ゆっきゅんの連載「ゆっきゅんのあんたがDIVA」。振付演出家・竹中夏海さんを迎えての対談をお届けします。


私たちが大好きだったTommy february6

ゆっきゅん:竹中さんは、柚木(麻子)さんと3人でPodcast『Y2K新書』をしていたメンツ。3人で鼎談企画を受けることはあるけど、対談は初ですね。

竹中夏海:たしかに友達と対談ってあまりないね。

ゆっきゅん:私、竹中さんとTommy february6の話をしたかったんです。トミーをリバイバルさせたのは私たちじゃないですか。

竹中夏海:そうなんです!

ゆっきゅん:リバイバルを受けて再注目されているけど、うちらはずっと当時のブームの話をしてるから。

竹中夏海:ずっと話してたらいつの間にかリバイバルされてた。

ゆっきゅん:いつからトミー好きですか?

竹中夏海:the brilliant greenが出てきてまずびっくりしたよね。歌番組で天使の羽を背負ってたの。「そのスピードで」って曲の時だった気がする。それでトミーに関しては全部「ありなんだ」って思った。気だるい雰囲気だけど、エネルギーに溢れていて。

ゆっきゅん:わかります。

竹中夏海:当時、ほかにハマれる歌手がいなかったんだよね。バンドブームにも興味なかったし。でもSPEEDは好きだったな。中3の時、親友のマミリンとSPEEDの歌詞で交換日記をしたり。最終的に自分たちで勝手に歌詞書いてた。

ゆっきゅん:作詞家じゃないですか! 安室ちゃんやあゆはどうでした?

竹中夏海:直で影響を受ける世代のはずなのに、なぜかトミー以外にハマったDIVAはいなくて。

ゆっきゅん:でも、例えば親友が“この世で一番あゆが好きな人”とかだったら、自分はなんかその歌手にハマれないみたいなのはあるかも。

竹中夏海:あ、そうだ! 親友のサヤちゃんが「南中(地元の中学)の安室」だった! しかも彼氏もSAMみたいで超お似合いだったの。だから、安室ちゃんは私に向けて歌ってないというか、サヤちゃんのために存在していた感じがする。同じように、親友に「南中のあゆ」もいたんだよね。

ゆっきゅん:その二人は仲良かった?

竹中夏海:良かったよ!

ゆっきゅん:え、最高。

竹中夏海:だから、トミーが出てきた時に、やっと私の出番が回ってきたと思ったの。もう、好きすぎて。

ゆっきゅん:私もお年玉で『Tommy airline』を買いました。架空の航空会社コンセプトがヤバい!

竹中夏海:ゆっきゅんとは年齢が離れてるはずなのにいつも話が合いすぎて、頭がバグるんだけど。本当に「時(を)かけ(る)」能力がありすぎてビビる。

ゆっきゅん:年上女性との会話は私にまかせてください(笑)。

感動しながら作ったものは受け取り手に伝わる

ゆっきゅん:私と柚木(麻子)さんが、世間から忘れられた邦画について話すイベントをやった時、楽屋に来てくれたのが竹中さんとの最初の出会い。映画『恋は五・七・五!』の話をしてくれたのを覚えてます。

竹中夏海:それで卒論書いたからね(笑)。ダンスに関係ない映画のダンスシーンについて調べてたの。ダンスって普通正面から観るけど、映画だと珍しいアングルで撮ったりするから研究し甲斐があって。

ゆっきゅん:『恋は五・七・五!』の話をしている人を見たことなかったので驚きました。信じられないダンスシーンがありますよね。

竹中夏海:突然始まるやつ(笑)。

ゆっきゅん:ダンス学科なのに映画を絡めて卒論書くのやばいですね。私は映画の学科なのに、映画だけで考えるのがつらすぎて、少女漫画を絡めて修士論文を書きました。

竹中夏海:同じ思考(笑)。その時ゆっきゅんは『NANA』にハマったんだね。『ハチミツとクローバー』の実写映画もよかったよね。

ゆっきゅん:だって、加瀬亮だよ?

