高学歴は、女性の武器か足枷か。三者三様の幸せ探しストーリー。
「1年以上かけて、本当にたくさんの東大卒女子たちに取材したんですね。頭が良くて、周りもよく見えているから、どの方からも面白いエピソードが聞けたんです。なるべく振り分けて使いたいなと思ったのと、もともと三姉妹好きというのがあって、こうなりました」
個性派揃いの彼女たちの下には、弟の一理(いちり)がいる。東大に落ちた末っ子は、姉たちに振り回されながらも、否応なく女ごころに敏感になり、要領よくサポートする立場に。その優しさと献身に、心がくすぐられる女性は多いのでは。
「自立心の強い姉たちだけだと、いずれケンカ別れしたりもしそうで…。冷静な観察役であり、クッション役も務める一理みたいな存在が欲しかったんですよね」
1巻でぐっと掴まれるのは、世利子や比成子の恋愛模様だ。世利子は初恋の相手で高校教師の岸里が忘れられないのに、自分の人生計画通りに事を進めたい気持ちが強すぎるのが難。比成子は、文芸バーで働く元東大生の悠人とつきあっているが、10年越しの関係性が宙ぶらりんすぎて、身動きが取れない。
「堅実なエリートに見えて、大胆な行動に出る世利ちゃんみたいなタイプを描くのは初めて。内面的にはいちばん秘めた爆弾を持っていそうで、面白いです。比成ちゃんは、ただでさえ面倒くさそうなテレビの世界にいて、うまくいってもミスしても『東大だから』と当てこすられやすくはあるんですよね。波風避けるために、合わせることを覚えていった人なのかなという気がしました」
姉妹だけでなく、彼女らの恋愛相手のキャラクターデザインも魅力的で、物語を盛り上げる。
「メガネ男子は好物なので、岸里は、最後に食べるショートケーキのいちごのように大切に取っておいて描きます(笑)。一理や悠人にもファンがいるみたいでうれしいです」
気になる伏線が張り巡らされ、ページを繰る手が止まらない。
「学歴が高くても低くても、女性たちは何かしらの圧を受ける社会にいますよね。三姉妹を含め、女性たちの努力が報われて幸せになれるといいなと思いながら描いています」
実地子や一理、さらに彼女たちの母親が抱える“事情”や“悩み”が見えてくるのは2巻以降だ。
続刊が待ち遠しい。
『東大の三姉妹』1 三姉妹と弟が一軒家で同居中の坂咲家。恋愛、仕事、出産への焦燥感など、女性読者にとっては気になるトピックが次々と出てくる。2巻は今夏くらいに発売予定。小学館 770円 ©磯谷友紀/小学館
いそや・ゆき マンガ家。2004年、Kissストーリーマンガ大賞に入賞した作品が、翌年掲載され、デビュー。大ヒットした『ながたんと青と』ほか、著書多数。
※『anan』2024年5月8日‐15日合併号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・三浦天紗子
(by anan編集部)