孤立しやすい現代。悲嘆を一人で抱え込まないで。
「グリーフ(grief)」とは、「深い悲しみ」や「悲嘆」という意味。死別や大切な人やモノを突然失うことで生じる大きな悲しみは、メンタルや体に様々な影響を及ぼします。悲嘆する人に寄り添い、サポートするグリーフケアが重要視されるようになりました。
大切な人との死別は、ショックから感情が麻痺したり、怒りが込み上げてきたり、孤独や罪悪感、無力感に苛まれたり、不眠や食欲喪失、めまいや動悸、疲労感、免疫機能の低下などの身体的反応も表れます。これには段階があり、ショック期から喪失期、閉じこもり期を経て再生期に向かいます。
日本で初めてグリーフケアを専門として作られた教育研究機関は上智大学の「グリーフケア研究所」。2009年4月に設立されました。2005年に起きたJR福知山線の脱線事故をきっかけに、ご遺族の方をはじめとする、心にトラウマを抱えた方々へのグリーフケアの実践に役立つことを目的に、JR西日本とJR西日本あんしん社会財団が支援、グリーフケアについて学ぶ講座や人材養成講座を開きました。
WHOは健康の定義について、「身体」「精神」「社会」「スピリチュアル」の領域があると提案しています。グリーフケアとは、スピリチュアルの領域において、悲嘆を抱える人たちが心を寄せて、ありのままを受け入れ、希望を抱けるように支援することと「グリーフケア研究所」は記しています。
昔は地域社会のつながりも深く、葬儀も家で行い、誰かの死を家族や地域の人たち皆で受け止めることができました。ところが核家族化が進み、死別の悲しみを一人で受け止めなければいけない状況が増えてきたんですね。
世田谷一家殺害事件のご遺族の一人である入江杏さんは、ご自身の体験からグリーフケアの活動を積極的に行っておられます。お話を伺いましたが、悲しみを否定することなく、そのままの自分の思いを吐露し、共有できることの大切さを痛感しました。日本は災害大国ですから、いつどこで突然大切な人を失うかわかりません。防災の観点からも、その時のためのコミュニティ作りは平時から考えておく必要があるだろうと思います。
PROFILE プロフィール
堀 潤
ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。メインキャスターを務める報道情報番組『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜18:00~19:00)が放送中。