竹中夏海:それはそう!

ゆっきゅん:だって、関めぐみだよ?

竹中夏海:“文系”青春映画『恋は五・七・五!』主演の関めぐみ!!

ゆっきゅん:今回の連載、まるっと「関めぐみ論」でいけるかも。

竹中夏海:さすがに他の話もしよう?

ゆっきゅん:竹中さんは歌手以外でDIVAだなと思う存在はいますか?

竹中夏海:私の周りだと、ゆっきゅんは歌手だから除くとして、柚木さんと山戸結希監督がダントツでDIVAなんだよね。

ゆっきゅん:柚木さんの話はまぁいいとして、山戸さんは本当そうですよね。

竹中夏海:一緒の現場で、私が即興で振りをつけながら踊っているところを山戸さんがiPhoneで撮ってくれたことがあって。スマホを見せながら私に「わかりますか? 私、感動してるんです」って言ってくれたの。それはたしかに、感動した人が撮ってくれたことが伝わる映像だった。監督っていつも感動しながら撮っているんだってわかって、嬉しかった。

ゆっきゅん:山戸さん、インタビューで「自分の心が震えていないことは観客に伝わると思うから、現場で絶対に感動することが大切」だって話をしてて、本当にその通りだと思いました。私、去年は泣きながらレコーディングしてたんです。心が震えすぎて。作り手の心が動いていないと、やっぱり良い作品はできないんですよ。そういうのは絶対にバレる。

竹中夏海:そうだよね、絶対。ちゃんと心震わせていこ!

キャリアのスタートは中学時代の親戚旅行?

ゆっきゅん:振り付けって歌詞からイメージして作ったりしますか?

竹中夏海:私ずっとそのタイプだと思ってたの。でも、解像度を上げて考えると、歌詞を拾って考えるというより、歌詞で感動した気持ちの衝動で作ってるんだよね。もちろん歌詞を視覚的に表現したい気持ちはあるけど、それだとジェスチャーみたいになっちゃうから。

ゆっきゅん:気持ちの話だ! 私も歌詞を書く時は、情景が完全に浮かんでいるというより、その時の感動みたいなこととか、「風」みたいなものを書いている気がする。まぁ具体的な話は好きだから、それも歌詞になるけど。

竹中夏海:具体的に生きてきたからね。

ゆっきゅん:竹中さんは夢を具体的に描いて、具体的に叶えてきましたか?

竹中夏海:そうだった。

ゆっきゅん:願えば叶いますよね。

竹中夏海:思い出した。高校の時に「私は振付師になる」って話をしたら、「へぇ、お前そんな夢があるんだ」って言われて、ムカついたことがあったの。その時、夢とかじゃねぇし、なるんだし。別にお前に振り付けしねぇしって。私にとってそれは夢とかじゃなくて、具体的にやることの話だったんだよね。

ゆっきゅん:じゃあ高校生の頃から振付師になりたかったんですね!

竹中夏海:いや、中学生の時から。

ゆっきゅん:ねぇ、さすが!

竹中夏海:毎年、夏に親戚一同恒例の草津旅行があったの。宿の大宴会場でごはんを食べるんだけど、そこに立派なステージがあって、これは絶対に活用すべきだし、何かしたいとずっと思ってて。

ゆっきゅん:女芸人合宿だ!

竹中夏海:そう(笑)。それで、年下の従姉妹たちをGWぐらいから集めて、振り付けやフィッティングなどを進めて……。

ゆっきゅん:今より仕事が多いですよ!

竹中夏海:今も全部やりたい! それでその子たちを当日、舞台に上げたの。私は『ガラスの仮面』でいう月影千草志望だったから、最後のご挨拶だけ登場。

ゆっきゅん:ファッションショーじゃん!

竹中夏海:わざとラフな格好でペコッと頭だけ下げて。

ゆっきゅん:その時はどんな振り付けをしたんですか?

