河合優実×金子大地×寛一郎
写真左から、金子大地さん、河合優実さん、寛一郎さん
河合:カナは、ハヤシの家族に会いに行くときに手土産を持っていったほうがいいと思うモラルはあるんだけど、街中で日焼け止めを塗りながら歩くことは全然平気なんです。一人なら、Tシャツ一枚という無防備な格好のまま、冷蔵庫からハムを素手で取ってそのまま食べてしまう。そうした生活感がすごくリアルで共感しましたし、私にもカナみたいなだらしなさがあるなって。
寛一郎:それは意外。まったくだらしなく見えないです。
河合:家ではすごいです(笑)。
金子:ハヤシはこう言ってあげたら相手が喜ぶだろうなって言葉が瞬間的にわかる人なんだと思います。なのに、あえてその言葉をかけず、カナの出方によって、ちょっとずらした言葉を投げてしまうハヤシの気持ちは、僕にもわかるんですよね。
河合:カナはハヤシが抗っていると気づいてるけど引かない。だから二人は激しいバトルをするのだろうと。
寛一郎:ホンダはカナへの共感性が高く、いわゆる尽くすタイプ。ナルシシズムが強すぎて、意外性も面白みもない。そりゃカナも違う人に行っちゃいますよ。優しすぎる男はつまらないってことです(笑)。
――anan読者はカナ世代も多く、やりたいことが見つからずもがいている方もいると思います。そういう人はどうしたらいいでしょう。
河合:私は幸運にもやりたいことが見つかった側ですが、なかなか目標が見つからないのは苦しいです。でも『ナミビアの砂漠』は、頑張ってそこから脱していい状況を目指そうとする映画ではなくて、同じような日々が過ぎていく時期もあるよねって言っているだけなんですよね。無理に成長しようとしなくて大丈夫、いつかどうにかなるからって。このカッコいい青春映画が、今の自分を肯定してみようと思うきっかけになってくれたら嬉しいです。
金子:河合さんの仰る通り、無理に変わろうとしなくていいと思います。人それぞれいろんな生き方があって、それぞれが人生の主人公ですから。
寛一郎:生きづらさを実感しているのであれば、その理由もわかっているんじゃないかな。そういう方は打開策を考える余地がある。でも、それすらも感じられない人が多い気がするんですよね。僕が脚本を読んで「面白いものになる」と確信できたのは、カナ、ホンダ、ハヤシのカオスとも言える、奇妙な関係がリアルに描かれていたから。彼らの違和感を言語化するのは難しいけど、僕は“なんかわかる”って感じたんです。この作品は、自分の問題に気づかせてくれ、その答えを見つけるための映画でもあるんだと思います。
――国内外で高い評価を受ける山中瑶子監督。その初監督作品を学生時代に観て「いつか出演したい」と直接伝えた河合さんにとっては、念願叶ってのキャスティングですね。
河合:企画が成立して、脚本ができて撮影に入り、今は公開を待ちながら、山中監督の作品に出演することを実感しています。でも、寛一郎さんも仰ってましたが、脚本をもらった段階で「面白いものになるぞ」という確信が私にもあって。そうした信じられるものが目の前にあったので、山中さんへの憧れだとかはいったん置いて、ちゃんと監督と俳優として対等に接することができてよかったです。
寛一郎:どうしたらこの素晴らしい脚本を崩さず、でも負けずにプラスアルファの肉付けができるのか。すべての演者とスタッフが、120%の力で考えて監督に提示していく、いい現場でしたよね。
河合:山中さんの色が強く出た映画ですけど、現場では監督の色一色という感じでは全然なくて、迷う姿も見せてくれました。
金子:いろんな部署の意見を聞きながら撮っていて、俳優にも委ねてくれました。もちろん監督の中にしっかりとした軸があって、どうしたらそこにヒットするのか、僕らで考える余白があって楽しかったです。
寛一郎:感性の人なんでしょうね。流れをすり合わせてから現場に入り芝居をすると、監督が「う~んう~ん…」となってるので、あれ、違うのかなと思いきや、OKを出してくれたり。
金子:まさにそんな感じ!
