ルシアスとの共通点は、自分を突き動かすものがあるということ。
—— 本作の主人公として抜擢されたときの気持ちを教えてください。
ルシアスの役が決まった当時、僕はロンドンで『欲望という名の電車』という舞台に出演していました。その日もいつものように劇場に向かって歩いていると、突然電話が鳴って「あなたの起用が決まりました」と言われたんです。事前にオンラインで監督とミーティングはしていたのですが、まさか本当に実現するとは信じられなくって。まるで頭が爆発したような状態でした。とはいえ、公演前だったのでその瞬間はとにかく舞台に集中して、翌朝起きた時に改めて実感したのを覚えています。
—— リドリー・スコット監督の作品に携わったことで、感銘を受けたことはありますか?
86歳という年齢で、これまで多くの作品を作ってこられたにも関わらず、この映画製作という仕事に対して全く疲れを見せないところに感銘を受けました。常に一本目と同じ想いを持って作り続けている。彼の資質をなにかひとつもらえるとするならば、いくつになっても同じ気持ちを持ち続けられるエネルギーをいただきたいです。
—— 今回演じたルシアスというキャラクターに対して共感する部分はありますか?
ルシアスという人物は、僕が今まで演じたキャラクターのなかでも一番距離のある、自分とは全く異なるキャラクターだと思います。似ているところがあるとするならば、集中力や自分を突き動かすものが内面にあるところかもしれません。
インディーズで培った自分の演技スタイルを生かせたことが誇り。
—— 自分の信じるものをまっすぐに見つめるルシアスはとても魅力的でした。あなた自身はこの先も役者としてキャリアを積んでいくうえで守りたいものはありますか?
キャリアを進めるうえで守りたいのはプライベートな時間。僕自身、役者の心情や生活というのは彼らだけのものであるべきだと思っているんです。役者の私生活を知ってしまうと、作品に対しての純粋な興味や関心が薄れてしまうと思うし、前にキリアン・マーフィーが言っていた言葉ですが、役者にとってミステリアスな空気に包まれているということは演技にとても役に立つものなんです。
—— あなたにとってこの作品はどういう存在になっていくと思いますか?
自身のキャリアとして最初のブロックバスター作品なので、より多くの人に観てもらえると嬉しいです。初めてこういった大規模な作品に挑戦したということもあり、初めは不安もありました。今となっては演じきれたことを誇りに思えますし、きっと自分自身にとっても重要な作品になってゆくでしょうね。やはりこういった作品と向き合うには経験や根性が必要だと思っていて、初心者レベルではチャレンジのできないことだと実感しました。その上でインディーズ作品で培ってきた自分の演技スタイルをこういったいわゆる超大作のなかでも成立させられたことは、とても誇らしく思っています。
役者を目指すきっかけは学校のオーディション。
—— 16歳で舞台デビューをされてから、2021年以降は映画へと活動のフィールドを広げてこられました。役者を志したのにはどのようなきっかけがあったのでしょうか?
本当にたまたまなんです。僕の通っていた学校では、校内ミュージカルのオーディションを生徒全員が受けないといけなくって。もともと興味はあったと思うけれど、そうやって強いられなければそもそも舞台には立っていなかったと思います。そこで舞台を経験したことで演じることが大好きだと分かったので、そのような機会をくれた学校の方針に感謝しています。
—— 映像作品に多く出演されるようになってからは注目の浴び方にも変化があったかと思いますが、ご自身ではどのように感じていますか?
変化は日々感じていて、初の映像作品となったドラマシリーズ『ノーマル・ピープル』に出演したばかりのころは特に大変に感じました。現場にいるときは役作りに集中することができて楽だけれど、このように作品のプロモーションを数週間かけて行うときなんかは、キャラクターに隠れることはできなくて、僕自身として皆さんの前に出ないといけないので。こういった大規模な作品に出演できることは特権だと思いますが、やはり自分自身を出さないといけない場面では葛藤することもあります。この5年間で少しは慣れてきたかな、という感じです。
役者と監督が連携して作品を作り続けるクリエイティブな関係性。
—— これからさらに挑戦される役や作品の幅を広げていかれるかと思いますが、ご自身でもやってみたい芝居などはありますか?
特定のキャラクターではないですが、演技のスタイルとしてはより誇張されたキャラクター像に挑戦してみたいです。例えば、社会の端っこにいる狂気じみたキャラクターなどはまだ演じたことがないので、ぜひやってみたいですね。
——いつか一緒に仕事をしてみたいクリエイターはいらっしゃいますか?
僕自身が素敵だなと敬意を感じるクリエイティブというのは、役者と監督が継続して物語を紡いで、映画を作っていくことだと思っています。僕もこの先の2、3年のうちにこれまで仕事をしてきたシャーロット・ウェルズやアンドリュー・ヘイ、そしてリドリー・スコットという素晴らしい監督たちとまたご一緒したいですね。そういったクリエイティブな関係性は、映画にも良い影響を与えてくれるので。
ポール・メスカルさんの、いま好きなこと。
今はMk.geeというアーティストをよく聴いています。彼は本当に素晴らしい才能の持ち主。僕は音楽が大好きで、自分で新しい音楽を発見していく作業も好きです。
PROFILE プロフィール
ポール・メスカル
1996年生まれ、アイルランド出身。 16歳で舞台デビュー。2017年、ダブリンの劇場で舞台『グレート・ギャツビー』に主演。2020年TVドラマ『ノーマル・ピープル』で主人公コネル役で大ブレイク。映画『aftersun/アフターサン』(2022)では、娘とひと夏のバカンスへ出かける若き父親をノスタルジックに演じ、第95回アカデミー賞主演男優賞に初ノミネートされる。2023年には舞台『欲望という名の電車』でスタンリー役を演じ、ローレンス・オリヴィエ賞で主演男優賞を受賞するなど、今後の活躍が期待される。
INFORMATION インフォメーション
映画『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』
©2024 PARAMOUNT PICTURES.
古代ローマを舞台に、皇帝の後継者争いの陰謀に巻き込まれ、剣闘士(グラディエーター)として苛烈な戦いに身を投じる男の姿を描いたスペクタクルアクション『グラディエーター』(2000)。巨匠リドリー・スコットがメガホンを取り、アカデミー賞で作品賞や主演男優賞など5部門を受賞した同作の24年ぶりとなる続編は、ラッセル・クロウが演じた前作の主人公マキシマスの息子・ルシアスを主役に、狂気と暴力によって支配されたローマを描いた歴史アクション超大作。
監督/リドリー・スコット
出演/ポール・メスカル、ペドロ・パスカル、コニー・ニールセン、デンゼル・ワシントンほか
11月15日(金) 全国公開