
Ⓒフジテレビジョン Ⓒ長岡弘樹/小学館
2020年の1作目放送から瞬く間に話題となった人気シリーズ『教場』。なかでも目を引くのは、主演・木村拓哉を囲む、歴代豪華な生徒役のキャストだ。“警察学校”が舞台という稀有なテーマで、なぜ次代の最注目俳優たちが目指す場となりえたのか。
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“風間教場”。それは次世代スターへの扉
警察学校の鬼教官・風間公親(かざま きみちか)が、警察官になる適性のない生徒たちを冷徹にふるい落としていく。
警察小説の新境地としてベストセラーとなった長岡弘樹の同名小説シリーズを原作に誕生した木村拓哉主演ドラマ『教場』が初めて放送されてから6年。SPドラマ2作と連続ドラマを経て、二部作として映画化された人気シリーズは、ついに後編『教場 Requiem』が公開された。
警察学校という閉ざされた空間で、さまざまな背景と動機を持つ生徒たちが事件を引き起こすなか、彼らは風間の冷徹さの奥にある真意を知ることになる。サスペンスのみならず、人間ドラマとしても堪能させてくれるシリーズだが、生徒役の顔ぶれも大きな魅力。
いわゆる学園ものは新人の登竜門だが、『教場』シリーズは少々違う。『教場』では主演級が揃い、『教場II』では、いまや時代の顔となった存在たちがキャスティングされてきた。最新作の顔ぶれは、まさに次代の顔となるべき注目株が集結。物語と併せて、その輝きも見逃せない。
『教場』(2020年)
元小学校教師の宮坂(工藤阿須加)、警察官の息子・平田(林遣都)、美貌を自負する菱沼(川口春奈)、ある目的のために警察官になった楠本(大島優子)ら、さまざまな生徒たちが、風間に退校届を突きつけられていくなか、「警察が嫌い」という都築(味方良介)は、風間が教官に転身した理由を調べ始める。
『教場II』(2021年)
親の意向どおりの生き方に抵抗する県警幹部の息子・杣(目黒蓮)、白バイ隊員を目指す鳥羽(濱田岳)らが、風間との対峙を通して、自身と向き合っていく。「冷徹さの奥にある優しさが前作で明らかになっている。事件の性質も違ったり、風間のまた違う一面を見せる面白いアプローチができた」(中江功監督)
『風間公親-教場0-』(2023年)
警察学校赴任前、風間が“刑事指導官”だった時代を描く連続ドラマ。赤楚衛二、新垣結衣、白石麻衣、染谷将太、北村匠海が演じる新人刑事たちが、次々と“刑事失格”の烙印を押されていく。「立派な警察官を育てなきゃいけない。風間が変わらず持っている信念を見せることが一番でした」(中江監督)
NEW! 映画『教場 Reunion/Requiem』(2026年)
警察学校での日々を第205期生の門田(綱啓永)がカメラで記録するなか、新たな事件が。一方、風間の教え子の刑事たちは、風間の右目を奪った十崎の行方を追っていた。『教場Reunion』(Netflix独占配信中)に続き、『教場 Requiem』(公開中)を劇場でというスタイルも話題に。
中江功監督に聞く、『教場』シリーズの軌跡
企画からプロデュース、演出を担当し、最新作でも監督を務めたのが中江功さん。このムーブメントはどのように立ち上がり、ここまで大きくなったのでしょうか。
お話ししてくれた方
Profile

中江 功監督
なかえ・いさむ 1963年生まれ。『ひとつ屋根の下』、『Dr.コトー診療所』シリーズなど、数々のヒットドラマを手がける。木村拓哉とは『ギフト』『眠れる森』『空から降る一億の星』など数多くのドラマを一緒に作ってきた。
「面白いほうが優先」。脚本・君塚良一の哲学
「木村拓哉で単発ドラマをやろうということで、いくつかの原作小説のなかから本人が選んだのが『教場』でした。警察学校という題材は地味ですし、白髪の50代の教官という役ですけど、いままで見たことのない木村拓哉が生まれるかもしれない。そこから正月のSPに、せっかくなら二夜にと少しずつ決まっていった感じです」
中江功監督は、第1作『教場』の立ち上げから関わってきた。当初は、シリーズ化は想像もしていなかったそう。
