自分だけが知っているその子のいいところを見つけたい。
「僕、今年の春に20kgのダイエットに成功したんですよ。でも、原作の爪切男さんにお会いして、“この方を演じるんだ“と思ったら少しでも自分を近づけたくて、同じ体重まで戻しました。だから、リバウンドではないです!(笑) これまでドラマ出演は何度か経験させていただいていますが、主演はこれが初めて。大役なので緊張感はありますけど、楽しみな気持ちのほうが大きいですね。なにより、『この役はぜひ木村くんにやってもらいたい』と言ってもらえたことがうれしかったですし、役者冥利に尽きますよね。監督からも『木村くんのままでいいよ』と言っていただいて、まさかのノー役作りで挑みました(笑)。撮影中も、普段とほぼ同じテンションでやらせてもらっています」
木村さん演じる枝松脛男(すねお)は、盗作した小説がヒットしてしまった新人作家。元の小説を書いたであろう中学校時代のクラスメイトの女子に思いを馳せるうちに、かつて恋心を抱いた女の子一人ひとりのエピソードを鮮明に思い出していく。
「タイトルだけ見ると、すぐに人のことを好きになっちゃう気の多い男の話のようにも思えますが、脛男はけっしてチャラ男ではないんですよね。クラスメイトの女子をすごく観察していて、その子だけの面白い癖を発見したりして、そういうところに惚れ込んでいく。セリフにもあるんですけど、人と違うところってその人の個性だし、脛男には人のそういうところが輝いて見えるんですよ。人と違うというだけで排除するのではなく、美点と捉えて好きになる。そんな素敵な視点を自分にも分けてくれるような作品で、原作のエッセイにはそんな爪さんのピュアさが詰まっていると思います」
木村さん自身、脛男の考え方に共感する部分もあったとか。
「僕も、惚れっぽいんですよ(笑)。人を好きになることは罪ではないじゃないですか。踏み出さない恋だったら、僕はごまんとしてます。そもそも、人のいやなところよりもいいところを見つけたいタイプなので、『この人はどんな人なんだろう?』って観察するところは脛男と共通しているかもしれないです。人の変わったところが好きというのも似てますね。天の邪鬼なだけかもしれないけど、自分だけが知っている、その子のいいところを見つけたいんですよ。自分の目で見て、他の人が気づかなそうな美点を見出したい、というところはありますね」
小説家になった脛男が中学生時代を回想しながら過去と現在を行ったり来たりするストーリーは、ドラマのオリジナル。過去の脛男を演じる及川桃利さんとは、撮影を通してアドリブ勝負をする仲だそう。
「僕が先に撮影するシーンがあれば変な動きをアドリブで入れて、それを後から及川くんが真似したり、その逆もあったりして、同じ人物を2人で演じる難しさもあるけど楽しくやってます。演じるなかで監督に『中学生時代の脛男に似てた』と言われるのがうれしいですし、及川くんも『昴くんがやりそう』って褒めてもらったと言ってました。脛男の担当編集の片山を演じる新川(優愛)さんは久しぶりのドラマ本格復帰ですし、その他のキャストも個性的な方ばかり。僕らも楽しみながら撮影しているので、このドラマを見てくださる方々にもシンプルに笑っていただけたら幸いです」
『クラスメイトの女子、全員好きでした』 いま注目の作家・爪切男のエッセイを基に、オリジナル要素を加えドラマ化。タイムカプセルに入っていた小説を盗作し、人気作家になった枝松脛男(木村)。真の作者を探すため、中学時代のクラスメイトの女子たちとの淡い思い出を手繰り寄せる。毎週木曜23:59~、読売テレビ・日本テレビ系にて放送中。
きむら・すばる 1990年6月29日生まれ、ドイツ出身。2005年にアニメ『ドラえもん』の剛田武(ジャイアン)役に抜擢され、14歳で声優デビュー。現在は、子供向け情報番組『おはスタ』(テレビ東京系)でメインMCを務めるなど、数々のアニメやバラエティ、ドラマ、舞台など幅広く活躍中。
※『anan』2024年8月14日‐21日合併号より。写真・Marco Perboni インタビュー、文・尹 秀姫
(by anan編集部)