竹中夏海:その時はバレエしかやってなかったからそれを基礎に、各キャラクターに合わせて作った。小学生たちからしたら、中学生のお姉ちゃんが遊んでくれると思ったらいきなり衣装着させられて、今だったらパワハラかも。そこは反省。

ゆっきゅん:初手から本気すぎる! やっぱり夢は具体的に、ですね。

シゴデキの証しはイメージ共有と企画書

ゆっきゅん:最近感動した仕事ってありますか?

竹中夏海:それこそ「プライベート・スーパースター」の振り付けは、感動しながら作ったんだよ!

ゆっきゅん:え、嬉しい!

竹中夏海:振り付けに興味がないクライアントからの依頼だと、何のイメージもないままオーダーだけされることがたまにあって。別にリファレンスが欲しいわけじゃないけど、「あんたは展望がないのに何かモノを作ろうとしているの?」って思っちゃうんだよね。

ゆっきゅん:それは相手側が仕事してなさすぎですよね。

竹中夏海:でも、ゆっきゅんは曲のイメージを写真で共有してくれたんだよね。こういう振り付けで、とかでなく、曲の世界観を伝えてくれて。それがすごく嬉しかった。

ゆっきゅん:私はダンスを語れる語彙がある方じゃないので直接的なオーダーはできないんですけど、感じ取ってもらえてよかったです。

竹中夏海:ちゃんとイメージ湧いた! ゆっきゅんは企画書とかもちゃんと作る人じゃん。伝える努力をちゃんとしてるよね。

ゆっきゅん:DIVAプロジェクトが始まる時、「熱意はペライチ」だと思って作りましたね。構想26年のイメージはすでに固まってたんで、それを企画書にまとめました。

竹中夏海:私も高校の文化祭を企画書で「竹中以前/以後」に変えた。その後、みんな私が作った目を引く企画書を真似てたよ。

ゆっきゅん:待って、私も学生時代の思い出あります。職場体験の希望を出す時、どうしてもバラ園に行きたくて、私がバラ園に行かなきゃいけない理由と、バラの絵で提出用紙を埋め尽くしました。

竹中夏海:先生、心打たれただろうね。

ゆっきゅん:マジで企画書って大事。

竹中夏海:企画書は熱意だよね。

ゆっきゅん:本当それです。あ、私、竹中さんと語りたい話題があって。遊園地のアトラクションの元ネタになる映画って、男の子趣味すぎません? もし自分で作れるとしたら、どんな映画のアトラクションに乗りたいですか?

竹中夏海:ねぇ何その話、最高!

ゆっきゅん:最近『密輸 1970』を観て、密輸ボートライドとかあったら楽しいのにって思ったんです!

竹中夏海:考えた結果、私は『嫌われ松子の一生』ザ・ライド。タイムマシンで当時の撮影現場に戻り、中谷美紀さんを救うアトラクションにする!

ゆっきゅん:未来変えられるやつだ……!

竹中夏海:没入型じゃなく、介入型アトラクション。竹中監修だと、そういうライドができます!

竹中夏海

Profile

たけなか・なつみ 1984年生まれ、埼玉県出身。振付演出家として500人以上のアイドルを指導。「ログアウト・ボーナス」「だってシンデレラ」などゆっきゅんの楽曲の振り付けも担当。エンタメ業界専門のカウンセラーとしても活動。

ゆっきゅん

Profile

1995年生まれ、岡山県出身。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」を開始。30歳の誕生日を記念して特集された『ユリイカ2025年5月号』(青土社)が好評発売中。Xは@guilty_kyun

写真・鳥羽田幹太 文・綿貫大介

anan2445号(2025年4月30日発売)・2446号(2025年5月14日発売)・2447号(2025年5月21日発売)・2448号(2025年5月28日発売)より

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昔から中庸(極端に振れず中立的であること)の大切さが説かれてきました。日常的 には「ほどほどにすること」となるでしょうか。今日の暦はこの「ほどほど」が難しく、 思い込みによる強情さが顔を出し、度を越えた言動になりがちです。何はなくともま ずは協調性を心がけ、そのうえで一緒に物事を進めていくことが大切です。

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