今年の動きと次なるフェーズを見つめて。小島秀夫監督のこの一年と、これからと

小島秀夫監督

新作の発売など激動の日々を送る小島秀夫監督に2025年の出来事とその時の心情を副音声的に振り返ってもらった。さらに、現在動いている新しいプロジェクトに関する気になるお話もお届け。

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    Profile

    小島秀夫

    こじま・ひでお 1963年生まれ、東京都出身。ゲームクリエイター、コジマプロダクション代表。『メタルギア』でステルスゲームと呼ばれるジャンルを切り開き、ゲームにおけるシネマティックな映像表現とストーリーテリングのパイオニアとしても評価され、世界的な人気を獲得。ゲームや映画などのジャンルを超えたエンターテインメントへも、創作領域を広げている。本誌で「ゲームクリエイター小島秀夫のan-an-an、とっても大好き○○○○●」を連載中。

    ── 今年の大きな出来事として、新作『DEATH STRANDING 2:ON THE BEACH』(以下『デススト2』)のリリースがあると思います。

    新作の発売もありましたけど、今年はコジマプロダクションの10周年でもありましたから、そういう心構えで過ごしていました。2024年の夏くらいから、毎日、朝から晩まで、ゲームを細部までチェックして修正するフェーズに入り、今年の4月にマスターアップ(開発工程が終わり完成すること)しました。ただ、完成したとは思っていなくて。本当はもっと、9月くらいまでやりたかった。でも、『デススト2』がちゃんと世に出たので、計画通りに進んだ一年だったと言えると思います。

    ── リリースされた時の心境はいかがでしたか?

    とにかく評判が気になって仕方なかったです。発売日はいつも、できればすべての情報をシャットアウトして閉じこもりたいですから。映画『タクシードライバー』でカンヌ映画祭に呼ばれて、出演しているジョディ・フォスターと脚本のポール・シュレイダーと監督のマーティン・スコセッシの3人が行った際、スコセッシとシュレイダーは評判を気にしてホテルの部屋から一切、出てこなかったそうです。結局、パルムドールを受賞するのですけどね。でも、スコセッシの気持ちは痛いほどよくわかる。結構、無理をして作っていて、編集の段階でいろいろな攻防戦を繰り返したりもしているので、評価を知るのはキツイことなんです。

    僕たちのゲームは尖っていないとダメだし、ある程度売れないといけない。これが難しい。前作『デススト』が尖りすぎていたので、今作ではどのくらい間口を広げるのか、微妙なバランス調整を重ねました。前作からのファンにそっぽを向かれると困るけれど、かといって、その方たちだけを意識して作ると、他の人が遊ばなくなってしまう。そのバランスをうまくとるにはどうするか? 難易度は? ということをかなり考えました。

    今作にも雪山が出てきますが、前作の2倍高さがある。モニターを集めて1回目にプレイした時、みんなが山の上から一番下まで落ちたんです。一度落ちたらずっと転がっていくので、ほとんどの人が怒っていました(笑)。僕がチェックした時も、3歩進んで10秒休憩するような“行って止まって”を何度も繰り返してようやく登れる感じで。僕的にはこれが最高でしたがさすがにダメだということに。そういうモードを別に作ればよかったですが、結果的には喜んでくださっている方も多くてよかったです。

    ── 6月から11月にかけて、新作の発売を記念した、世界12都市を巡るツアーも開催されました。

    コロナ禍で『デススト2』のコンセプトが変わりました。ネタバレになるので詳しいことは言えませんが、移動ができず人に会えないことが辛く、そしてゲームのコンセプトを体現するために、ワールドツアーで世界中のファンの方に会いに行きました。

    特に印象深いのは、ロンドンで、サムを演じたノーマン(・リーダス)とフラジャイル役のレア(・セドゥ)さんがサプライズで登場したこと。香港では、『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』にも出演している(フィリップ・)ンさんが来てくれました。ブラジルでは、僕を知らない人がいなかったですね。セキュリティの人もみんな「ファンです」と。それならカービィくらい売れていてもええやんと思うけど(笑)、皆さんのリアクションを見ていると、いろいろ乗り越えて『デススト2』を発売してよかったなと思います。

