
原宿さん
世の中に取り残された“今じゃない”話題を再考するPodcast『原宿の今じゃない企画室』。ウェブメディア「オモコロ」編集長の原宿さんがMCを務めるこの番組は、時事から距離を置いた「教養×無駄話」の塩梅が絶妙で、着実にリスナーを増やしている。番組スタートのきっかけは同じshueisha voxで配信中の『流通空論』への出演だった。
直近じゃない、長いスパンの“今じゃない”が聞きたい
「ビジネスパーソンが聴くから実のある話を…と自分の中を探ったんですけど、『オモコロ』には戦略はないし、背中で表現する職人的な世界観しかなくて。でも始めて20年間インターネットに“ずっとある”ことで『この人たちすごいんじゃないか』って思ってもらえているのかも。それが明らかになったんですよ」
番組の性質上、社長やクリエイターに本質的な話を聞くことが多かったプロデューサーの小山田悠哉さんは、原宿さんのただ続けてきた姿勢と「いるだけでいい存在になっていきたい」という言葉に釘を刺された思いがした。すぐ番組の打診をしたが、話はなかなかまとまらなかった。
「最初は読書、子育て、中年といったカテゴリーも提案されましたけど、僕にはあまり深い知識や専門性はなくて、そのかわり何でも面白がれるタイプなんですよ。だから幅を持たせられるフォーマットじゃないとしんどいかもと思いました。何度か打ち合わせをするうち、実は飽きてからのほうが物事って面白くなってるんじゃないかという話が出て、それも“今飽きた”ではなく、もっと長いスパンの“今じゃない”が聞きたいなと。それが形になりました」
今年5月から配信を開始。初回ゲストのこっちのけんとさんとは、音楽の話には一切触れず、ゴミ出しやパイの実についてトークをした。
「僕も『どうやって企画を考えるんですか?』みたいな本筋の質問に飽きている部分があるんです。だから毎回この人にこれを聞くのか、っていう話をします。そういう角度をつけられるのが面白いですね」
通常のラジオ番組では放送作家とスタッフが内容を練ることが多いが、この番組では原宿さんがLINEに送るテキストから企画が生まれていく。早朝ラジオ体操を直撃したり、リアル友達を呼んだり、バラエティに富んだ内容が魅力だ。「まだ自分の理想とするMCはできていない」と話す原宿さんだが、今後の展望は。
「ウケたいけどウケたくない、みたいな気持ちがずっとあって、すぐ無駄話で20分くらいいっちゃうんです。喋りの上手い芸人さんのラジオはたくさんあるけど、プロのお笑い以外にも世の中に面白いことっていっぱいあると思っていて。そこに“今じゃない”のフォーマットで参戦していきたいと思っています」
Profile
原宿
はらじゅく ウェブメディア「オモコロ」編集長。1990年代からテキストサイトを運営し、2010年バーグハンバーグバーグの立ち上げに参加。執筆や企画まで幅広く手がけ、YouTube「オモコロチャンネル」にも出演する。
Information

『原宿の今じゃない企画室』
今さらすぎるトピックをMCの原宿室長がゲストと語るPodcast番組。毎週水曜5:00~各種ストリーミングサービスで配信中。12月12日に初のリアルイベントを神田「EDOCCO STUDIO」で朝6時から開催予定。
anan 2472号(2025年11月19日発売)より


























