在日コリアン家族の悲喜こもごもを描いた傑作舞台が待望の再演

2011年公演より 撮影:谷古宇正彦

韓国カルチャーが日本を席巻し、多くの人がK-POPアイドルに熱狂しているのがもはや当たり前な時代。そんな今だからこそ、舞台『焼肉ドラゴン』が上演される意味は大きい。


在日コリアン家族の悲喜こもごもを描いた傑作舞台が待望の再演

物語の舞台になっているのは、高度経済成長に国中が沸き、前回の大阪万博が開催された1970年頃の関西地方都市。焼き肉店を営む在日コリアン家族を中心に、彼らの日常が笑いを交えて描かれてゆく。脚本・演出を手がけたのは、自身も在日コリアンであり、映画『月はどっちに出ている』や『血と骨』の脚本家でもある鄭義信(チョンウィシン)さん。2008年の初演時、読売演劇大賞最優秀作品賞のほか多くの賞を受賞し、2018年には大泉洋さん、井上真央さんらが出演し映画化もされている傑作。

太平洋戦争で左腕を失った父親が営む焼き肉店「焼肉ドラゴン」。ここで暮らすのは、店主夫婦それぞれの連れ子である3人の娘と、夫婦の間に生まれた息子。ちぐはぐな家族が、ときに喧嘩したり笑い合ったり、泣いたりと賑やかな日々を送ってゆく。その中には、朝鮮学校ではなく日本の進学校に通っている息子が壮絶ないじめに遭ったり、国有地の不法占拠だと国から店の立ち退きを迫られるなど、不穏な様子も見え隠れする。しかし、本作の背景に在日コリアンの社会的問題はあれども主軸に描かれるのは、日本の片隅に暮らす平凡な家族の日常と、そこに時おり訪れる幸せと悲しみだ。普遍性がある物語だからこそ共感し、感動が呼び起こされる。

しかし忘れてはいけないのは、これが自分とはまるで別世界の物語ではないということ。いじめや差別、貧困の問題は、在日コリアンに限らず、身近なところにたくさん存在していて、そこに苦しんだり、涙したり、切ない想いをしている人たちがいる。誰でも自分が直面したくないものや、都合の悪いものに対して目を背けてしてしまいがちだけれど、ときに目を向けることで見えてくるもの、気づけることがあるはずだ。

Information

日韓国交正常化60周年記念公演『焼肉ドラゴン』

10月7日(火)~27日(月) 初台・新国立劇場 小劇場 作・演出/鄭義信 出演/千葉哲也、村川絵梨、智順、櫻井章喜、朴勝哲、崔在哲、石原由宇、北野秀気、松永玲子、イ・ヨンソク、コ・スヒ、パク・スヨン、キム・ムンシク、チョン・スヨン A席8800円 B席3300円ほか 新国立劇場ボックスオフィス TEL. 03-5352-9999 韓国、北九州、富山公演を経て、12月19日(金)~21日(日)に新国立劇場 中劇場で凱旋公演も。

文・望月リサ

anan 2465号(2025年10月1日発売)より

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