大鶴佐助「すごく好きだなと思いました」 舞台『ヴェニスの商人』草彅剛の演技に驚く

エンタメ
2024.12.04

近頃、面白そうな匂いのする舞台で、この名前をよく見かける。日本の演劇界に燦然と名を残す劇作家の唐十郎さんを父に持つ、大鶴佐助さん。目前に控えるのはシェイクスピアの『ヴェニスの商人』。因業な金貸しのシャイロックを草彅剛さんが、演出を的確で丁寧な演出に定評のある森新太郎さんが手がける。

舞台の、人と人が集まってようやく成立するところに美しさを感じます。

「森さんの稽古場って、同じ場面を何度も何度も繰り返すんです。俳優としてはけっして楽ではないけれどすごくワクワクするし、何よりそれを見ている森さんが誰より楽しそうで、純粋に芝居が好きで、作品に対する想いの深さを感じるんですよね。稽古場で戯曲をロジカルに説明してくれるのでその深い洞察は勉強になるけれど、だからといって自分のビジョンを押し付けたりせず、役者の気持ちも大事にしてくれる。僕は、演出家の言う通りにやるだけの受け身の芝居をつまらないと思っちゃうタイプだからありがたいです。あそこまで演劇を真正面から信じている人、好きにならざるをえないです」

大鶴さんも演劇を信じているんですね、と尋ねると「僕は演劇を一番信じています」とまっすぐな返答。

「一番身近にあって演劇に囲まれて育ってきましたし、演劇に助けられてきましたから。毎回同じことの繰り返しのようだけれど、その日によって全然違う超絶ナマモノで、人と人が集まってようやく成立するところに僕は美しさを感じています」

そんな大鶴さんが感じる本作の魅力、とは?

「シェイクスピアの面白いところって人間の普遍性にあると思うんです。育ってきた環境や根付いている思想によって、誰しもがマイノリティにもマジョリティにもなりうる。この作品は勧善懲悪のようにいわれますけれどそんなに単純ではなく、シャイロックはユダヤ人で差別を受けてきたベースがあって、高利貸しで金を稼ぐことでしか生きてこられなかった人なんです。演じる草彅さんが面白いのは、ロジックではなく、このシーンのこの言葉に感情を100%のせるんだ、みたいなことがあるんですよね。その瞬間に命をかけるくらいの熱量で来るんです。びっくりしましたし、その照準の合わせ方が面白くて、すごく好きだなと思いました。そこから倍増してくると思うので、本番が今から楽しみです」

PROFILE プロフィール

大鶴佐助

おおつる・さすけ 1993年11月14日生まれ、東京都出身。近作に舞台『兎、波を走る』『ジャズ大名』『ハムレットQ1』など。現在、親交のある俳優や演出家たちと立ち上げた劇団ヒトハダの座長も務める。

INFORMATION インフォメーション

ヴェニスの商人

商人のアントーニオ(忍成)は、親友のバサーニオ(野村)のために高利貸しのシャイロック(草彅)から金を借りるが、航海中のアントーニオの商船が海に沈んでしまい…。12月6日(金)~22日(日) 東京・日本青年館ホール 脚本/ウィリアム・シェイクスピア 訳/松岡和子 演出/森新太郎 出演/草彅剛、野村周平、佐久間由衣、大鶴佐助、長井短、華優希、小澤竜心、忍成修吾ほか S席1万3000円 A席9500円ほか 京都、愛知公演あり。

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舞台『ヴェニスの商人』公式サイト

写真・小笠原真紀 ヘア&メイク・小林雄美 インタビュー、文、望月リサ

anan 2425号(2024年12月4日発売)より

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