    もはや、自分のためにゲームを作っている感覚はないし、自分のためならこんなしんどいことはしたくないですね。先日、長年通っている病院へ行った時、先生に突然、「小島さんってゲームを作っている人ですか?」と言われまして。話を聞くと、MSX2版の『メタルギア』と『スナッチャー』と、『ポリスノーツ』の大ファンだったらしいです。20年間ずっと気づかなかったのかと思いましたけど(笑)、やっぱり、続けることが大事だなと感じます。同じ時間に起きて、同じものを食べて、同じ店の同じ席に座りますが、僕はそれが心地いい人です。

    ── 4月7日には、TBSラジオで『コジ10 小島秀夫の「最高の10時にしよう」』がスタート。4月18日からPRADAとの展覧会「Satellites」が開催されました。

    ラジオは毎回1時間の放送で、生放送も結構やりました。スケジュールが大変で、ロンドンと香港から中継もしましたね。終わって寂しいです。展覧会はレフンちゃん(ニコラス・ウィンディング・レフン監督)と一緒で楽しかったですし、世界のPRADAにおけるエキシビションでナンバーワンの動員記録だったそうです。

    ── 新作の発売を記念して、全国のPARCOで『デススト2』のグッズなどを販売するポップアップイベントも行われました。

    僕はPARCO世代ですから嬉しいです。そう、12月に大丸東京店の上の一番広いスペースでポップアップストアをやりますので、ぜひ遊びに来てください。グッズは昔からちゃんと作りたいと思っていて。9年前に、世界中のいろいろなスタジオを回った時に、強いスタジオはグッズも全部自分たちで作っていたんです。たとえばWētā FX(ニュージーランドのVFXスタジオ)は、映画のプロップを手掛けているアーティストがフィギュアを作るので、それはもう最高級ですよね。僕もグッズ魔ですが、グッズが次のゲームの間までを繋いでくれるんです。

    ── 9月23日にはコジマプロダクションの10周年イベント「Beyond The Strand」を開催。最新プロジェクトや今後の展望の発表、豪華なゲストの登壇などで大いに盛り上がりました。

    押井(守)さんが面白かったですね。他にも(ギレルモ・)デル・トロやジョージ・ミラーなども集まっていただきました。『OD-KNOCK』に関しては、トレーラーを見ている限りは普通のホラーに思うかもしれませんが、いまだかつてないものになっています。それが何かはまだ言えませんし、うまくいくかどうかもわかりません。今までに見つかってはいけないゲームや配達をするゲームなど、これまでにないものを作ってきましたが、システム的には他のゲームと同じです。それが今作では、システムから違うサービス形態にしようとしているので、かなり挑戦的なものになるはず。トレーラーにヒントをたくさん埋め込んでいますから、ずっと考えていたらわかるかもしれません。

    『PHYSINT』に関しては、諜報ゲームなので、寝ていても作れます(笑)。たとえば兵士がいて潜入して、敵に見つかったら襲われて、一人ずつやっつける時はスニーキングをする…と、どう転んでも面白くなるし簡単に作ることができる。でも、そことの戦いでもあるわけです。今作には新しいギミックが入り、映画とゲームのラインを越えるという挑戦もします。キャストだけでなくスタッフに関しても映画の人たちと一緒にやろうと考えていますが、一体どうなるのかなと。今は時代の流れが速いので、僕がゲームの中で描こうとしている社会的な構造やテーマが、現実の方で早くやってくるかもしれませんから。

    ── さらに監督が思い描いていることはあるのでしょうか?

    『PHYSINT』の次の作品も当然作りたいですし、自分で映画を撮りたいし、映画からIPを作るとかもしてみたい。もしくは、「Beyond The Strand」でナイアンティックスペーシャル(位置情報やARの技術を持つテクノロジー企業)とコラボしたプロジェクトも発表されましたが、5年以内にはエンタメがiPhoneの画面から飛び出すことが普通の時代になっていると思うので、その時期に合わせて、市場を見ながら、新しいことをしたいという気持ちがあります。

    たまに、一番売れるものを作ってお金を儲けて、久しぶりに会社に行って、「みんな元気か?」と言うような人生も想像します。でも、一番売れるものを作るのは僕の仕事ではないし、家にいてもすることがなくてどうしていいかわからない。家でただBlu-rayを観ていてもつまらないですから。やっぱり、「この人誰だろう」と思って連絡をしてみたり、そういうことを話せる相手がいないと辛い。ずっと、自分の手を動かして仕事をしていたいと思います。

