
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「米の生産調整見直し」です。
米問題は多岐にわたり、多方向で同時に改革が必須
米の値段がなかなか安くなりません。昨年から続いている価格高騰の原因は、在庫はあるのに流通が滞っているためだと政府は話していましたが、その分析は間違いだったと8月に石破前総理は認めました。事実上、生産調整を見直し、増産する方向に転換すると表明。
ただ、米不足の大きな理由の一つには、異常な暑さや水不足により、1等米がとれなくなっていることもあります。ですから、生産調整の前に、気候変動に適応した品種や栽培方法を早急に開発する必要があると思います。
また、米を増産すると言っていますが、日本の米の消費量は1962年度をピークに減り続けているんです。農林水産省の資料によると、1人当たりの年間消費量は、2023年度はピーク時の約半分の51.1kgです。昔はおかずの種類も少なく、白米をたくさん食べて空腹を満たしていましたが、おかずのバラエティも増えて、以前ほど米を食べなくなりました。これは食生活の変化によるものですから、元に戻すのは非現実的です。すると米の売り先を別に開拓する必要があります。
幸い、日本食のブームもあり、海外での米の需要は増えています。日本の美味しい米の輸出先を広げられる可能性は大いにあります。ただ、農業従事者の高齢化や、小規模農家が多いので、個々で海外の売り先を見つけるのは厳しい。ですから、これはもう国の産業として、外国に米を売ることに真剣に取り組むべきなのではないでしょうか。
現在、気候変動や世界的な食糧不足もあり、小麦やトウモロコシ、雑穀の価格も高騰しています。円安もあって、家畜の飼料を安く手に入れるのが難しくなっています。その代用品として、国内生産の米を活用するという道もあります。飼料用となると安定して大量に生産しなければいけないので、大規模集約型農業ができる場所を増やす、農業放棄地を買い取り活用する、農業法人化を進め民間の参入を拡大するなどの農業改革が必要になると思います。
米不足と言いながら、国民1人当たり茶碗約1杯分の食料が毎日廃棄されている、食品ロスの問題も起きています。生産、流通、市場、消費者、全体の調整も見直さなければいけません。

五月女ケイ子解読員から一言
農家にも実は結構お米が余ってるって聞くし、お米の交通整理がうまくできていないようで、なんだか歯痒いです。こうなったら、食品ロスをなくすためにも、お米が欲しい人とお米が余っている人が直接やり取りできるお米SNSを作るのはどうでしょう。
解説員
Profile
堀 潤
ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜18:00~19:00)が放送中。新刊『災害とデマ』(集英社)が発売中。
解読員
Profile
五月女ケイ子
そおとめ・けいこ イラストレーター。楽しいグッズが買える、五月女百貨店が好評。細川徹との共著、ゆるくておバカな昔ばなし『桃太郎、エステへ行く』(東京ニュース通信社)が発売中。
anan 2468号(2025年10月22日発売)より




























