憑依しちゃう方もいますけれど…

あ、憑依しちゃいます。(ケロッと)役が降りてきます。

── 今、完全に、質問を受け流そうとしていますよね(笑)。

いわゆる憑依とか自分がどういうタイプなのかとかはあまり考えたことがないです。ただ、最近は役と自分が真反対だとか、かけ離れている人だとか考えることがなくなってきました。すごい極悪人だなって思う役も、なんかわかる。最初の頃は、自分と役との似たところを探してそこを濃くしていこうって思ってやっていたんですけれど、面白くないなって思い始めて。それだと結局、自分の中にあるものだけしか表現できないですし。

最近は、あんまり自分に執着しなくていいかなって思っています。寄せ集めるんじゃなく、自分から距離を縮めていく。個人的に、生き物として面白いなと思う人に憧れがあって、自分はそうなれないとはわかりつつ、今は自分なりに役に取り組んでいます。今までは、自分を俯瞰するところが長所なのかなと思っていたんですが、それだけじゃつまらないというか。俯瞰している自分を超えられたら、すごく面白そうだなと思います。

── 幼少期にアイドルに憧れていたそうですが、それで子役になられたんですか?

ちっちゃい時の写真を見たら、突っ張り棒の上にガムテープでおもちゃのマイクを固定してスタンドマイクにして歌っている写真ばっかりなんです。目指してたのは絶対にアイドルですよね。

── それがなぜ俳優に?

なんででしょう。気づいたら、そっちの道を選んでいなかったです。何かのお告げなのか…「お前は違うよ」って。

── 今は憧れはないですか?

自分がやりたいというのはないですね。見るのは好きですけど。

── 子役を始めてから、お芝居は楽しかったですか?

すごく楽しいわけではなかった気がします。当時は何も考えず、習い事の一環みたいな感覚でしたけど、いま思うと、なんでやり続けたんだろうって思っています。

── 辞めたい、もなかった?

節目節目ではたくさんありました。僕だけに限った話じゃないですけど、オーディションってものすごい数を受けるんですよ。それに落ちるたびに、向いてないから辞めようと思うんだけど、じゃあ辞めて何すればいいかわからないし、決断する勇気もない。結局人生の半分以上やってきて、自分は特技もないし、他に何ができるんだろうって思いながらズルズル続けてきたら、ちゃんと続けられるようになった感じで。

── でも当時なら、辞めても普通に学生なわけですし。

それが芸能高校だったことが大きかったと思います。絶対頑張らなきゃいけない環境を、自分で選んでしまったんです。仕事がある人は学校を欠席するから、仕事量の差が目に見えてわかってしまう。苦しいし悔しいし、仕事したい、みたいな感覚になって頑張れたというのはありました。

── でも芸能高校に入ったということは、本心は続けたかった?

進路に迷った時に、勉強以外の選択肢として浮かんできて…。

── ここまでの取材で、高い壁に挑戦していくタイプなのかと思っていたのですが、楽な方を…。

そうですね…。ずっとひねくれてきた人生というか。ちゃんと学業もやるけれど、いま思うとその場しのぎみたいな感じだし、尖り切った個性もないし。だから今、偶然ご縁が重なってここにいられている気持ちが強いです。挫折したエピソードはたくさんあるけど、作品や出会いに恵まれている今、それを話して何になるのかと思ってしまうくらいにはひねくれてます(笑)。唯一、辞めずにやり続けてきたことだけは、過去の自分に対して「よくやった」と思えることですね。

── こんな大人になっていきたい、みたいなことはありますか?

わかったふりをしない大人になりたいです。なんでも言葉にしたら満足してわかった気になってしまうけれど、そこにとどまらないで柔軟な人でいたいです。

── 青木さんというと、“映画の人”というイメージが強いのですが、やっぱり映画にこだわっていこうと思っていますか?

今は、自分はこうだから、みたいな考えにとらわれているような状況ではない気がしていて、映画も、それ以外の表現での作品も大切にしていきたいです。まずは今やれることをやって、そこからどうしていきたいかを考えるのが自分らしいのかなと。

でも、それこそピーター・パンじゃないけれど、子供の頃の冒険心とか夢とか、叶えられることは全部叶えて……って今、カッコいいこと言おうとして、自分で引いちゃいました。あぶない(笑)。小さい時の自分が思い描いたものが叶ったら嬉しいし、過去の自分にも喜んでもらえたらいいですね。

Profile

青木 柚

あおき・ゆず 2001年2月4日生まれ、神奈川県出身。2010年より活動をスタートし、映画『14の夜』『アイスと雨音』などに出演。2021年のドラマ『きれいのくに』で注目を集め、ドラマ『往生際の意味を知れ!』などに主演。近作に、映画『秒速5センチメートル』、ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』などがある。

information

舞台『ピーターとアリス』

2月9日(月)~23日(月)東京芸術劇場 プレイハウス、2月28日(土)~3月2日(月)梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演。作/ジョン・ローガン 翻訳/早船歌江子 演出/熊林弘高 出演/古川琴音、青木柚、佐藤寛太、麻実れいほか https://www.umegei.com/peteralice2026/

写真・小笠原真紀 スタイリスト・杉浦 優 ヘア&メイク・菅野史絵 インタビュー、文・望月リサ

anan 2481号(2026年1月28日発売)より
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No.2481掲載

しいたけ.カラー心理学2026

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