
テレビ朝日で長年朝のヒーロー特撮番組として親しまれてきた「スーパー戦隊」シリーズ。その後継の番組として、新シリーズ「PROJECT R.E.D.(プロジェクト レッド)」が始動。新たな挑戦と、そこに引き継がれた特撮の歴史を辿ります。
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まったく新しいヒーローシリーズ、その出発点
2月15日より放送が始まった『超宇宙刑事ギャバン インフィニティ』。プロデューサー2人が語る新境地とは。
お話を伺った方々
Profile
白倉伸一郎
1990年東映入社。1992年『恐竜戦隊ジュウレンジャー』、2007年『仮面ライダー電王』など数多くの作品でプロデューサーを務める。『機界戦隊ゼンカイジャー』で27年ぶりに“スーパー戦隊”に復帰。
芝高啓介
2015年テレビ朝日入社。2023年『王様戦隊キングオージャー』中途からプロデューサーとして初めて特撮番組に携わる。以降のスーパー戦隊、仮面ライダーの両シリーズのプロデューサーを務める。
『秘密戦隊ゴレンジャー』に始まり、50年にわたって特撮文化の一端を担ってきた「スーパー戦隊」シリーズ。数多くのヒーローを生み出し、松坂桃李、山田裕貴、横浜流星らスター俳優の原点ともなってきたシリーズが、大きな転換点を迎えることとなった。
そのシリーズを継ぐ新たな挑戦として、同放送枠で始動したのが、「PROJECT R.E.D.」。テレビ朝日の芝高啓介プロデューサーは、プロジェクトの概要についてこう語る。
「『R.E.D.』というのは、“超次元英雄譚(Records of Extraordinary Dimensions)”という言葉の頭文字をとったものです。スーパー戦隊では5人のヒーローをメインに据えていましたが、今度は赤いヒーローが中心軸に。さらに、いろいろなシリーズの“次元”を超えたクロスオーバーなどを含んだ展開を意図しています」
その第1弾が、この2月から放送がスタートしたばかりの『超宇宙刑事ギャバン インフィニティ』だ。『宇宙刑事ギャバン』といえば、1982~1983年に放送され、人気を博したメタルヒーロー。なぜその作品のリブートが、新シリーズのトップバッターに据えられたのだろうか?
「新しいシリーズで新しい作品だと、とっつきにくいと感じられてしまうのかなという懸念がありました。その点、『ギャバン』は認知度が高く、変身する際の“蒸着(じょうちゃく)”というフレーズを聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。見た目もキラキラと輝き、インパクト抜群。以前の『ギャバン』と繋がりがあるわけではないですが、その看板を借りて、みなさんに知ってもらうきっかけにしようと思いました」(芝高さん)
長年東映の特撮作品を手掛けてきたキーパーソンであり、「PROJECT R.E.D.」全体に携わる東映の白倉伸一郎プロデューサーは、「まずは、戦隊と新シリーズの橋渡しとしての“一歩前進”です」と、今作が地盤固めの意味も持つとする。
「我々がやろうとしていることは、まだまだこんなものではない。『ギャバン』を皮切りに、第2弾以降もこれまで日本になかったようなヒーロー番組をお送りしようとしています」と、先の先を見据えた意識がその言葉に滲む。『超宇宙刑事ギャバン インフィニティ』は決して過去作の焼き直しではなく、今の時代に向けて再構築されたまったく新たな一作。芝高さんいわく、物語のキーワードの一つは“感情”。
「主人公たちはそれぞれ怒り、悲しみ、喜び等、感情のエネルギーが詰まったもので変身し、その力で戦っていきます。主人公の弩城怜慈(どき・れいじ)が、どんな怒りをエネルギーに変えていくのかなど、スペクタクルなストーリーには新しさを感じてもらえるのではと思います。また、刑事ものなので、アクションにも重点を置いていて、オーディション時からキャストの身体能力は見ていました。みなさん体のキレが素晴らしく、変身前から繰り広げられる派手な立ち回りにも注目してほしいです」
白倉さんは、「赤のギャバン、金のギャバンといろんなギャバンが出てきて、『君はどのギャバンが好き?』みたいなことを突きつけていくような番組に」と、今作ならではの魅力を強調。
「スーパー戦隊シリーズとも、『仮面ライダー』とも違う別種の多人数ヒーローもので、最初のワンステップとしては、大股の第一歩になっていると思います。ビジュアルも含めてガラッと変えた作品なので、みなさんの予想をいい意味で裏切れたら嬉しいです」
伝統的な「レッド」の系譜を継ぎながら、新たな「R.E.D.」がどのような物語を紡ぐのか。私たちは今、新たな歴史が始まる瞬間の目撃者となる。
information

PROJECT R.E.D.『超宇宙刑事ギャバン インフィニティ』
次元を超えて多元宇宙を駆ける宇宙刑事の活躍を描いた物語で、赤いヒーローが活躍する新たな特撮映像シリーズ第1弾。毎週日曜9:30~10:00、テレ朝系にて放送中。出演/長田光平、赤羽流河、角心菜ほか。
“何でも選べる”クリエイティブを目指して
ここで改めて「スーパー戦隊」シリーズの歩みを振り返ってみたい。
「なぜ“スーパー”かというと、もともと『秘密戦隊ゴレンジャー』などの『戦隊』シリーズがあり、それとは違うものということで『スーパー戦隊』シリーズになったんです。番組枠としては『超電磁ロボ コン・バトラーV』など、5人の少年少女が巨大ロボに乗って戦うアニメを放送していた枠で、それを実写に切り替えたのがスーパー戦隊第1弾の『バトルフィーバーJ』。なので、本来はここからが『スーパー戦隊』シリーズなのですが、20年ぐらい前に『ゴレンジャー』も『スーパー戦隊』に含めようということになりました」(白倉さん)
1975年

