人気絵師が続々と登場し、多彩な表現が花開いた江戸時代。当時、一世を風靡した作品は今も多くの人を魅了している。日本画専門の美術館として知られる山種美術館で、その名だたる絵師たちの浮世絵と江戸絵画の展覧会が開催される。


江戸っ子に、世界に愛された人気絵師の代表作がずらり

「当館の浮世絵コレクションには有名な浮世絵師の代表作が含まれ、保存状態も良いことが特徴です。特集展示では浮世絵専門の美術館として名高い太田記念美術館のご協力のもと、前期は花火、後期にはお月見や紅葉など季節が感じられる作品や歌川国芳の戯画など、見て楽しくなる浮世絵もたっぷりご紹介します」

と山種美術館学芸員の竹林佐恵さん。人気役者を描いた東洲斎写楽の大首絵、遊郭やお茶屋で話題の美人を描いた喜多川歌麿の美人画、歌川広重の《東海道五拾三次》、葛飾北斎の《冨嶽三十六景 凱風快晴》(いずれも山種美術館蔵)などの名作が勢ぞろい。

これらの作品が生まれた背景に、大河ドラマで知られるようになった蔦屋重三郎をはじめとする「版元」の存在があるのも気になるところ。

「現在の出版社にあたる版元は浮世絵の企画から流通、販売までを行い、プロデューサーのような役割を果たしていました。蔦屋重三郎も版元として写楽や歌麿たちの才能を見出し、活躍の場を作ったのです」

本展では蔦重が版元となった写楽の大首絵が3点展示される。こうした有名作品のほかにも、子どもから大人まで親しまれていたのが「戯画」と呼ばれるジャンル。

「『たわむれに(ふざけて)描いた絵』という意味で、笑いを誘う表現が魅力的です。例えば歌川国芳のほおずきを人に見立てたシリーズでは、壇ノ浦の戦いで源義経が舟から舟へ飛び移った『八艘(はっそう)飛び』の伝説が題材に。ほおずきの姿で描かれているにもかかわらず、本当の人の動きのように感じられる描写力に注目を」

卓越した筆力や摺りの技術など、間近で見ると繊細な美しさにも驚く。浮世絵が今なお愛され、評価される理由が、本物を前に腑に落ちる。

東洲斎写楽《二代目嵐龍蔵の金貸石部金吉》1794(寛政6)年 大判錦絵 山種美術館[前期展示]

葛飾北斎《冨嶽三十六景 凱風快晴》1830(文政13)年頃 大判錦絵 山種美術館[後期展示]

伝 俵屋宗達《槙楓図》17世紀(江戸時代)紙本金地・彩色 山種美術館

歌川国芳《ほふづきづくし 八そふとび》1842(天保13)年頃 中判錦絵 太田記念美術館[前期展示]

Information

【特別展】江戸の人気絵師 夢の競演 宗達から写楽、広重まで 特集展示:太田記念美術館の楽しい浮世絵

山種美術館 東京都渋谷区広尾3-12-36  開催中~9月28日(日)10時~17時(入館は16時30分まで) 月曜休(9/15は開館、9/16は休館) 一般1400円ほか TEL. 050-5541-8600(ハローダイヤル)※浮世絵は展示替えあり(前期:8/31まで、後期:9/2~9/28)

取材・文、松本あかね

anan2459号(2025年8月20日発売)より

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