Who's Hot?

〈WHO’S HOT〉七海ひろき「普段の私はポンコツで、結構ツッコミどころが多い人間だと思います(笑)」

エンタメ
2025.04.10

先日、声優アワードで新人声優賞を受賞。俳優、歌手、そして声優としても評価を高めている七海ひろきさん。宝塚歌劇団在団中、そして退団後の今を語ってもらいました。

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ジェントルな言動にスマートな身のこなし、そして確かな技術。2.5次元舞台で、音楽フェスで、アニメ関連のイベントで、頻繁に聞こえてくる「あのカッコいい人は誰?」の声。そう思うのも当然のこと。七海ひろきさんは宝塚歌劇団で男役スターとして人気を博してきた人。退団後は、舞台のみならずアーティストや声優として、活躍の場を広げている。

――宝塚を退団して6年。退団後にイメージを大きく変える男役の方が多い中で、七海さんはずっと変わらずカッコいいままですね。

そう言っていただくのはありがたいですが、宝塚の男役は宝塚だけのもので、私としては男役を続けているつもりはないんです。見た目のことを言うと、着たい服を着て好きな髪型をしているだけで、これがナチュラルな自分なんです。振り返ってみると、小学生の頃からいつもTシャツにジーンズのボーイッシュな子で、戦隊ものや仮面ライダーのようなヒーローものが好きで、助けられる側より助けに行くヒーローに憧れていました。

――宝塚に入られたのは?

もともとお芝居に興味はあったんです。朗読で先生に褒められたりして嬉しくて。そんなときに天海祐希さんが主演された『風と共に去りぬ』を観て衝撃を受け自分もやってみたいと思いました。しかも天海さんの前の月組トップスター・涼風真世さんがアニメ『るろうに剣心‐明治剣客浪漫譚‐』の緋村剣心の声をやられていて、お芝居の世界では垣根なく役を演じられることにも興味が湧きました。もし宝塚音楽学校に受かっていなかったら、たぶん大学に進学してお芝居を勉強して、もっと早く声優という職業にチャレンジしていたと思います。

――在団中を振り返って、どんな時間だったと思いますか?

芝居の面白さとそれを突き詰める面白さ、自分ではない何かを演じることの面白さを教えてもらいましたし、舞台に立つとはどういうことか…稽古の大切さ、舞台に立つ上での心の持ちよう、下準備の必要性、周りの人とのコミュニケーションの大切さやお客様に対する想い…すべてです。入団当初は、歌や踊りに苦手意識があり、芝居だけしていたいと思った時期もありますが、歌や踊りの楽しさも知ることができました。

――男役を追求していくということはいかがでした?

不思議なんですけれど、在団中はずっと男役を追求してきたつもりだったのが、退団してから気づいたのは、自分は性別や年齢、人間であるかないかなど関係なく与えられた役を追求しようとしていたんだなということでした。声優をやっていると、いろんな役を演じますが、それが動物でも宇宙人でも静物でもアプローチの仕方にあまり違いはなく、考えているのは、この役ならばどう考えてどう動くか。そういえば宝塚時代も、人物の根底にある、魂みたいなものを重視していたんですよね。だから今、声優のお仕事で宝塚の男役みたいな芝居をしてくださいと言われて「自分はどうやっていたんだっけ?」となったりもして。

――男役を卒業されたときはいかがでした? 退団後っていつ髪を伸ばすか、いつスカートをはくかが取り沙汰されがちですが…。

その話題を不思議に思っていました。そもそも好きな格好が男役のときから変わらないだけで、私の周りの女性はパンツスタイルでショートカットの人も多いです。女性だからスカートをはくのだろうという考えが不思議です。

――確かにそうですよね。ただ、退団後の作品選びを見ていても、男役時代からのファンの方が安心して応援できるような絶妙なチョイスをされているなと感じます。

それは私ひとりのものではなく、お仕事を下さる方々や私を支えてくれているスタッフのみなさんが、私というものの個性を理解して、その魅力を引き出せるようサポートしてくださっているおかげです。演劇作品については、基本的にどんな役でも演じたいと考えています。ただ、ファンの方がご覧になって、応援するのがつらくなるようなことはしたくないし、そこには敏感でありたいと思っています。だからといって、ファンの方を悲しませないために受け身になってチャレンジをしないというわけではないんですけれど。

――七海さんご自身と、ファンの方の求めている“七海ひろき像”に乖離がないんだと思います。

ありがたいですよね。いつだってやめようと思えば、ファンってやめられるものじゃないですか。それでも応援し続けようと思ってもらえる俳優でいたいし、アーティスト、声優でいたいです。だからどんな役をやるときにも、こういう一面も素敵だなと思ってもらえる、プラスの掛け算になるような仕事をしたいなと思っています。

表現することに関してはつねに100%で臨みたい。

――アーティスト活動についても伺わせてください。退団後、最初に発表された活動が歌手デビューでした。当初から歌は視野に入れていたんでしょうか?

もともと歌に苦手意識があっただけに、退団後にキングレコードさんから声をかけていただいたときは驚きました。でも退団して、宝塚ではやってこなかったことに挑戦してみたい気持ちがありましたし、七海ひろきがアーティストデビューというのも面白いかもしれないと思いました。私自身、音楽に元気や勇気をいただくことも多かったので、どうなるかわからないけれど挑戦してみようと思いました。

――技術的な意味でも表現の面でもどんどん幅が広がっているのを感じます。ご自身でも歌うことが楽しくなっているのでは?