    小島秀夫監督 2025年の主な動き

    3/9 クリエイティブ・カンファレンスイベント「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)2025」へ参加。

    3/31 『DEATH STRANDING』シリーズ全世界累計プレイヤー数2000万人突破。

    4/7 『コジ10 小島秀夫の「最高の10時にしよう」』(TBSラジオ)がスタート。

    4/18 『PRADA 青山店』での展覧会「Satellites」スタート。

    6/8~ ワールドツアー「DEATH STRANDING WORLD STRAND TOUR 2」開催。ロサンゼルス、シドニー、東京、パリ、ロンドン、ソウル、台北、香港、上海、リヤド、サンパウロ、ルッカの12都市を巡る。

    6/26 『DEATH STRANDING 2:ON THE BEACH』発売。「DEATH STRANDING WORLD STRAND TOUR 2 in TOKYO」開催。PARCOにて「DEATH STRANDING 2 JAPAN POPUP TOUR」を開催。

    9/23 コジマプロダクション10周年イベント「Beyond The Strand」を開催。

    11/8 シドニーでオーケストラコンサート「DEATH STRANDING Strands of Harmony」がスタート。来年3月まで、ロンドン、ロサンゼルス、上海、バンコク、シンガポール、ソウル、ニューアーク、ベルリン、パリ、ミラノ、シアトル、シカゴ、横浜、大阪、オースティン、ボストン、モントリオール、トロントの19都市で開催。

    現状動いている主なプロジェクト

    小島監督が製作中の2つの新作ゲームと、『DEATH STRANDING』をもとにした2つの映画プロジェクトを紹介。

    『OD-KNOCK』
    コジプロとXbox Game Studiosの共同開発による新作。最新トレーラーでは不気味なロウソクや絶叫など不穏な要素が映る。ジョーダン・ピールなどのクリエイターが参加予定。
    Ⓒ2025 KOJIMA PRODUCTIONS Co., Ltd. / HIDEO KOJIMA. Published by Microsoft Corporation.

    実写版『DEATH STRANDING』
    A24が手掛け、監督・脚本を『PIG/ピッグ』などで知られるマイケル・サルノスキが担当する『デススト』の実写映画作品。「僕は一歩引いたところから見守ります」と小島監督。
    ⒸA24 Films LLC

    『DEATH STRANDING MOSQUITO(Working Title)』
    『DEATH STRANDING』を原作とした、ハリウッド共同制作アニメーション映画プロジェクト。監督を務めるのは宮本浩史、脚本はアーロン・グジコウスキが担当する。
    ⒸKOJIMA PRODUCTIONS Co.,Ltd. / HIDEO KOJIMA

    『PHYSINT(Working Title)』
    小島監督が手掛ける、新作諜報アクションゲーム。チャーリー・フレイザー、マ・ドンソク、浜辺美波など豪華なキャストが出演することでも大きな話題を呼んでいる。
    Ⓒ2025 KOJIMA PRODUCTIONS Co., Ltd. / HIDEO KOJIMA. Produced by Sony Interactive Entertainment Inc.

    1/1
    ブルゾン ¥68,200 パンツ ¥49,500(共にHOMME PLISSE ISSEY MIYAKE/ISSEY MIYAKE INC.TEL. 03-5454-1705) その他はスタイリスト私物
    コート ¥242,000(BALMUNG info@balmung.jp) シャツ ¥44,000(共にIM MEN/ISSEY MIYAKE INC. TEL. 03-5454-1705) アイウェア ¥55,000(ISSEY MIYAKE EYES/ISSEY MIYAKE INC.) その他はスタイリスト私物

    写真・内田紘倫(The VOICE) スタイリスト・小山田孝司(LESEN inc.) ヘア&メイク・青木理恵 構成、文・重信 綾

    anan 2473号(2025年11月26日発売)より
    Check!

    No.2473掲載

    カルチャーを感じる、ゲーム案内2025

    2025年11月26日発売

    川村壱馬さんのゲーム愛インタビュー、大ヒット作『都市伝説解体センター』の魅力解剖、可愛いドット絵ゲームが人気の「カイロソフト」紹介、ボドゲからTRPGまで取り上げたアナログゲームガイドなど、今回もゲームの楽しさと魅力をたっぷりとお届けします。

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