
舞台『星列者で行こう』再演で主演を務めるIMP.の影山拓也さん。
本日初日を迎える、舞台『星列車で行こう』で主演を務めるIMP.の影山拓也さん。1年ぶりの再演となる本作への想いや向き合い方をはじめ、舞台、映像ほか様々なフィールドで活躍の場を広げる影山さんが今、改めて考えるグループ、IMP.とは。
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玉三郎さんに教えていただいたことは、他の現場でもいかされています

「おはようございます」。スタジオに入ってくるなり、笑顔でスタッフの顔を見回し大きな声で挨拶を交わす。それだけで、影山拓也さんの飾らないまっすぐな人柄が見て取れる。
その影山さんは、歌舞伎界最高峰の女方であり人間国宝の坂東玉三郎さんが手がける舞台『星列車で行こう』に奮闘中。昨年、京都・南座と名古屋・御園座で上演された作品の再演だ。
「昨年の初演は、僕自身にとっても単独初主演舞台で、しかも坂東玉三郎さんのもとでやらせていただけるということで、緊張しつつもとてもありがたい経験をさせてもらいました。今回、再演できる嬉しさと同時に、玉三郎さんと再びご一緒できること、前回と同じメンバーでやれること、そして新たに小波津(亜廉)さんが加わって新しい気持ちで取り組めることに嬉しさを感じています。新しいストーリーが加わることでどうなるか、僕自身もワクワクしているんですよ」

初演より。(C)松竹
熱量のある前向きな言葉。しかし初演は、美への飽くなき追求と芸に対するストイックな姿勢で知られる玉三郎さんが演出を務めるだけに、苦戦することも多かったよう。中でもとくに苦労したのは発声。安定したピッチとまっすぐに伸びる明瞭な声で、所属するIMP.では歌唱力の高いメンバーとして知られているが、玉三郎さんから求められたのは、喉の奥を開けて歌うオペラの発声法だった。
「普段自分たちがライブで歌っているときとは声の出し方が全然違い、玉三郎さんに納得していただけるレベルにまでなかなか達することができず、すごく難しかったです。でも、これまで教わってこなかった分野でもあり、必死にもがきながらも難しいことに挑戦して、自分の中に新しい引き出しができていくことが嬉しくもありました。お芝居に関しても、僕のクセで、セリフを言うときに結構動いてしまっていたんですよね。でも玉三郎さんから、動かないで言葉だけで説得できるようなお芝居をしてほしいとご指導いただきました。玉三郎さんに教えていただいたことは、他の個人のお仕事の現場でもいかされています」
たとえば、玉三郎さんから言われた言葉を台本に書き込むのではなく、台本を離した後や咄嗟のときに対処できるよう頭でしっかり覚えるよう癖づけること。先頃まで出演していた主演ドラマ『私の彼が姉の夫になった理由』の現場でもその教えを守り、台本はきれいなままだったとか。
「他にも、セリフを言うとき、ただ台本に書かれている言葉を覚えて言うのではなく、どんな気持ちでなぜそう言うのかを自分の中できちんとイメージしてから言葉を発してほしいとも言っていただきました。玉三郎さんは、毎回とてもシンプルな言葉で伝えてくださるんですけれど、その言葉のひとつひとつに重みがあって、厳しくも愛を持って向き合ってくださる方。毎回、求められるものは難しかったですけれど、とても貴重な時間をすごさせていただきました」
劇中で歌われるのは、堀内孝雄さんや浜田省吾さんのほか、ビートルズやベン・E.キングのような国内外のアーティストたちのヒット曲。多くの人が耳にしたことのある名曲の数々が、ノスタルジックな世界へと誘う手助けをしてくれる。

初演より。©️松竹
「僕が演じる太郎や次郎(松田悟志)が、苦悩している五郎(松村龍之介)を歌で励ます場面があるんですが、歌いながらもセリフのようで、なんかいいなと思ったんですよね。言葉じゃなくて、歌だからこそ励まされたり元気になれる気もして。歌を通して、見てくださるお客さんにも元気になってもらえたらいいなと思います」
自分の可能性を信じて好きなことに向かってほしい。その想いが伝われば