河合:多分監督にとってはそれが普通で、今ここにいたら「え~! ごめんなさい!」って焦りそう(笑)。
寛一郎:僕は撮影期間が3日と短かったこともあって正解がわからず、帰り道、一人運転しながらずっと震えてましたよ(笑)。
河合:監督のどこにヒットするのか、ものすごく集中して探る時間になりましたよね。でも、その作業を現場のみんなが楽しんでいました。
――今日の撮影で3人が自然に話しているのを見て、いい現場だったのだろうなと思ったのですが、プライベートでも交流はあるのですか?
寛一郎:昨日も3人で遊びに行ったんですよ。
金子:さっき河合さんがカナみたいに家ではだらしないと話してましたけど、思えば昨日も…。
河合:(笑)。この作り話、いつまで続けます?
――(笑)。それぞれ俳優としての魅力をどんなふうに感じていますか。
河合:金子さんと寛一郎さんは、映画を作ることにすごく真面目で、お芝居で迷うことも含めてすごく楽しんでいるところが共通してると思います。『ナミビアの砂漠』を作ることに、常に意欲的でいてくれたお二人に感謝です。
金子:最高の褒め言葉をありがとうございます。河合さんは時代を切り開くスーパー女優。年下とは思えないくらい引っ張っていただいて、のびのびお芝居ができました。人間性も素敵で。本当に優しくて、気も遣える方です。
河合:自分では全然そう思わないんですけど、私、どんな感じでした?
金子:包み込むような優しさが…。
寛一郎:この感じは、具体的には覚えてないな(笑)。
金子:覚えてます! 人によっては引くような話でも、楽しく話させてくれる優しさを感じていました。
河合:どんな話でしたっけ?
金子:…ここではとても言えない、恥ずかしい話です(笑)。
寛一郎:そういうことさえも受け止めてくれる器の大きさがあると。
金子:お芝居も同じで、僕が変わったことをしてもすぐ対応してくれて、リスペクトしかないです。
寛一郎:僕も河合さんには内なる母性を感じるんだけど、目の奥には熱さや怖さがうねっている。それがカナを通じて具現化された印象を受けました。あと、僕は会った人に「最近、何か面白いことあった?」ってよく聞くんです。だいたいの人は自分が面白いと思っても他人がそう思うかわからないから答えてくれない中、河合さんはスパンと答えてくれて芯の強い人だなと。
金子:寛ちゃんは若い頃から共演してきて、意識する同世代の俳優だな。
寛一郎:23歳の初共演のときから大地くんには勝てないと思ってる。今回は、年齢を重ねて憂いを纏った新しい大地くんが見られて嬉しかった。
金子:寛ちゃんも本当に優しくて…。
寛一郎:河合さん、僕らは優しいだけのホンダなんですよ(笑)。
金子:人には言えない話を…。
寛一郎:まだ同じ話を続ける気か!?
河合:話を聞いてくれるかが金子さんの優しさの基準なんですね。
金子:寛ちゃんほど、自分をさらけ出せる相手はいない。…愛してる。
寛一郎:具体的なエピソードが思い浮かんでないから言ったな(笑)。
河合:ナミビアチームは本当に仲がいいってことですね(笑)。
3人で心理テストに挑戦!
Q1. あまいのとしょっぱいのを交互に食べる魔のループ、終わらせるなら?
a…あまいの、b…しょっぱいの、c…ヤバいから、手を出さない
【a】試算
あなたは、余韻を大事にする人。嬉しかったこと、楽しかったことを忘れたくない、ずっと覚えていたいと思うはず。何かを選ぶのが苦手で、どちらかに決めかねているうちに、状況が変わって必然的に決まることが多そう。
【b】勝算
即断即決で、道を切り開いていくあなた。これがいいと思ったら、パッと動けるタイプでしょう。もし、なかなか答えが出せないとしたら、そこに正解がないせいかも。自分に有利かどうか、冷静に判断を下せる人です。
【c】逆算
あなたは、先の先を読むのが得意な人。これをこうしたら、きっとこうなる的にシミュレーションをした上で物事を選択していきます。間違いのない答えを選ぶ確率は高めですが、「やらない」選択が多いのがもったいない。
Q2. 相手の影を先に踏んだほうが勝ち。影踏み遊びをするなら?
a…自分から踏みに行く、b…とりあえず、逃げる、c…大きな影の中に隠れる
【a】名ムードメーカー
カンとノリがよく、状況や設定にとりあえず乗っていくタイプ。場の空気を読んで、上手に盛り上げていきます。でも、本当に親しい人には、不機嫌やだるさを気楽に見せるはず。人を楽しませる演技力バッチリ!
