左から、高生紳士さん、ディズムさん

テーブルトークRPG、略してTRPG。その名の通り、会話をしながら独自のゴールを目指すこのゲームの人気がますます拡大中。今回は魅力を外に広げている高生紳士さんとディズムさんが登場、今の楽しみ方を教えてくれました。

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    Profile

    高生紳士

    たかお・しんじ ニコ動やYouTubeでTRPGのセッション&リプレイや「歌ってみた」などの動画を配信。配信グループ「ピースアパート」と「あたたかくなる」のリーダー。ポートレートイラストを手がけたのは高桐さん。

    ディズム

    シナリオライター、ストリーマー。TRPGエンタメ集団「驚天動地倶楽部」の代表。自身のシナリオの舞台化だけでなく、リアル脱出ゲームに声優として参加をするなど、活動の幅を広げている。

    TRPGって何? どうやって楽しむ?

    ── ディズムさんにご登場いただいた

    のアナログゲーム企画で、弊誌はほぼ初めてTRPGの記事を掲載したのですが、その反響がとても大きかったんです。

    ディズム 本当ですか? それはめちゃくちゃ嬉しいです。

    ── ということで、今年は作家とプレイヤーの立場からシーンの現状や今ならではの楽しみ方について語っていただきたいのですが、別の角度からも魅力を分析したく、もうお一人ゲストをお迎えしました。

    高生 こんにちは、高生紳士です! よろしくお願いします!

    ── まずは高生さんのTRPGの楽しみ方を教えていただけますか?

    高生 僕は、キャラクターを作り、そのキャラでのロールプレイに重きを置いています。ゲームのセッション(プレイしている様)配信はもちろん、キャラでグッズを作ったり、「歌ってみた」動画の配信なんかもしています。

    ── それはどういう内容なんですか?

    ディズム 高生くんと僕の楽しみ方って、同じプレイヤーでもまったく違うんです。分かりやすく言うならば、僕はシナリオを楽しみながらゲームをクリアすることが目的の人。一方、高生くんはキャラを作ったり演じたり、物語が持つドラマティックさを深く追求することに喜びを見出すタイプ…と言うと分かりやすいかな?

    高生 そうだね。

    ── なるほど。改めてTRPGとは何かを、ごくごく簡単に教えてもらってもよいでしょうか?

    ディズム シナリオやルールをベースに、参加者全員が会話をしたり、ダイスを振ったりしながら物語を作り上げていき、1つの結末にたどり着くゲームです。参加者はゲームマスター(GM)などと呼ばれる進行役が1人と、それぞれキャラクターになりきる(=ロールプレイ)プレイヤーがいます。GMがルールやシナリオを元に物語の状況を説明、プレイヤーはダイスで行動を決定しながら結末に向かっていく…という内容ですね。

    キャラクターを作り、なりきる楽しさとは?

    ── その“キャラクターになりきる”というところが、高生さん的には一番楽しいポイント、ということですね?

    高生 そうです! 例えば自分が何か好きな物語の中に入れるとなったとき、自分が好きなキャラを演じたくないですか? 僕は、“眉が太くて金髪か黒髪で、筋肉質より普通の体型かちょっと細いくらいの体型で、どっちかっていうとかっこいい男の子”がいいんですよ。そういう“自分の好き”を詰め込んだキャラを作って、それになりきってプレイするのが楽しいんです。

    ディズム 僕はキャラとかよりも、物事を円滑に進める役割がやりたい。

    高生 だからディズムはGMをたくさんやってるってことなんじゃない?

    ディズム そうか(笑)。

    高生 あと、TRPGって物語が進むにつれて危機に直面したり、選択を迫られたり、自分でも気が付かなかった内面が露呈したりするんだけど、そういうときに開示されたらおもしろいであろう“何か”の設定は、必ず作ります。そのキャラクターとしての夢や目標、あるいは心の奥底に抱えているネガティブな感情とか。

    ── それは、ゲームをプレイするどのくらい前から作り始めるのですか?

    高生 1か月くらい前から考え始め、1週間前には出来上がっています。

    ディズム さらに高生くんみたいな配信者の場合、絵師さんに頼んで、自分が考えたキャラクターの絵を描いてもらうことが多いんですよ。僕もイラストをお願いすることはありますが、「熱血なキャラなのでちょっと暑苦しい感じで~」くらいのリクエストだけ。高生くんみたいに細かく希望を出したりはほとんどしません。

    ── 熱量はそれぞれなんですね。

    高生 僕らは仲良くなって5年くらいなんですが、あまりにスタンスが違うので、「あの二人、なんで一緒にいるんだろう」ってよく言われてます。でも、正反対の二人でも仲良くなれるのがTRPG(笑)。

    ディズム 懐の深いゲームです(笑)。

    ── 高生さんは、プレイするごとにキャラクターを作るんですか?