影山さんが演じる太郎は、一見順風満帆のように見えるが、周りに合わせようとするあまり、自分自身が見えなくなってしまっている青年。その太郎が、乗ると夢が叶うといわれる星列車に乗車し、そこでさまざまな人々と出会い、自分自身と向き合っていく。
「太郎は、自分の意見をあんまり言えない人なんです。人の悩みに対してはすごく親身になれるし、物事を冷静に考えて意見できるのに、自分のことになると答えが見つけられない。僕自身、自分の悩みに対してはなかなか答えが出せずに、考え込んでしまうことが多いんです。でも、友だちだったりメンバーの悩みに対しては、わりと冷静に考えて答えを出せたりする。そんな自分と少し重なる部分を役に落とし込んでいけたらと思って演じていました。ただ、去年やらせていただいて、自分の中でもうちょっとこうできたかなとか、こういう表現をしたらもっと説得力が増すんじゃないかと思った点もあります。たとえば、次郎や五郎、車掌(石井一孝)と接することで太郎は変わっていくんですが、それぞれに関係性が違うんですよね。五郎とはわりとすぐ仲良くなるんですが、次郎とは最初はすごく距離がある。話すようになってからも、五郎と同じ距離感ではないのかもしれない。そこの差別化は、もう少し自分の中で工夫してやれたらなと思っています」
脚本は、経済小説『ハゲタカ』などを手がけた真山仁さん。否が応でも他人の言葉が耳に届き閉塞感漂う今の時代、未来が見えずに道に迷う人々に、小さな希望を照らすような物語だ。
「この台本を読ませていただいたときに、自分のやりたいことや将来の夢に向かっている人の、背中を押してあげられるような作品かなと思ったんですよね。太郎のように、自分の夢ってなんだろうって思っている方もいるかもしれません。これは僕の勝手な解釈ですけれど、夢って、見つけるというよりも、自分の好きなことを素直にやり続けた延長線上にあるもののような気がするんです。人の夢とか可能性って無限大。自分にはこれはできないと最初から決めてしまうことなく、可能性を信じて好きなことに向かってほしいし、それでいいんだって伝わればなと思っています」
初演では、舞台上での列車の表現の仕方や、宇宙を想起させるような舞台美術の美しさも話題に。
「舞台構成はすごくシンプルなんですが、だからこそ、それぞれのキャラクターの生き様がより見えてくるんですよね。列車のスモークが出るシーンがあったり、星球っていう星をイメージした電飾が客席の方まで設置されていて、ご覧になる方も星空の中にいるような感覚になれたり。映像では伝わらない、会場に来たからこそ味わえる感動があるのではと思います」
舞台は、自身が育ってきた場所でもある。「舞台上と、劇場に足を運んでくれているお客さんが同じ時間、同じ気持ちを共有できるのが舞台の醍醐味」だと語る。
「毎日同じ作品をやっているはずなのに、毎日全然違うんです。それこそ去年、龍之介くんとふたりでお芝居させていただくシーンで、ふたりともが『今日、すごく気持ちよかったよね』っていう日がありました。何がそうさせたのかわからないし、こちらは敢えて芝居を変えているつもりはなかったんですが、本当に役を生きられていた瞬間だったと思うんです。もちろんどの公演も、そのつもりでやっていますけれど、毎日本当に感覚が違うのが面白いですよね」
今回は、最後にショータイムが加わり、歌い踊る姿を見られるのもファンには嬉しいところ。
「ショータイムでは衣裳も変えて、太郎ではなく影山拓也としての一面も見ていただけると思います。曲も、劇中で歌ったものがショータイム用にリミックスされていますし、そこも楽しみにしていただければと思います」
人からの見え方を気にするより、自分に正直に生きようって思ったんです

