松下洸平「ご覧になる方に“問い”のようなものを投げかけられたら」 6年ぶりにミュージカルに出演

エンタメ
2025.01.18

松下洸平さん

作品や役に誠実に向き合う姿と姿勢で活躍の場を広げている。その松下洸平さんが6年ぶりにミュージカルの舞台に立ちます。

「自分はもしかしたら、この先ミュージカルはもうやらないかもなって思っていたんです」

インタビューの冒頭にそう切り出した松下洸平さん。ミュージカルへの出演は6年ぶりなのだそう。ドラマで松下さんを知った人はミュージカルへの出演自体、意外に思うかもしれない。しかしじつはミュージカル界では以前から高い評価を受けてきた人。それだけに意外な言葉だった。

「もちろん観るのは好きだし、20代の頃はたくさんやらせていただいたんですが、やればやるほど、ほんっとに体力勝負で大変な現場だなと実感するんです。ミュージカルに出続けていらっしゃる方々はみなさん、稽古から本番までの数か月間ずっとあらゆることに気を配って、全公演クリアするためのコンディションをキープされている。本当にプロフェッショナルで、そこに対するリスペクトがものすごくあるんです。この数年、映像のお仕事がこれまで以上に楽しくなってきたのもあって、どちらもというのは難しいのかなという気持ちでいました。今、音楽活動もさせていただいていて、歌を歌いたいという想いはある程度叶ってはいます。そういう中で、今の自分が大作ミュージカルの主演を務めるには、いろんな意味で足りていないんじゃないかと思ったんです」

その大作ミュージカルというのが、今回出演するジェフリー・アーチャーの小説を舞台化したミュージカル『ケイン&アベル』だ。出演を決めた理由を尋ねると「作品を読んだときに魅力を感じてしまったんです」と小さく笑った。

アメリカで生を受けたケインは、父親は銀行家で名門家の一人息子という恵まれた出自を持つエリート。一方、ポーランドの貧しい家庭に生まれ戦争で孤児となったアベルは、アメリカへ渡り、その才覚でのし上がってゆく。真逆の環境で育ったふたりの人生がいつしか交わり、やがて対立するようになっていく。

「単純にふたりの主人公がとても魅力的です。そして何よりこの作品が素晴らしいのは、時代に翻弄される人々の姿がすごくリアルに描かれているんです。ケインとアベル、それぞれの身にいろんなことが起こり、その過程でたくさんの大切な人を亡くしていきますが、それでもふたりは己の信念を突き通していく。その後、時代が動いていろんなものが変わっていく中で、一番最後に残ったものが友情だったり愛だったりするというところも素敵だなと思っています」

松下洸平さんがケインを、そしてアベルを松下優也さんが演じる。

「共通の知り合いが多いんですが、周りから聞く優也さん像は情熱的でまっすぐでブレない人。お会いしても、野心を持って前に進んでいく強さを持ったアベルそのものという感じなので、それと対峙するケインという役をどう作っていくか、今から楽しみにしています。ミュージカルはエンターテインメントではありますが、それだけではない“問い”のようなものを、ご覧になる方に投げかけられたらなと思っています」

21歳でシンガーソングライターとしてメジャーデビューしたが、なかなか思ったような結果が得られずにいた時期。もがく中で、オーディションを受けて初めてミュージカルの舞台に立ち、そこから俳優の道を歩き始めた松下さん。

「24歳のとき、オーディションで栗山民也さんが演出する『スリル・ミー』というミュージカルに出させていただいたんです。それまでの現場と違って、栗山さんは、歌をうまく歌うことよりもお芝居の構築の方に重点を置くような演出をされていて、そこでお芝居とはこういうものだと教えていただきました。そのときにお芝居の深さや面白さに気づかせていただいた気がします」

その『スリル・ミー』とは、ふたりの青年が関わった殺人事件の真相が、そのひとりである“私”の独白により徐々に明らかにされていく息詰まるふたり芝居。

「お客さんに見せることよりも、舞台上にいるふたりの間の気持ちのやり取りが大事で、こっちが一生懸命にやっていれば、お客さんはこっち側に入ってきてくれるから大丈夫だ、とおっしゃられて。最初は半信半疑でしたけど、やってみたら、また一個お芝居の面白さに気づいて。いろんなことを考えるきっかけになりました」

そこから約15年。今や舞台のみならず、数々の連続ドラマでも主演を務めるようになっている。

「お話をいただくたび、ありがたい気持ちと同時に悩む時間もあります。これまでさまざまな現場で共演させていただいた主演のみなさんは、口には出さないし言い訳もしないけれど、ずっと近くにいると、やはり不安やプレッシャーを感じているんだなと気づく瞬間があるんです。それでも覚悟を持っている人たちがそこに選ばれているわけで、自分もそうならなきゃと思うし、そうありたいとも思います。ただ、僕は作品は自分だけじゃなく、共演の方々とみんなで一緒に背負っているものだから、ひとりで抱えないようにしようと思っています。そういう意味では、『ケイン&アベル』では僕だけじゃなく松下優也さんという頼れる方が隣にいることがとても心強いですし、思いっきり頼っていこうと思っています」

ただ主役となると、どうしても周りが物語を引っ掻き回し、“受け”のお芝居が多くなる。

「役名をいただけなかった頃、何かやれることはないかとずっと探してきたんです。それに慣れているからか、今も台本に書かれている以上のことを毎回探しちゃうので、そこはよかったのかもしれません」

今、あらためてお芝居が面白くなっていると話す。

「毎回、新しい現場でいろんな出会いがあって、いろんなやり方があるんだなと思うんです。それはお芝居だけではなく、作り手側のスタッフさんにおいても。近いところで言うと、『放課後カルテ』というドラマで子どもたちと共演させてもらっていましたが、毎回、そのお芝居が素敵でため息が出るくらい。変な計算がないというか、すごく素直にお芝居をしていて『そんな芝居、どこで習った?』って思ったりしました(笑)。まだまだ学ぶことが多いと感じさせられます」

PROFILE プロフィール

松下洸平

まつした・こうへい 1987年3月6日生まれ、東京都出身。最近の主な出演作に大河ドラマ『光る君へ』、ドラマ『放課後カルテ』、舞台『母と暮せば』など。シンガーソングライターとしても活動をおこなっており、昨年11月にシングル『愛してるって言ってみてもいいかな』をリリース。

INFORMATION インフォメーション

ミュージカル『ケイン&アベル』

【東京公演】1月22日(水)~2月16日(日) 東急シアターオーブ 平日:S席1万6000円 A席1万円 B席5000円 土・日・祝日、千穐楽:S席1万7000円 A席1万1000円 B席6000円 【大阪公演】2月23日(日)~3月2日(日) 新歌舞伎座 平日:S席1万6000円 A席1万円 土・日・祝日:S席1万7000円 A席1万1000円 原作/ジェフリー・アーチャー 脚本・演出/ダニエル・ゴールドスタイン 出演/松下洸平、松下優也、咲妃みゆ、知念里奈、愛加あゆ、上川一哉、植原卓也、竹内將人、今拓哉、益岡徹、山口祐一郎ほか 東宝テレザーブ TEL:03・3201・7777

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ニット¥39,600(saby/BLANDET Tokyo・evolve TEL:03・6823・5074) トレンチコート¥198,000 パンツ¥44,000(共にセブンバイセブン/アングローバルプレスルーム TEL:03・5785・6447) その他はスタイリスト私物

写真・川原崎宣喜 スタイリスト・丸本達彦 ヘア&メイク・KUBOKI(aosora) 構成、取材、文・望月リサ

anan 2430号(2025年1月15日発売)より

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