    高生 そういう場合もありますし、気に入ったキャラは別のセッションで使う場合もあります。かつては2週間に一人のペースで生んでた時期もあって、でも増えすぎると愛が行き渡らなくなっちゃうんですよ。だから今はあまり増やさないようにしています。2019年から今までで、119人います。あ! あと、僕自身より“僕が作ったキャラ”のファンになってくれる人がいて、そのキャラの絵や文章を僕にプレゼントしてくれるのもすごく嬉しい。

    ディズム いわゆる“ファンアート”ですね。

    高生 そう。TRPGの配信をやっている上で僕はそれが一番嬉しい。演じているとはいえ、キャラクター設定もアドリブで出るセリフも、すべて僕の脳が生み出すものであり、僕自身が入っているわけじゃないですか。だから“このロールプレイがよかった”と褒めてもらえたり、そこを絵にしてもらえたりすると、本当に嬉しい。

    高生さんが生んだキャラは、119人!/サイト「高生宅」には、イラストはもちろん、全員それぞれ年齢、誕生日、身長、職業、ちょっとしたエピソードが書かれていて、その設定の完璧さにびっくり。BOOTHではキャラの立ち絵をまとめた「立ち絵まとめ本」や、クリアファイル、アクスタなどグッズも制作&販売しており、その展開力にも脱帽。

    ── ディズムさんは、作家であり、さらにこの1~2年はご自身のシナリオを舞台上でプレイするという挑戦をしていますが、TRPGをやっている上で、一番楽しいこと、嬉しいことはどんなことですか?

    ディズム 僕にとっても“即興”は喜びと密接ですね。僕は自分で書いた「カタシロ」というシナリオを本当に何回もやっている中で、展開も、セリフも、そして結末もプレイヤーごとに全部異なるわけで、僕はその都度その都度素晴らしい物語を体験させてもらっているんです。何度もやる中で気が付いたんですが、極端に言えば、まだ見ていない光景や知らない展開、終わり方、セリフなど、まだプレイしていない人の分だけ残っているわけじゃないですか。それをもっともっと発掘していきたいんです。その思いこそが、僕にとっての喜びなんじゃないかな。「こんな展開あったのか!」みたいな感動を、ずっとずっと求めているんだと思いますね。

    高生 そうなんだよね。即興性こそがTRPGのおもしろさだし、他にはない魅力なんだよね。

    話題を読んだ「カタシロ」の舞台でTRPGの認知が一気に上昇/昨年12月、白石加代子などを迎えPARCO劇場で上演された、ディズムさんのシナリオ「カタシロ」。演劇とも違うスリリングな内容は評判を呼び、今年8月には加藤シゲアキや山里亮太などが参加し、第2弾『カタシロ~Relive vol.2~』が上演された。「ananweb」では、第1弾上演の際にディズムさんにインタビューを実施

    テーブルを超えて、楽しみ方が拡大中

    ── 外側から見ていると、それこそ「カタシロ」がPARCO劇場で上演されたり、高生さんのキャラクターがグッズ展開されたり…など、TRPGはいろんな方向に広がっているように感じるのですが、お二人的にはそのあたりはどうお考えですか?

    ディズム 最近も、オンラインセッションツールのサービスをやっている会社が、池袋にTRPG専門の書店『CCFOLIA BOOKS』を開店したり、あとクリエイターやユーザーが集まる「TRPGサミット」みたいなイベントも開催されるようになったしね。実は僕、そのイベントに参加したことを機に、TRPGをモチーフにしたアパレルを立ち上げるんですよ。

    TRPG専門書店『CCFOLIA BOOKS』が池袋にオープン/TRPGのオンラインセッションツール〈ココフォリア〉が、TRPG関連書籍やルールブックを多数取り揃え、プレイヤー同士が集まり交流や創作を楽しめるスペース付き書店を開店。人気のシナリオはもちろん、初心者でもすぐに遊べるポストカード型のシナリオなども販売。TRPGの世界の入り口にぴったりなスペース。東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F(サイト

    年内に始動?! ディズムさんのアパレル/TRPGモチーフを取り入れた、ディズムさんのオリジナルアパレル『TARI』。ブランド名は“いちたり”と読むそうで、TRPGに欠かせないダイスにかけた名前だそう。現在鋭意制作中。ローンチが楽しみです!

