DIYと聞くと日曜大工を連想する人も多い。けれどその本質は、目の前の問題を自分自身の工夫で解決していくアプローチ。コロナ禍に自宅で過ごす毎日をより良くするために、部屋の模様替えや手作りマスクの制作など数々の創意工夫が生まれた様子を顧みても、自ら手を動かすことで得られる創作の喜びは大きい。


自ら手を動かすことで得られる創作の喜びにフォーカスした展覧会

そんなDIYの考え方に関心を寄せる現代作家と建築家の作品を紹介しているのが本展。アーティスト、建築家、路上生活者、災禍を経験した人といった様々な境遇の人たちのDIYに注目し、創造性や生きることを目的にした創作に迫る内容だ。

例えば、木版画作家の若木くるみは、日用品を摺版とし、独自の世界観を和紙に転写した作品を制作。アーティスト・デュオのダンヒル&オブライエンは、100人を超える人々との共同制作に挑戦する。久村卓は心身ともに「軽さ」を重視する制作を模索し、ハンドメイドやクラフトなどの技法や素材を積極的に取り入れた作品を展開。写真家の野口健吾は、様々な事情で住まいを失い、路上で暮らす人々と、彼らが雨風をしのぐために建てた庵を撮影。意外な方法で廃材を活用したブリコラージュともいえる創意工夫に注目する。

便利なモノが溢れる現代の生活の中で、忘れかけていた手仕事の魅力。多様なスタイルの作品を見れば、「これもDIYなんだ」と、心に潜む創作欲に火がつくかもしれない。

若木くるみ《チューブの開き 水蟹2》(版と制作風景)2024年 チューブを用いた版画 作家蔵

日用品を摺版として再利用する若木くるみの作品。

ダンヒル&オブライエン《STONE APPRECIATION》(部分)2018年 作家蔵

ダンヒル&オブライエンによる共同制作の装置。

久村卓《PLUS_Ralph Lauren_yellow striped shirt》2025年 シャツに刺繍、アプリケ 作家蔵

ヘルニア発症を機に軽さを重視した作品を作る久村卓の「着られる彫刻」。

Information

つくるよろこび 生きるためのDIY

東京都美術館 ギャラリーA・B・C 東京都台東区上野公園8‐36 開催中~10月8日(水)9時30分~17時30分(金曜~20時。入室は閉室の30分前まで) 月曜(8/11、9/15、9/22は開室)、9/16休 一般1100円ほか TEL. 03-3823-6921

文・山田貴美子

anan2457号(2025年7月30日発売)より

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