『秘密戦隊ゴレンジャー』
1975~1977年、約2年にわたり放送。国際秘密防衛機構を舞台に敵と戦うヒーローの活躍を描く。責任感溢れるアカレンジャー、クールなアオレンジャーなど、5人が色分けされたスーツを身にまとい、異なる個性と能力を担うというフォーマットは本作で確立。 Ⓒ石森プロ・東映
メインは5人前後のチームで赤や青のヒーローに変身する、そして最後は巨大化した敵と巨大ロボに乗って戦う──。「スーパー戦隊」には、何十年にもわたって守られ続けた“お約束”が厳然としてあり、それが安心感に繋がっていた。チームだからこそ描けるドラマもあった。しかし、そのお約束に次第に苦しめられることにもなる。同じく日曜朝に放送されている「仮面ライダー」シリーズほど自由度が高くないゆえに、展開に縛りが出てくる「スーパー戦隊」シリーズ。自然と、二者の玩具等の売り上げにも差が出てくるようになったのだ。
2024年

『爆上戦隊ブンブンジャー』
2024年~2025年に放送されたシリーズ48作目。“クルマ”をモチーフにしており、“届け屋”“情報屋”“運転屋”など、メンバーにはクリエイティブでプロフェッショナルな人物が揃う。「自分の人生のハンドルは自分でにぎる!」が主人公・範道大也のモットー。 Ⓒテレビ朝日・東映AG・東映
「次第に『仮面ライダー』との経済的格差が大きくなってきて。これを何とかしないといけないということで、戦隊内のメンバーをどんどん増やしてみたり、1作品に戦隊が2つ出てきて対決したりといろいろな形で模索してみたんです。でも、それって全部変化球であり、定期的に正統派のものを挟まないと訳が分からなくなるんですよね。そして、結局どんな変化球を投げたとしても、正統派に引き戻されるのであれば、その変化球自体にはあまり意味がないんじゃないか、と。どんな工夫があったとしてもそれはちょっとしたアレンジにすぎなくて、クリエイティブな作業ではない。制作者側が二次創作みたいなところから抜け出せないのであれば、それを打破するために一度休んでみるのもありなんじゃないかということになりました」
そうして『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』を区切りに、「スーパー戦隊」シリーズは一度幕を閉じることになった。白倉さんの話からは、特撮番組の在り方そのものを再定義しようとする、製作者たちの強い意志が感じられる。そこにあるのは、“特撮”への情熱と矜持。だが、過去に執着しすぎることはなく、伝統という土台の上に革新を取り入れていくのが東映流だ。
2025年

『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』
2025年~2026年に放送された、シリーズ49作目および50周年記念作品。モチーフは“獣”。ナンバーワンは1人しかあり得ない──。正義のためではなく自分の願いを叶えるため、はぐれ者たちが悪の軍団や歴代スーパー戦隊のレッドたちと最強の座を奪い合う。 Ⓒテレビ朝日・東映AG・東映
「日本が誇る文化である特撮を大事にしたいという思いはありますが、そこにこだわりすぎると首を絞めることになるかなとも思っていて。表現手段の一つとして、特撮も使える、CGも使える、AIも使えるというような撮影現場であってほしいんですね。まだ道半ばではありますが、新しい映像表現を取り入れられるチーム作りを行っている最中ではあります。僕らは“何でもできる”“何でも選べる”になりたい。適材適所でやっていけると、ヒーローにせよ、敵にせよ、メカにせよ、もっと自由度が増すかなと思っています」
スーパー戦隊はあくまで“一時休止”とされている。「R.E.D.」という新シリーズへの参加はスタッフにとっても進化の契機だ。そして、新しいチームや技術、その積み重ねの先に生まれる新しい作り手たちが「戦隊とは何なのかという本質を捉えた上で、これまでとは違う戦隊を作れるんじゃないか」と白倉さんは期待を込める。
2026年

『超宇宙刑事ギャバン インフィニティ』
2月15日放送スタート。銀河系各惑星から来訪する異星人を迎え入れ、宇宙共生時代を迎えた地球が舞台となっている。銀河連邦警察の弩城怜慈は、宇宙刑事ギャバン・インフィニティに蒸着し、すべての宇宙を守り抜くため、あまたの次元を超えて悪と戦うのだ。 Ⓒテレビ朝日・東映AG・東映
「スーパー戦隊が戻ってくるのは、もしかするとそんなに先のことではないのでは、と僕は思っています。そして、復活する時には必ず大きい狼煙を上げることになると思うので、長い目で待っていていただければ。でもその前にこの『PROJECT R.E.D.』という非常に壮大な…挑戦という名の“実験”がありますから。このシリーズを通して実験を重ねていくつもりですので、まずはこちらを楽しみにしていただきたいと思います」
一区切りは終着点ではなく、次の挑戦への合図だった。これからも東映特撮は進化を続けていく。
anan 2485号(2026年2月25日発売)より













