魅力的な作品に次々出演し輝きを増している俳優ののんさんが、連続ドラマに帰ってくる! 作品への思い、憧れの大人像、そして自分に似ているという父親についても聞きました。


可憐さ、愛らしさ、無邪気さ。以前から持っていた魅力に、凛とした雰囲気が加わった、のんさん。もうすぐ配信がスタートするABEMAオリジナルドラマ『MISS KING/ミス・キング』では、これまで演じたことがないというダークな役に挑戦。大人の階段をのぼるのんさんの横顔に迫ります。

―― 今作は、将棋にまつわる物語です。将棋は勝ち負けという概念が大きい世界ですが、のんさんは勝ち負けにこだわるほう?

ん~…、のんびりしているときにはあまり意識しないんですが、でもプライベートでもアトラクション的なことに対してはこだわるかもしれません。

―― アトラクションとは?

例えば飛行機で隣に人が座っていたとしたら、その人より先に機内食が食べたい、みたいな気持ちが湧くことはあります(笑)。

―― なるほど(笑)。お仕事に関してはどうですか?

えー、どうだろう、難しいな。俳優の仕事で、監督に“何その演出?!”みたいな提案をされると、“負けない…、それよりすごい芝居をしてやろう…!!”といった気持ちになるし、負けん気に火が付きますね。でもある意味では、仕事では“負けた!”って思うのはイヤじゃないかもしれない。

―― それはどういうことですか?

自分がまったく考えもしなかった演出をされたり、出来上がりを見たときに“こう撮ったらこう見えるのか…”という発見があったり。あるいは本読みの際、共演者の方が「こう来たか…!!」と思うようなお芝居をされたりすると、“負けた!”と思うと同時に、気持ちがよかったりもするんです。

―― そうなると、自分の演技プランを考え直す必要が出ますか?

それは必要ないです。演技プランは現場でいかようにも役として自由に動くための準備であるべきなので、相手によって動揺するような準備はするべきでないかな。

―― 今回演じた国見飛鳥という役は名棋士を父に持つ女性で、飛鳥本人も常人離れした将棋の才能を持っています。のんさんご自身は、お父様から受け継いでいると思うものはありますか?

はい。顔も性格も父に似すぎていて。私はもはや、ほぼ、お父さんです(笑)。

―― ほぼ、お父さん。

特に、イヤだなって思うところがすごく似ているんですよ。10代の頃は同族嫌悪状態で、「もうお父さん、イヤ!」みたいになっていました、そっくりで。

―― イヤなところを伺うのもなんですが(笑)、どんなところが似ているんですか?

すごい細かいことなんですけれど、例えば、「え?」と思ったことが起きても、その場の空気を読んで流すんですが、あとからチクチクチクチク言うとか…。内弁慶なところや、家で芸人さんの真似を私に向けてやるところとか…。

―― のんさんも、芸人さんの真似とかなさるんですか?

はい。自分がやるのが楽しいから、滑っても気にしないところも似てます。あ、でも、父は絵がすごく上手なんですが、私も絵を描くのが好きだから、そこはよかったのかも。離れて住むようになり父の良い部分も受け止めるようになったので、性格も父に似たからこそ今の自分を確立している実感があります!

複雑なキャラクターは、やりがいを感じます

―― 飛鳥は、才能がありながらも不幸な境遇の中で生きていて、自分を捨てた父親への復讐のために〈女性初の棋士〉を目指すという役柄です。今までのんさんが演じてきた役に比べると、ダークな印象がありますね。

確かに、ここまで笑顔を見せないキャラクターは私自身初めてですし、不幸を背負っているとか惨めな思いをする、そんな背景を持つ役もやったことがない。でも、どこか人として欠けた部分があったり、ダークさを持つ役柄は、解釈の幅が広くてやりがいがありますね。飛鳥は本当に将棋が好きで、更に才能もあって、子供のときから続けていれば、きっと神童的な存在になれたと思うんです。でも天才だからこそ周囲にストレスを与える存在でもある。彼女の複雑性は、役を掘り下げていく上でとてもおもしろかったです。

―― のんさんご自身は、将棋をしたことはありました?

まったくやったことなかったんです。ルールを知らないどころか駒を触ったこともなくて。でも将棋監修の先生の「1日100回指せば絶対上手くなりますから!」という言葉を胸に、撮影に入る1か月くらい前から毎日将棋と向き合い、手に駒が馴染むように、ごはんを食べながら空いている手で駒を掴んだりといった訓練もしました。

―― 初めて体験した将棋の世界、どうでした?

最終的に、駒の動きや役割ぐらいは理解できるようにはなりました。でも実際の私はコンピューター相手にしか戦ったことがないので、せっかくなのでもう少し極めてみたいですね。撮影後に先生が「のんさんは筋が良いので、私が指導したら段を与えることもできますよ!」とおっしゃってくださったので、密かに、戦いたい欲は出ています(笑)。

歳を重ねて、凛々しさを大切にするようになった

―― 2023年に、それまでひらがなで書いていたご自身の肩書を、カタカナの〈アーティスト〉に改めました。ご自身の中でなにか変化があったのでしょうか?

年齢に合わせてどんな表現ができるか、自分の中で模索している、というのはあります。また大人になるにつれて、凛々しさを大事にするようになってきたかな、とも思います。

―― 仕事に対して、やりたいことも変わってきましたか?

