長く寒い冬を乗り切るため北欧では様々な織物が作られてきた。それは手工芸となり、部屋を彩るインテリアとなり、やがてアートへと発展した。そんな北欧の手仕事の歴史と魅力を一望できるのが本展だ。
ミッドセンチュリー期の名作から知る、北欧暮らしの本質
北欧テキスタイルの原点は、名もなき農家の女性たちが家族のため、嫁ぐ自身のために織った手仕事。会場では、膨大な時間と手間を感じる手仕事から展示が始まる。19世紀後半になると、工業化の勢いに押され、手工芸で食べていた農村の生産者は困窮してゆく。そんな中、1899年に「スウェーデン手工芸協会」が設立され、人々は手仕事の価値と尊厳を守ろうと働きかける。また「美しいと感じるものと暮らすことが幸せをもたらす」という考え方をスウェーデンの社会思想家エレン・ケイが提唱。この考え方は北欧全域へと浸透し、クリエイターをはじめ民衆から国家に至るまで、すべての人に大きな影響を与えた。
1920年代頃から欧米で広まったモダニズム文化も北欧テキスタイルの大きな転機となった。“伝統からの決別と新しい表現”を追求したこの思想は、北欧の織物技術を芸術の域へと高めた。テキスタイル作家マルタ・モース=フィエッターストロームは、手工芸協会の創設者と共にモダンなデザインの開発などに携わった後、1919年に自身の織物工房を開き、バーブロ・ニルソンら、優れた織り手を集めてラグを製作し、その技術を世界的なものに発展させる。また1930年代から1940年代にはプリント技術が発展。才能あるデザイナーたちが、スクリーン捺染という新手法で作った、自由で大胆なデザインが普及。工業製品のプリント生地から、人々は好みのデザインを選び空間を飾り、服を縫い、日常をさらに美しく彩るように。
本展には特に1940年代から1960年代のミッドセンチュリー期の名作を中心に、スウェーデンとフィンランドの名品が約100点も登場する。
衰退の危機に遭っても、そのたびに復活し飛躍してきた北欧のテキスタイル。本展を観れば、美しい暮らしを追い求めた北欧人の手仕事を敬愛する生き様も垣間見えるはずだ。

作者不詳 テーブルクロス 1890年/家で過ごす時間の長い北欧では、昔から家族のためを想って作ったハンドメイドのファブリック類が充実しているのが一般的だった

マイヤ・イソラ プリント布《ウニッコ》 1964年〔マリメッコ〕/デザイナー、マイヤ・イソラの代表作、ご存じケシの花をモチーフにした花柄「ウニッコ」は、今やマリメッコを代表するアイコンに

アグネータ・フロック タペストリー《ハンモ ックのデヴィッド》 1990年/スウェーデン生まれのテキスタイル作家・切り絵作家アグネータ・フロックの作品は写実ではなくファンタジー性や寓話性が特

左から、アンナ=カーリン・ヨブス・アルンベリ ジャケット 2004年、アンナ=カーリン・ヨブス・アルンベリ ミトン 2020年/スウェーデンのテキスタイル作家で刺繍家のアンナ=カーリン・ヨブス・アルンベリの作品は現地ダーラナ地方に伝わる刺繍技法ポーソムを継承。
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北欧のテキスタイルと暮らし展 Beauty for All
日本橋髙島屋S.C. 本館8階ホール 東京都中央区日本橋2-4-1 開催中~3月16日(月)10時30分~19時30分(最終日は~18時。入場はいずれも閉場の30分前まで) 無休 大阪髙島屋 7階グランドホール 大阪府大阪市中央区難波5-1-5 3月25日(水)~4月13日(月)10時~19時(最終日は~17時。入場はいずれも閉場の30分前まで) 無休 一般1200円ほか TEL. 03-3211-4111(代表)
anan 2487号(2026年3月11日発売)より












