
国や世代を問わず、世界中をときめかせるピクサー作品をこよなく愛する映画ライターのよしひろまさみちさんが、常に新しい創造を続けるピクサーの魅力を語り尽くします。
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ジョブズが掲げた理念がピクサーの創造の原点
長編1作目の『トイ・ストーリー』が日本で公開された’96年、「アニメ映画の概念が変わるすごい作品がある」と聞き、すぐに試写へ行きました。当時、フル3DCGで作ったアニメを劇場公開したのは世界初。以来ピクサーの大ファンになり、これまでにピクサー本社を訪問しました。
ピクサーの制作過程は、まずどんな作品にするかが決まったら、その物語に必要な技術を詰め込んだソフトウェアを開発するところから始まります。例えば『モンスターズ・インク』のサリーの一本一本の毛の動きを表現するのは容易ではなく、しかも膨大なデータを軽量化するソフトウェアがないと制作も公開も実現しません。『ファインディング・ニモ』では、ニモが海中でどう見えるかを徹底的に追求し、背景の海藻や岩、光芒の入り方などを忠実に再現するためにソフトウェアを開発。どの作品も企画立案してGOサインが出てから、完成までに年以上はかかります。
ピクサーはもともと、ジョージ・ルーカスが設立した“ルーカスフィルム”の一部署を、スティーブ・ジョブズが買収して創業したというのは有名な話。技術を持ち、才能に溢れた若手クリエイターを柔軟に採用しながらアニメーションの革新を続け、オリジナルの脚本にこだわるのが特色です。そして実写とは違い、アニメはゼロから天地創造できることが、クリエイターたちにとっての醍醐味でもある。厳しい入社試験を経て採用されたらひとりずつに小部屋を与えられ、クリエイティブに自由に没頭できるのですが、基本的には分業制。クリエイターは何千人もいて、実際に関われるのは作品のたったシーンだったりもします。ただ、若手にもチャンスを与えてくれる。自分の技術を駆使して短編を作り、認められたら長編に関わることができるというシステムもあります。意欲あるクリエイターたちは、もともと高い技術をさらに磨いていくというわけです。
ジョブズが建てたガラス張りのメイン社屋は、太陽光が差し込む吹き抜けの広場に食堂があり、全社員のメールボックスも設置されている。すべての部署の人たちが必ずそこに集まることで、会話が生まれ、新しいアイデアが生まれる仕組みです。この風通しの良さこそジョブズが掲げた理念であり、世界を魅了する作品を創造する原点になっているのではないでしょうか。
Profile
よしひろまさみち
映画ライター、編集者。年間約400本の映画を観賞し、女性誌やテレビ、ラジオなどさまざまなメディアで映画紹介を担当。プレスとしてピクサー本社を訪れた回数は日本最多。掲載作品は、すべてディズニープラスで配信中
よしひろさんレコメンド!ピクサーの魅力が詰まった4作品
『ウォーリー』

人間が見捨てた29世紀の地球が舞台。たったひとりでゴミ処理を続けるロボット・ウォーリーが、ロボットのイヴと出会い恋に落ちるラブストーリー。「監督は、物語の構築がうまいアンドリュー・スタントン。冒頭、セリフがほぼないという大人向けかと思いきや、子供もちゃんと喜ばせるピクサー×アンドリューの手腕が素晴らしい! ウォーリーの声を作ったのは、R2-D2の声を作ったベン・バートで、SFファンも魅了」
『Mr.インクレディブル』

ヒーローであることを隠して生活する一家の、アクション&冒険物語。「数々の傑作を生み出し、のちに『レミーのおいしいレストラン』も手掛けた天才、ブラッド・バード監督作品。ピクサーの所属ではない監督を採用したのは初。'60~'70年代のアメリカのTVシリーズにインスパイアされた、レトロシックでおしゃれな描写は大人まで魅了し、アニメーション=子供向けという概念を'00年代はじめに変えた作品」
『私ときどきレッサーパンダ』

頑張り屋の主人公メイはある出来事から自分を見失ってしまう。そして目を覚ますと、レッサーパンダになっていた。そこに隠されていた驚きの秘密とは…。「アジア系カナダ人のドミー・シー監督は、ピクサー初の女性監督。短編『Bao』を作り、アカデミー賞短編アニメ賞を受賞したことでも話題に。LGBTQ+やマイノリティが当たり前に生活するサンフランシスコ周辺に拠点を置く、ピクサーの開けた社風が感じられます」
『カールじいさんの空飛ぶ家』

78歳のカールじいさんが亡き妻との約束を果たすため、住み慣れた家に無数の風船をくくりつけ、少年ラッセルと共に南米の“パラダイスの滝”を目指す物語。「『モンスターズ・インク』や『インサイド・ヘッド』などを監督したピート・ドクターの作品の中で一番好き。作画の完成度はさることながら、バディ関係を通して父性が生まれるという物語が素敵。私のような独り者を泣かせるなんて、びっくりよ!」
待望の『トイ・ストーリー5』が7月3日に日本公開
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仲間の最大の危機に、ウッディとバズの名コンビがカムバック! ──フォーキー、カレン・ビバリー、ジェシー、ブルズアイ、レックス、そして、バズ・ライトイヤーなどお馴染みのおもちゃたちと遊んでいるボニー。ある日、最新のおもちゃ“リリーパッド”がやってきたことで日常は一変。もうおもちゃは必要ないのか…不安を漏らすジェシーのSOSを聞き、ウッディがボニーの家に戻ってくる。従来のおもちゃと、最新テクノロジーの攻防戦はどうなる!?監督のアンドリュー・スタントンは「今の子供たちは電子機器に夢中。おもちゃには、携帯、タブレットなど強力なライバルがいる」と話し、1作目から関わっている、ピクサーのチーフ・クリエイティブ・オフィサーのピート・ドクターが掲げたテーマは“トイ・ミーツ・テクノロジー”。世界のファンが待ち望んだ最新作では、現代の子供たちとおもちゃの絆、そして、そのゆくえが描かれる。
監督/アンドリュー・スタントン 声/唐沢寿明(ウッディ)、所ジョージ(バズ・ライトイヤー)、日下由美(ジェシー)、竜星涼(フォーキー)ほか。7月3日(金)より全国劇場公開。
『トイ・ストーリー5』以外の掲載作品は、すべてディズニープラスで配信中
取材、文・若山あや
anan 2497号(2026年5月27日発売)より



