まさに、以前の自分では歌えなかった歌が歌えるようになっていたりして、年々楽しくなっています。始めたばかりの頃は、自分の中でのこうあらねばいけないというものにとらわれて、歌も硬くなっていたんです。声優をやっているとわかるんですが、頭が硬くなっていると、それが声に乗るんですよね。音楽学校時代から楽譜を何度も読み込んで歌うというやり方が身についていて、楽譜がなければ歌えないと思っていました。でも、現場によっては作曲家の方が仮歌を入れたデモテープを聴いて覚えて、そこに役や芝居を乗せていくやり方を覚えてから、楽譜にがんじがらめになっていたところから自由になれたんです。一昨年の「DAYLIGHT」というライブのリハーサルで、一曲ごとに、歌に描かれている人物像を立ち上げて、その人ならばこう歌うだろうと想像して歌ってみたら、ものすごく楽しかったんです。やはり芝居のように歌うほうが自分に合っているんだと思います。ただ、それには、リズムなり音程なりの練習が重要なんですけれど。それを経ての今回の『Crystal』というアルバムでは一曲一曲お芝居のように歌わせていただいています。

――リード曲の「Skyward」は、ポップスとラップのミックスで、今の七海さんだからこそ歌える曲だなと思いました。

プロデュースを舞台でもご一緒させていただいている演出家の植木豪さんにお願いしたのですが、私らしい親しみやすさのあるヒップホップになっています。最初に聴いたときは難しいなと思いましたが、作詞・作曲・編曲の田中マッシュさんが、私に合ったものを書いてくださいました。MVのダンスもカッコいいものを振り付けしていただいたので、ぜひ見ていただきたいです。

――お芝居にはない、ライブの魅力はどこに感じていますか?

コロナ禍では配信もやりましたが、やっぱり直接会うって大事だなとあらためて感じています。なんというのかな…会うことで心が近づく気がするんです。個人的には、ライブに来てくださった方々にもっと身近に感じてもらえたらいいなと思っています。コール&レスポンスもですし、なんならおしゃべりする感覚でライブをしたい(笑)。歌はもちろん歌いますが、みなさんと交流できるような場にしていったら、もっと心の距離を近づけられるかなと。

――ずっとスマートでカッコいいのですが、“七海ひろき”をお休みするときもあるんですか?

普段の私はポンコツなところがいっぱいあります(笑)。お正月を実家で過ごして東京に戻ってきたときは、ちょっとスイッチ入れなきゃとなりますし。…たぶん私、みなさんが思っているよりもできていないことも多いし、結構ツッコミどころが多い人間だと思います。のんびりしていて、周りから“ゆるふわ”と言われますし。ただ、やるときはやる、というのかな。演じるとか、表現することに関してはつねに100%で臨みたいし、そこで胸を張れる自分でいたいと思っています。

――カッコいいセリフも“七海ひろき”だから言えること?

何かシチュエーションを用意されて言うときは、カッコよく聞こえるような声のトーンを意識していると思います。でも、普段のトークのときは何も考えていないナチュラルな私なので、もしカッコよく聞こえたのなら嬉しいです。

――七海さんの理想とする“カッコよさ”を知りたいです。

自分にできないことやよくない部分もちゃんと認めて、自覚的にいられる人は強いんじゃないかなと思います。へんに自分を取り繕ったり大きく見せようとしない人というのかな。

――そして8月には、宝塚の同期である明日海りおさん主演のミュージカル『コレット』に出演されます。これまでがっつりお芝居で絡むことがなかっただけに共演が楽しみです。

明日海りお様…と呼びたくなるくらい、宝塚時代から圧倒的な存在感を放つ稀有な方でした。場を掌握するとんでもないパワーを目にして、彼女が築く世界で生きたらどんな感覚になるんだろうとずっと思っていましたから、私も本当に楽しみにしています。

PROFILE プロフィール

七海ひろき

ななみ・ひろき 1月16日生まれ、茨城県出身。2003年に宝塚歌劇団に入団し、男役として活躍。退団後は、俳優、歌手、声優として幅広く躍進。最近の主な出演作に、舞台『サイボーグ009』、東洋空想世界『blue egoist』、ドラマ『パリピ孔明』、アニメ『戦国妖狐』など。今年、第19回声優アワードで新人声優賞を受賞。

INFORMATION インフォメーション

全9曲を収録した3rdアルバム『Crystal』は4月16日リリース。通常盤3630円。MVや撮影ビハインド、オリジナルコンテンツなどを収録したBlu-rayをセットにした初回限定盤6050円。またミュージカル『コレット』は8月6日より東京、大阪で上演。七海さんは、明日海さん扮するコレットと深く関わる男装の麗人・ミッシー役に。

ジャケット¥82,500 シャツ¥23,100 パンツ¥46,200(以上ラッド ミュージシャン/ラッド ミュージシャン 原宿 TEL:03・3470・6760) イヤカフ¥12,100(ライオンハート) バングル¥5,940(エルエイチエムイー) 共にシアンPR TEL:03・6662・5525 リング¥24,200(イー・エム/e.m. 青山 TEL:03・6712・6797) その他はスタイリスト私物

写真・樽木優美子 スタイリスト・藤長祥平 ヘア&メイク・KOKI NOGUCHI インタビュー、文・望月リサ 撮影協力・AWABEES

anan2441号(2025年4月2日発売)より

NEW MAGAZINE最新号

No.24422025年04月09日発売

カラダにいいもの大賞 2025・春

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