意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「日本人ファースト」です。


誰もが自分の望む人生を手にできる社会を大前提に

7月の参院選で躍進した参政党は、「日本人ファースト」を掲げました。トランプ大統領は頻繁に「アメリカ・ファースト」と言いますが、これはアメリカの国の利益を優先するという意味です。それに対して、「日本人ファースト」は「日本」ファーストではなく「日本人」。生まれや国籍、血統を重視し、日本に貢献していたとしても外国人は排除しようという姿勢です。

2月のドイツの総選挙でも似たような動きが起きていました。メルケル政権下では移民受け入れに積極的なドイツでしたが、経済の悪化に伴い反動が起こり、「ドイツのための選択肢(AfD)」という極右政党が第2政党に躍進。AfDは移民排斥を謳い、支持を伸ばしました。現在、ドイツで政権を担っているのは中道右派の「キリスト教民主・社会同盟」です。

日本も次の衆院選では、自民党は間違いなく保守政策を前面に押し出し、票の取り込みを進めるでしょう。ただ、これだけ経済が低迷し、人口減少が加速し、労働力のないなか、外国人を排除することは現実問題、日本の国益になるのでしょうか。

昨今、インターネットを投票行動の参考にする人が増えていますが、意識的に異なる意見をチェックしない限り、アルゴリズムによりフィルターバブルが起きて、同じような意見ばかり繰り返し目にすることになりますから、判断には細心の注意が必要です。

政治の話以前に、最も大切なのは「民族や宗教、イデオロギーを問わず、誰もが自分の望む人生を手に入れられる社会」ということを皆で共有しませんか? これは1948年に世界人権宣言で確認された、国際社会の普遍的な価値観です。そこさえ外さずにいられれば、どのような政治のアプローチがあっても構わないと思います。

移民の問題も、母国を離れなければ生きられない、政治的・経済的事情を抱えた人が大勢いるという国際背景があります。経済、雇用、暮らし、あらゆる場面で、文化の違う外国人と共生する際に問題が起きるのはやむを得ません。しかし、それら一つ一つを粘り強く解決することで、互いに繁栄する方法をきっと見つけられると思います。

五十女ケイ子解読員から一言

「誰もが自分の望む人生を手に入れられる社会」。大事なことですね。望む世界そのものが、優しさと幸せを分け合うということなら満ち足りるのに。人生って世界って本当に難しいです。まず自分の周りの人と分け合う。それをいっせえので始めたいです。

解説員

Profile

堀 潤

ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜18:00~19:00)が放送中。新刊『災害とデマ』(集英社)が発売中。

解読員

Profile

五十女ケイ子

そおとめ・けいこ イラストレーター。楽 しいグッズが買える、五月女百貨店が好評。細川徹との共著、 ゆるくておバカな昔ばなし『桃太郎、エス テへ行く』(東京ニュース通信社)が発売中。

写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

anan 2461号(2025年9月3日発売)より

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