どうだろう、変わってきたのかな…。でも、やりたいと思う役は昔から変わらないです。強い意志を貫き通す、ヒーローポジションにいる役をやりたいんです。

―― それはどんな理由から?

負けず嫌いだから、なにかに立ち向かっていくとか、戦うっていう役柄に惹かれるのかもしれません…ってことは、やっぱり私は勝ち負けにこだわるタイプなのかな(笑)。あと、そういったポジションって、男性の役が多いじゃないですか。だからよく私、男の人に嫉妬しています。作品を見ながら「私もできるよ!」と思うことも多いし。

―― 確かに、女性のヒーロー役って、少ないですね。

ね、なんでなんでしょうね、不思議。もっともっとそういう役をやりたいんですけど。

―― そういえばインスタグラムを拝見していると、ヒーロー的な魅力を持つ大人の女性が、のんさんの周りにたくさんいる気がします。

それは、私自身が素敵な大人の女性が好きだからだと思います。私が好きでくっついていっているんですよ、金魚のフン的に(笑)。もうちょっと良い言い方をすると、お姉さんたちのおまめです。

―― ご自身は、どんな人を素敵だと思いますか?

唯一無二の、確固たる魅力を持っている人。そういうかっこいい人に惹かれますね。自信を持っている人がかっこいいと思うし、その自信を裏付ける表現力も併せ持っている人に憧れます。例えば矢野顕子さんだったら、「矢野顕子なんだから当たり前でしょ?」っていう自信が、全身から溢れ出ているじゃないですか…というか、自分でもおっしゃるし。

―― 今、矢野さんの声で再生されました(笑)。

想像できますよね(笑)。そういう揺るがない自信を持っている人になりたいです。

―― 今ののんさん的には、自信はどのくらいありますか?

私はもともとは、自分が何者でもない頃から自信はものすごくあったほうで、だからこそここまで来られたという気持ちもあるんですが、でも経験を積み重ねれば積み重ねるほど、逆に自信が揺らいでいく部分もあって。自分が目指すハードルが年々高くなるからか、「なんだ、私ってこんなもんだったのか」と落胆することもよくあります。やっているときは自信満々でも、完成した作品を観ると、自信喪失、みたいな。

―― そういうときは、どうやって立ち直るんですか?

悔しいときは、その作品を繰り返し繰り返し観ます。ひたすら一人反省会。でも、上手くいったと思える作品も、何度も観るんですけどね(笑)。

―― 年齢を重ねて、プライベートではなにか変化がありますか?

あの、私、昔からすごく牛乳が好きで、大人になってからも1日1Lくらい飲んでいたんです。でもここのところ肌のコンディションが変わってきて、もしかして“牛乳の飲みすぎ”が原因?! となり、最近、アーモンドミルクを飲むようにしています。生アーモンドを買ってきて一晩水につけて、翌朝アーモンドとデーツと水と塩を入れてミキサーにかけて搾るっていう。インスタで見かけて、なんか体に良さそうだなと思って始めたんです。

―― もともと体に良いことをするのが好きなんですか?

いえ、そんなに興味はなかったんです。若い頃は一日ポテトチップスだけ、みたいなこともしていたし(笑)。でも最近、“もしかしてお肌が角を曲がったのか?!”という実感が出てきたので、ものすごく気をつけています。

―― 効果はどうですか?

悪くないです! 微妙に肌の調子も上がってきた気もします。ただ、アーモンドが良いのかデーツが良いのか、正確にはよくわからないですが(笑)。

―― 同じように、肌が角を曲がったかもしれない世代の読者女子たちに、メッセージはありますか?

今からでも遅くありません、頑張りましょう(笑)。

Profile

のん

1993年7月13日生まれ、兵庫県出身。2006年にファッション誌のモデルとしてデビューし、映画やドラマ、CMなどで活躍。2016年より名前を〈のん〉に改め、俳優、音楽、アートなど幅広く活動中。公開待機作品に、映画『てっぺんの向こうにあなたがいる』(10月31日公開)ほか。9月3日に3rdアルバム『Renarrate』(KAIWA(RE)CORD)を発売した。

Information

『MISS KING/ミス・キング』

9月29日よりABEMA、Netflixにて配信がスタートするオリジナルドラマ『MISS KING/ミス・キング』。天才棋士の父に人生を奪われた主人公・国見飛鳥が、父への復讐を誓う中で将棋の才能を開花させ、人生を取り戻す物語。飛鳥とバディを組み復讐を企てる藤堂成悟役に藤木直人、藤堂の恋人役に倉科カナ、因縁の父親を中村獅童が演じる。

パンツ¥57,200 イヤカフ、右耳¥7,700 左耳¥9,900(以上HYKE/BOWLES TEL. 03-3719-1239) ジャケットはスタイリスト私物

写真・玉村敬太(TABUN) スタイリスト・町野泉美 ヘア&メイク・菅野史絵 インタビュー、文・河野友紀

anan 2464号(2025年9月24日発売)より

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ずっと前からの夢や理想が結実していくプロセスを表す日です。思い描くビジョンの規模にもよりますが、小さなものならそれほど実現に時間はかからないでしょう。現状を刷新したい、変化が欲しいといった願望も、はやる感情をコントロールしながら必要な事柄をこなしていけば、ふと気がついたときには目の前に来ているはず。

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