「世の中の価値観や概念を問答無用に覆してしまう亮子は、裁判もゲーム感覚で、勝つことは当たり前なんですよね。人の心は理解できるものの、どこか俯瞰して物事の本質を見抜くことができるから、冷静に事件を解決できるんだと思います。感情を排除して相手と向き合うところが“モンスター”だと思いますが、感情に振り回されないのはうらやましいところ。私はいろいろ考えすぎて、自分の感情に疲れてしまうタイプ(笑)。だからこそ“今はこういう状態だな”と自分を客観的に見て、1回深呼吸するようにしています。怒りや悲しみなど、負の感情を表に発散しても誰も得しないですから。『まぁいいか…』と、少し肩の力を抜くことって大事ですよね」
亮子は自分自身が“モンスター”だからこそ、人が訳もなく悪意に満ちてしまう“モンスター”になる瞬間も見逃さない。観察眼鋭いキャラクターだが、趣里さんも「人を観察するのは結構好きです」と笑う。
「この人、嘘をついているなぁとか、何か隠し事しているなっていうのは、分かってしまうほうだと思います。そこは亮子との共通点ですね。私、生まれた時に産声を上げなかったらしくて、子供の頃、ものすごく物静かな子だったんです。飲食店に行くと、そこにいるお客さんの顔をずっと、ただジーッと観察していました。未だにじっと見た人の顔は、忘れずに覚えています(笑)」
人に興味があるといい、そんな特殊能力(!?)を持つ趣里さん。だからこそ、多面体で複雑な人間の心模様を繊細に演じられるのだろう。演じる上で意識していることは?
「どんな役でも、自分がその役の一番の理解者でありたいと思って寄り添うようにしています。亮子は“勝ち”にこだわる人間であるけれど、世のために彼女なりの信念を持って、法廷に挑む姿がいいなと思っていて。勝利のその先をどのように見つめているのか感じてもらえるように演じられたらいいですね。タイトルにあるモンスターは、亮子や加害者だけでなく被害者にもいます。誰しもモンスターになる可能性があるということを、役を通して映したいです」
モンスターを演じる自分自身、モンスター要素があるのかどうか聞いてみると……。数々の大舞台を乗り越えてきた趣里さんから「心配性モンスター」と意外な答えが。
「私、すごく心配性で、気にしすぎるところがありまして…。舞台の初日やドラマのクランクインの日は、もう『ハァハァ』って呼吸が荒くなって気持ち悪くなるんですよね。勝負に挑む日は、ゲン担ぎなどもしないタイプ。もしもその決め事をやらなかったらダメなんじゃないか…と囚われるのが嫌なので。心配性モンスターをどうにかしたいです(笑)」
『モンスター』 毎週月曜22時~、カンテレ・フジテレビ系全国ネットで放送。型破りな弁護士の神波亮子(趣里)が令和の時代ならではの問題と向き合い、ゲームのように法廷論争に立ち向かう一話完結リーガルドラマ。出演/趣里、ジェシー(SixTONES)、古田新太ほか 10月14日(月)スタート。©カンテレ
しゅり 1990年9月21日生まれ、東京都出身。2011年俳優デビュー。今年3月まで放送されたNHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』でヒロイン・スズ子を好演し大きな話題に。ドラマ『ブラックペアン シーズン2』など数多くの作品に出演。
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※『anan』2024年10月9日号より。写真・KAZUYUKI EBISAWA(makiura office) スタイリスト・中井綾子(crepe) ヘア&メイク・スズキミナコ インタビュー、文・福田恵子
(by anan編集部)