昨年、ドラマ『Qrosの女 スクープという名の狂気』に出演し、今年はドラマ『私の彼が姉の夫になった理由』でトリプル主演のひとりに。舞台のみならず映像でも、今、着実に俳優としてキャリアを重ねている。
「僕、声が大きいじゃないですか。でも映像では、あまり大きくなりすぎないよう、動作とかもなるべく自然に近い感じを心がけるようにしています。ただ舞台の場合、前方の席であれば細かい表情の変化にも気づいてもらえますけれど、2階席・3階席まである大きな劇場では、そこまで見えない方もいらっしゃいますから、席の近さは関係なく、同じ熱量がどこにいても伝わるよう役に説得力を持たせなければと考えています。あと、毎公演、その日の反省点を見つけて次の公演の課題にしているんですけれど…難しいですよね。お客さんは、お金を払って観に来てくださっていて、僕にとっては数回目の公演でも、お客さんにとってはたった一回の観劇かもしれない。反省点はないに越したことはないんです。毎回、新鮮な気持ちでやらせてもらってはいますけれど、それでもやっぱり反省点や課題が見つかってしまうんだから、まだまだ詰めが甘いんだと思います」
そんな言葉に、真面目な素顔がのぞく。毎回、台本を何度も何度も読み込み頭で役をイメージして、何パターンかのアイデアを持って現場に臨む。ただ、自分の引き出しにないもの、想像が追いつかない感情もある。そういうときは、「全然わからないんですけれど、どういうふうにしたらいいですかね? って監督や演出家に聞きにいきます」とのこと。本人はこともなげに答えるが、聞くということは、自分の力不足を自覚し、それを相手にも開示することになる。実力が左右する世界において、それはけっして容易いことではないはずだ。
「僕は、すぐに聞きに行きます。稽古だけじゃなく、先輩がなにかを教えてくださっているときに、『わかった?』って聞かれて、つい流れで『わかりました』って言っちゃうことってありますよね。僕も以前は、空気を悪くするのが嫌で、そう言っちゃっていたことがありました。でも実は、そっちのほうが無責任なことなんですよね。わかっていないのにわかるって言ってしまったせいで、先にどんどん進んでしまって困るのは自分だし、周りにも迷惑をかける。わかったフリしてやるのは違うと思うし」
そんなふうに素直に自分のできなさを認められるようになったのは、「明確にはわからないですが、自分の見え方を気にしなくなってからだと思います」と話す。
「学生時代とかはとくに、こういうふうに見られなきゃいけないって、思っちゃっていたところがあるんですよね。でも、見え方を気にするよりも、自分に正直に生きようって、ある日思ったんですよね。だって、そっちの方がカッコよくないですか? 人からどう見えるかばっかり気にしてるより、素直に生きている人の方が素敵だと思うんです」
まさに今の影山さんは、その言葉のままの人。飾らず驕らず正直。お芝居でもパフォーマンスからも、そしてグループのYouTubeを見ていても、まっすぐな情熱を隠さない、その素直さこそ武器であり魅力だと言える。
そんな影山さんにお芝居の面白さを尋ねてみる。
「僕がお芝居をやり続けたい理由の一番は、IMP.に還元したいから。もうそこだけと言っていいくらい。もちろんお芝居が楽しいというのはあります。でも、個人でやらせていただくお仕事はすべて、IMP.の名前を大きくしたいという気持ちが先にあるんです。なにより、ファンの方々…僕だけでなくメンバーのファンの方々が真っ先にリアクションをくださることが嬉しいですし、僕のことを知らない人がリアクションをくださるのも嬉しい。それと同じ熱量で、メンバーが僕の個人の仕事に対してリアクションをくれるのも嬉しいし、やってよかったという気持ちになります」
『星列車で行こう』の初演時も、京都と名古屋での上演にも関わらず、メンバーが休日にわざわざ観に来てくれたと、満面の笑みで嬉しそうに報告してくれた。
「京都まで観に来てくれたんですよ。朝早く起きて、わざわざ新幹線に乗って。嬉しいじゃないですか。しかも6人一緒とかじゃなく、ひとりひとりバラバラに来てくれたってことは、本当に自分の仕事に興味を持って、応援しに来てくれたってことだと思うんです。そのことだけで嬉しくて、さっきの話と矛盾しますけれど、正直リアクションがなくてもいいくらいでした」
その言葉だけでいかにグループに強い思い入れを持っているかが伝わるが、それほどまでにグループであることに強いこだわりを持つ、その想いを知りたい。
「ファンの方々だったり家族だったり、社長だったり、僕ら7人を応援してくださっているスタッフさんだったりに恩返しをしたいというのが大きい気がします。昔から僕らを知ってくださっている方々に、大きくなったねって言われるようになりたいし、そういう意味で、何があっても誰一人欠けることなく7人でいなくちゃいけないなというのはあります」
メンバー同士、仲がいいことで知られるグループだが、その結束力の源にあるものとはなんだろう。そう尋ねると、少し考えて「プライベートでいる時間が長いからかもしれません」との答え。
「IMP.って、仕事以外でも一緒にいる時間が長いんです。ツアー先でホテルに泊まっているときも、椿(泰我)くんの部屋に7人で集まったりしていますからね」
ただ、プライベートで仲が良すぎれば、逆に、厳しい意見が言いづらくなるのも事実。そうなれば、仕事の現場で互いに向ける目もつい甘くなってしまいそうな気もするけれど…。
「普段と、仕事の現場では顔つきが変わるって言われますからね。意識しているわけじゃなく、そこは自然に切り替わるんです」
そこが顕著なのがまさに影山さんだろう。普段は、笑顔を絶やさない明るいキャラクターだが、グループでダンスレッスンするときなどには、リーダーとして、妥協を許さないストイックな一面がよくクローズアップされる。
「僕が最近、リーダーとして意識しているのは、一歩引いて見守るということ。もっとこういうふうにしてって言うことも大事だと思うんですけれど、自由にやっていく中で生まれてくる個性っていうのもあるはずで、それを大事にしたいと思っているんです。たまに、ちょっと道がズレてるなってときはハッキリ言うけれど、それは本当にダメなときだけ。言うのは簡単だけれど、それが時に個性を潰してしまいかねないので」
相手の個性を尊重しながらも、必要なときにははっきりと意見を伝える。それができるのは、メンバーに対して信頼が築かれているからこそ。
「本当にそうだと思います。自分が細かく何かを言わなくても、絶対にIMP.だったら大丈夫だなというのは確実にあります。逆にメンバー側が、僕に対して思うこともあるだろうけれど、自由にさせてもらっているのはありがたいです」
もっと結果残してやるって、より貪欲さが増している気がします

