平原テツ「内容は一緒でも書いてあることが全然違う」 舞台『ドードーが落下する』が待望の再演

エンタメ
2025.01.12

平原テツさん

舞台『ドードーが落下する』は、少しずつ心の均衡を失ってゆく芸人・夏目と彼を取り巻く人々を描いた作品。演劇と映像の垣根を越えて活躍し、若き才能として注目を集める加藤拓也さんの手によるもので、2022年に初演され岸田國士戯曲賞を受賞。その戯曲が今回改訂され再演されることに。話題となった初演から、物語の中心となる夏目を引き続き演じるのが平原テツさん。

気鋭脚本家の岸田戯曲賞受賞作品が新たな視点で改訂され、待望の再演。

「前回のとき、夏目ではなく、彼の周りの人たちにすごく共感したんです。自分も相手のことを考えてアドバイスしたりしていたけれど、当の本人は迷惑に感じていたかもしれないと思うとショックで。友達のつながりを考えさせられる作品でした。今回再演だと聞いて、そんなにセリフを覚えなくても大丈夫かなと思っていたら、内容は一緒でも書いてあることが全然違うんです。初演では周りの人物が夏目の状態を説明することで物語が進んでいたのが、今回は夏目を中心に話が動いていくんです。前回は、会話の中に出てくるだけだった相方の賢が出てきたりするから、そこの関係性を新たに考えていかなくちゃいけなかったり。プレッシャーはあるけど楽しいです」

加藤作品の魅力は、舞台の上でおこなわれる会話が必ずしも言葉通りのものではなく、水面下で別の攻防が繰り広げられているところ。

「誰にも覚えがあると思うんですよ。相手によく思われたくて本心とは違うことを言ってみたり、自分のしょっぱいところを見せたくなくて虚勢を張った発言をしたり。そういう人間くさい部分が描かれていて、やっていても面白いです。加藤さんの描く物語はいい意味で世界が狭くて、周りにとっては大したことないけれど自分にとっては重大な問題を演劇として描いています。僕はいい演劇って、観た後、自分だったらどうするかを考えたり、誰かと解釈を話したりして豊かになったり楽しくなったりするものだと思っていて、まさにそれがあるのが好きなんです」

ただ、セリフにはなくとも水面下で起きているざわめきが観客に伝わらなければ物語は成立しない。

「映像ならば、思っていれば微妙な表情で伝わったりするけれど、舞台ではそうもいかないので、そこは意識して演じるようにしています」

しかしそこに、意図や計算を潜り込ませず“ただそこにいる”ことができるのが平原さんという俳優。

「最初は目立ちたくて演劇を始めたんですが、自分を主張せずにやる芝居を観て、めちゃくちゃかっこいいって思っちゃったんです。今は逆に自分のエゴを出すのが恥ずかしい、ってなっちゃってるだけなんです」

PROFILE プロフィール

平原テツ

ひらはら・てつ 1978年4月25日生まれ、福岡県出身。舞台のほか映像作品でも活躍。放送中のドラマ『東京サラダボウル』(NHK)に出演。映画『ショウタイムセブン』が2月7日公開予定。

INFORMATION インフォメーション

た組『ドードーが落下する』

芸人の夏目(平原)は、トガった笑いで芸人仲間から評価されているが、大衆にはウケず家族からも冷遇されている。そんなある日、夏目は自分だけに聞こえる声に気付き…。1/10(金)~19(日) KAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオ 作・演出/加藤拓也 出演/平原テツ、金子岳憲、秋元龍太朗、今井隆文、鈴木勝大、中山求一郎、秋乃ゆに、安川まり、諫早幸作 プレビュー公演4500円 一般前売り5300円 一般当日5900円 25歳以下3500円 高校生以下1000円 劇団た組 大阪、三重、茨城公演あり。

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写真・小笠原真紀 インタビュー、文・望月リサ

anan 2429号(2025年1月8日発売)より

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