【b】スゴ腕の仕掛け人
一見、受け身で控えめ。協調性豊かで、周りに合わせるタイプのように思わせているはず。でも、実際は、“引くこと”で周囲をコントロールするのが得意。どんな集団にも上手に溶け込み、裏ボスに収まっていくタイプです。
【c】超マイペース
あなたは、自他ともに認める自由人。人と足並みを揃えるのが苦手で、クセありキャラで押し切ります。ただ、話の内容によっては、ノリノリになることも。自分のペースで動きつつ、おいしいところは外さないちゃっかりさんです。
Q3. 大きさも種類も違う2つのつぼみがあります。どんなふうに咲くと思う?
a…大きな花が先に咲く、b…小さな花が先に咲く、c…大小、同時に咲く
【a】スパルタ
大輪の花を咲かせるためには、それなりのエネルギーが必要です。あなたは、目標を定めることで、一気に成長するタイプと言えそう。何かひとつの道に打ち込み、厳しく自分を律することで、素晴らしい成果を収めるはず。
【b】コツコツ
華やかな大輪の花に比べて、小ぶりの花は、どこか守ってあげたい魅力を秘めています。あなたは、これみよがしな艶やかさではなく、ひたむきな頑張りに惹かれるはず。地道な積み重ねが、才能開花につながるでしょう。
【c】ナチュラル
あなたは、細かいことは気にしないタイプ。条件やそれぞれの資質の違いをものともせずに、何事もなるようになると思っているし、なんとかしてしまうはず。引きも強く、心の赴く方向に進むうちに、才能が花開きます。
気になる3人の結果は…?
河合優実さん
Q1…b、Q2…a、Q3…a
心理テストは久しぶりで楽しかったです。選択の仕方は、迷った末に突発的に決めます。最後の決断は直感。決めたら即行動なので合っています。
金子大地さん
Q1…b、Q2…a、Q3…a
確かにこの3人は全員がムードメーカーです。才能開花方法は解説がアドバイスになっているんですね。なるほど、厳しく律していきます!
寛一郎さん
Q1…a、Q2…a、Q3…b
選択の仕方はc寄りのaだな。まずその選択に責任を負えるか考えがちだけど、それは後でもいい。今、直感を大事にしようとしているところです。
かわい・ゆうみ 2000年12月19日生まれ、東京都出身。映画『由宇子の天秤』『サマーフィルムにのって』で数々の新人賞を受賞。今年、ドラマ『不適切にもほどがある!』で話題に。出演映画『八犬伝』は10月公開予定。
ワンピース¥57,200 パンツ¥41,800(共にハイク/ボウルズ TEL:03・3719・1239) イヤリング¥52,800 イヤーカフリング、右手¥19,800 左手¥25,300(以上ノーム TEL:06・6377・6711) 靴¥37,400(ヨシトデオランジェ/ニューロンドン TEL:03・5603・6933)
かねこ・だいち 1996年9月26日生まれ、北海道出身。2018年、ドラマ『おっさんずラブ』の歌麻呂役で脚光を浴びる。主な出演作に大河ドラマ『鎌倉殿の13人』、ドラマ『腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。』などがある。
シャツ¥46,200(ssstein/ENKEL TEL:03・6812・9897) パンツ¥35,200 シューズ¥82,500(共にVEIN/Sakas PR TEL:03・6447・2762)
かんいちろう 1996年8月16日生まれ、東京都出身。2017年、俳優デビュー。翌年、映画『菊とギロチン』での演技が高く評価される。主演映画『シサム』が9月13日公開。今冬には映画『グランメゾン・パリ』が公開予定。
ブレスレット¥126,500(Jil Sander by Lucie and Luke Meier/JIL SANDER JAPAN TEL:0120・919・256)
※『anan』2024年9月11日号より。写真・森山将人(TRIVAL) スタイリスト・杉本学子(河合さん) DEMI DEMU(金子さん) 坂上真一(白山事務所/寛一郎さん) ヘア&メイク・上川タカエ(mod's hair/河合さん) MEI(W/金子さん) Tsubasa(寛一郎さん) 取材、文・小泉咲子
(by anan編集部)