    高生 すごい! そう考えると、めちゃ環境変わったよね。昔はオンラインで友人同士で遊んでいたのが、今や舞台で、観客の前でやるものになった。

    ディズム 高生くんからすると、そういう動きはどう見えるの?

    高生 えぇ~? 何て言えばいいんだろう…もっとやって(笑)。

    ディズム それはよかった(笑)。

    高生 たまに「それはもうTRPGじゃないじゃん、舞台じゃん」っていう意見とかも見ることはあるけれど、僕としては、TRPGを知らない人に、どんなドアからでもいいからTRPGを知ってほしいし、その楽しさを味わってほしいんですよ。だからどんどんやってくれ(笑)。

    ディズム 僕としても舞台は、TRPGを知らない層にアプローチできるすごくありがたい機会なんだよね。それがこのシーン全体にとってプラスになっていてくれたら嬉しいよ。

    高生 TRPGの話をすると、よく「難しそう」とか「真面目な人がやってそう」みたいなことを言われるんだけど、そういう人こそ舞台の「カタシロ」を観れば、実は難しくないことが分かってもらえると思う。

    ── この対談を読んで、「とりあえずちょっと覗いてみたいな」と思った人は、何からやるのがおすすめですか?

    高生 個人的には、TRPGというゲームの仕組みを知ってもらうことが第一歩かな、と思っていて。それが分かってから、実際にシナリオをプレイする、誰かがプレイしているセッション動画を見る、あるいはセッションを振り返るリプレイ動画を見る…っていうところに進むのがいいと思うんです。

    ディズム そうだね。高生くん的におすすめの動画はある?

    高生 むつーさんのシナリオ「傀逅(かいこう)」を、僕とにどみさん、むつーさんらとやったリプレイ動画「たかにど傀逅」かな。TRPGとはなんぞや? を理解できるし、情緒もちゃんと揺さぶられると思う。あとディズムの「カタシロ」の動画もおすすめ。

    ディズム ありがとう(笑)。「カタシロ」の動画はYouTube上に本当にいっぱいあって、芸人さんがプレイしているものもあるから、知っている人の名前があったらぜひそれを見てくれると嬉しいです。シナリオは、僕は高生くんとプレイするために書いた「ロールシャッハシンドローム」っていうのがおすすめです。

    高生 あれはおもしろい! あのシナリオ、たぶん僕、ディズムより回してると思うよ(笑)。

    ── では最後に、TRPGにまつわるそれぞれの夢を聞いてもいいですか?

    高生 大きなところでは、僕が作ったキャラでアニメを作りたい! あと、カプセルトイの景品とかである、ボタンを押すと声が流れるボイスドロップを、キャラのセリフで作りたいです。

    ディズム いいね、即興で出たセリフとか拾えたらおもしろいよね。

    高生 そうそう。熱いよね。

    ディズム 僕は…、「カタシロ」をブロードウェイでやりたいです(笑)。PARCO劇場で上演したとき、スタッフの方が上演する前は若干不安そうだったのが、回を重ねるうちに「今日はどうなると思います?」みたいにワクワクしてくれていて、僕はすごく嬉しかったし、そこに可能性を感じたんです。だからいつか、ブロードウェイでキアヌ・リーブスと「カタシロ」ができたら…嬉しいです。

    高生 大きく出たね~!(笑)

    ビギナーにおすすめのシナリオ&動画

    「ロールシャッハシンドローム」。ハイキング先でひょんな事件に巻き込まれる物語。2人プレイ可能。¥1,000(ディズムストアー

    高生さんおすすめリプレイ動画「たかにど傀逅」。クオリティの高さにびっくり。未完結なので追うなら今! YouTube高生紳士チャンネルで見られます。

    写真・多田 寛(ディズムさんのアパレル) 高桐 取材、文・河野友紀

    anan 2473号(2025年11月26日発売)より
    Check!

    No.2473掲載

    カルチャーを感じる、ゲーム案内2025

    2025年11月26日発売

    川村壱馬さんのゲーム愛インタビュー、大ヒット作『都市伝説解体センター』の魅力解剖、可愛いドット絵ゲームが人気の「カイロソフト」紹介、ボドゲからTRPGまで取り上げたアナログゲームガイドなど、今回もゲームの楽しさと魅力をたっぷりとお届けします。

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