「求められていないものを作ってもしょうがないですから。評判が良かったら、そこで初めて続きをやりますかとなる。『教場』の最後のシーンに、『教場II』の生徒たちが一部いますが、最後の最後まで見てもらおうと、ネクストブレイクの人を呼びました。でもその時点では、続きをやろうなんてまったく思っていませんでした。風間と(宿敵である)十崎が屋上で対峙するシーンも原作とは違います。台本にもなかったんですが、何かインパクトが必要だと思って入れたんです。“エンタメは面白いほうが優先だ”という脚本の君塚(良一)先生の言葉が大きかったと思います。計算しすぎて回収し損なってもいけないし、回収するために何かを振っても面白くない。先のことを考えずに、そのとき一番面白いアイデアをどんどん入れていくと、また新たなアイデアが出てくる、と教えていただきました」
『教場』『教場II』で警察学校の中で紡がれた物語は、『風間公親-教場0-』では神奈川県警を舞台に、風間の過去が描かれる。そして、今作では再び警察学校に。
「君塚先生は、『教場 Reunion/Requiem』で原点の警察学校という閉ざされた空間だからこその面白さに戻りつつ、連ドラで広げた十崎の問題も解決するという、すごく難しいことに挑戦してくださったと思います」
生徒たちの間に生まれる強力な一体感

シリーズを重ねるにつれ、作品の人気とあいまって、風間教場に集まる生徒たちの顔ぶれにもますます注目が集まることになる。川口春奈や目黒蓮、福原遥ら卒業生は、その後、朝ドラや大河ドラマのヒロイン、大ヒットドラマの主演を務める存在となり、幅広い世代の視聴者を魅了し続けている。
「言われてみれば、そうですかね。『I』のときはお正月だし、少なくとも一回は主役を経験している人たちが集まればいいなと探して。『I』で西畑(大吾)くんや大島(優子)さんが入ったので、木村拓哉の後輩やアイドルの方の出演の流れができました」
生徒役のキャストの間には、『教場』シリーズならではの空気感が生まれるようだ。
「“誰が売れているとか、有名だとか関係ない。みんな同じクラスメイトなので、ひとつのクラスとしてちゃんとやってください”という話は一回します。訓練も一緒にするので、それで一体感が出てくる。『I』『II』は生徒みんなで話し合って進めていたなか、今回はそれぞれが自分の考えを言わずに悩んでいたところはありますかね。そんなときには猪狩(蒼弥)が、みんなを引っ張っていた。『II』のときは、矢本(悠馬)くんが、“『I』に負けないチームにしよう”ってみんなのケツを叩いていました」
木村拓哉が作り出す風間教場の緊張感
そうしたなかでも木村さんの存在は大きかったよう。
「『教場』のときは、訓練しているところに制服を着てふっと見に来て、ひと言も喋らずに帰ることがあって。それで、みんなピリッとした。撮影に入っても、合間に雑談なんてしないし、座らない。意識してそうしていたと思っています。今回は生徒たちの緊張感が薄いように感じました。もちろん彼らなりに緊張しているんでしょうけど、合理的な動きをしている感じがする。Z世代なんですかねぇ(笑)。木村拓哉自身も、今回は押し付けてもついてこない世代だと感じて、厳しさはちゃんとありつつ緩めるところもある、といういい塩梅で接していた気がしました。『教場』シリーズは、木村拓哉のそうしたアップデートやずっと第一線でいる人間の凄さを見ることができる場であり、僕自身も若い人たちから教えられる場でもあります」
『教場』シリーズがこれだけ愛される王道エンタメになった理由はどこにあると考えているのか。
「王道を作ろうなんて思ったこともないですし、『教場』が王道だという意識もないです。ひとつの作品を真摯に作っていると、たまたま続いて、たまたま世間からそう言われたならありがたいことだと思います。今回も撮影前に生徒全員と面談したんですけど、みんなに、“ずっと見ていた作品に出られるなんて嬉しいです”と言われると、ああ、そういう作品になったんだなとはちょっと思います」
取材、文・杉谷伸子
anan 2485号(2026年2月25日発売)より