IMP.として活動をスタートして約2年が経った。きっと大きな決意と覚悟を持って大海に飛び込んだに違いない。厳しい荒波も想定していただろうし、それを感じたこともあったはず。それでも今、国内外のさまざまな音楽フェスに参加しているほか、今年6月には念願だった『ミュージックステーション』への出演も果たすなど、着実に活躍の場所を増やしている。
「この2年、長いようですごく早かったですね。デビューする前からみんなで、いつかこんなことをしたいねっていろいろ話していたんですよ。それこそ単独ライブしたいねとか、全国ツアーしたいとか、全員で舞台をやりたい、とか。個人でもお芝居の仕事をしたいとか、バラエティに出たいとか、それこそいろいろ。デビューさせてもらって、それをひとつずつ叶えさせていただいていますけれど、同時にそのぶんだけ、次はこんなことをしたいって、新しい夢が見つかるんです。いろんな夢を叶えさせていただいて嬉しかったけれど、まだまだ満足していません。3年目に思うのは、ファンの方々も、もちろん僕らも驚くぐらいの結果を残していきたいということ。もっと来い、もっと結果残してやるって、より貪欲さが増している気がします」
ならばと、ananwebの読者に向けて、IMP.の魅力を紹介してくださいとお願いすると、ニカっと笑って少し前のめりに。

「7人全員全然個性が違って、それぞれが、お芝居しているとき、ライブしているとき、YouTubeをやっているとき、雑誌の撮影をしているとき…何種類もの顔を持っている。だからそのメンバーぶん、7通りの楽しみ方ができると思います。普段はこんな可笑しい人なのに、パフォーマンスではこんなカッコいい一面もあるんだって、見ていただいたらきっと気になるはず。大げさだけど…僕らを見たら、きっと悩みとか全部解消できると思うんです。大げさですけど(笑)」
影山拓也としての個人の夢についても聞いてみたい。
「僕の夢は、人に夢を与えられるような人になりたいということ。今の若い子たちだけじゃなく同世代の人たちもだし、僕よりも上の方々にも。僕自身が、この世界に入る前、テレビで歌ったり踊ったりしている人たちを見てカッコいいと思って、自分もこんなふうになりたいなって夢を見させてもらいました。だから次は、自分がそういう人になれたらいいなと思っています」
Profile

影山拓也
かげやま・たくや 1997年6月11日生まれ、東京都出身。7人組男性グループIMP.のリーダー。2023年8月18日に「CRUISIN'」でデビューし、昨年、1stアルバム『DPARTURE』をリリース。昨年、グループ初の単独ライブ、今年、グループ初となる全国ツアーを成功させたほか、今年5月から6月にかけ、舞台『IMPACT』でIMP.として舞台初主演を果たした。また俳優として昨年、ドラマ『Qrosの女 スクープという名の狂気』に出演。今年放送のドラマ『私の彼が姉の夫になった理由』で連続ドラマ初主演。また、現在放送中のTBC東北放送の情報番組『ひるまでウォッチン!』内コーナー「かげログ」にレギュラー出演中。
information
松竹創業130周年 新橋演舞場100周年『星列車で行こう』
夜空を駆ける“幻の列車”を舞台に、家を飛び出してきた太郎(影山拓也)をはじめとした人生に迷う青年たちが悩みながらも、それぞれの人生に対して希望を見出していく姿を描いたオリジナルストーリー。
- 10月4日(土)〜10月26日(日)
- 新橋演舞場
- 脚本/真山仁 演出・補綴 /坂東玉三郎 出演/影山拓也(IMP.)、松田悟志、松村龍之介、小波津亜廉、石井一孝ほか
- S席1万3000円ほか
- 問チケットホン松竹専用ダイヤル:03-6745-0111(10:00~17:00)
※ 大阪公演あり
写真・小笠原真紀 スタイリスト・YAMAMOTO TAKASHI(style³) ヘア&メイク・大島智恵美 取材、文・望月リサ