意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「極右・極左とポピュリズム」です。


対立を煽る言葉に注意。自分の望む生き方を考えて

最近、極右、極左など「極」のつく政党がポピュリズムと結びつくことが世界的に増えました。ポピュリズムは日本語に訳すと「大衆迎合」です。

トランプ大統領が、エリートたちが外国の支援に税金を使うから私たちの生活は苦しいのだとUSAID(アメリカ国際開発庁)の対外援助事業を停止したり、欧州で「移民を大量に入れるから生活が脅かされる」と謳われるのもポピュリズムです。

7月の参議院議員選挙では、保守もリベラルも最後には「だから自民党、公明党が悪い」という論を立てて議席を増やしました。私たちを苦しめているのは「エリートたちだ」「外国人たちだ」と外に敵を作り、有権者の熱気を煽る場面があちこちで見られました。

リベラル(自由主義)は、個人の権利と自由を尊重する考え方です。保守主義は、伝統を重んじ家族観を大切にします。これらは本来、対立するものではありません。民主主義では政治決定に選挙という形をとるので、戦いを生んでしまいますが、選挙が終わればノーサイド。国会ではほとんどの法案が与野党の合意を経て成立しています。

保守(右派)とリベラル(左派)はいい社会を作るためのアプローチの違いなので、どちらを選ぶのも自由です。ただ、これが極右や極左になるとこれまで積み上げてきた価値観を打ち壊す動きになるので、ハレーションや大きな衝突を生んでしまいます。さらに極右、極左がポピュリストとつながると、現実問題や将来を考えずに、目の前の大衆の支持を集めるためだけに過激な物言いをするので、踊らされないように気をつけなければいけません。

選挙戦が始まると、耳触りのいいメッセージが溢れます。それは本当に実現可能なことなのか、普段の政治家の言動を見ておくことが大事です。また、どの政治家を支持するかを考える前に、自分はどういう生き方、どういう価値観を重んじたいのかを冷静になって考えていただけたらと思います。

分断や対立を煽るような言論には警戒しましょう。国民の不満に憎悪の火をつけて、その国をコントロールしようとする、外国からの介入の恐れがあるのが現代の大きな問題なんです。

五月女ケイ子解読員から一言
右派も左派も、そもそもは対立するものではないのですね。敵に仕立てあげて勝つやり方はあんまり良くないけど、言葉の強さや派手さに目を奪われてしまう大衆もいるわけで。選挙が終わって、政治家の今の日常の姿をぜひチェックしておきたいです。

解説員

Profile

堀 潤

ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜18:00~19:00)が放送中。新刊『災害とデマ』(集英社)が発売中。

解読員

Profile

五月女ケイ子

そおとめ・けいこ イラストレーター。楽しいグッズが買える、五月女百貨店が好評。細川徹との共著、ゆるくておバカな昔ばなし『桃太郎、エステへ行く』(東京ニュース通信社)が発売中。

写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

anan 2465号(2025年10月1日発売)より

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共感力が高まりやすい日です。周りの人たちの考えや感情に同調することで親しみやすさが増す一方、不安や心配にも感化されてしまう傾向も強まるため、根拠のない情報や感情論に振り回されないように気をつける必要もあります。とはいえ友達や、イベントなどで集まった人たちとの一体感を味わうのに良い日だと思われます。

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