新しい学校のリーダーズ「オトナブルー」も! 令和にヒットする“エモい”系カルチャーの特徴

エンタメ
2023.09.29
昭和や平成初期をオマージュした、どこか懐かしさを感じるカルチャー。単に要素を切り取るのではなく、時代にチューニングを合わせるセンスがヒットのカギに。

【オマージュ】令和にヒットする“エモい”系カルチャーの特徴。

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“実際にその時代に流行ったもの”ではないけれど、昭和や平成初期のテイストをオマージュし、どこか懐かしさを感じる作品も人気を集めている。いわゆる渋谷系のヒップホップカルチャーをリスペクトした水曜日のカンパネラの「エジソン」や、今夏大ヒットした新しい学校のリーダーズの「オトナブルー」は、まさにその代表。

「『オトナブルー』は昭和歌謡に若い世代が惹き込まれるワードやエッセンスをギュッと詰め込んだような曲。でも、それだけではきっとここまでの大きなヒットには結び付かなかったはずで、あの“首振りダンス”を融合させたのが天才! TikTokで音楽を数秒しか聴かない若者の心をガッチリ掴むキャッチーさとインパクトが計算し尽くされていると思います。最近は一般のユーザーがTikTokに上げる動画でも、サビに合わせて踊るのではなく、サビ前のBメロで踊るのが流行っていて。懐かしいものを、どうやったら新しいものに変えて遊べるか、どこを切り取って、どんなふうに届けるかが、次のトレンドになってきています」(橋本菜津美さん)

新たなエモい系カルチャーが誕生する背景には、以前の文化を自由な発想で加工し、SNSにうまく落とし込むことは必要不可欠。

「使い切りカメラ『写ルンです』が少し前から流行っていますが、これも撮ることが最終目的ではなく、多くの人は撮った写真をSNSにアップするまでがセットですよね。“古いものを、現代の使用法に適用させるとどうなるのか”という興味で流行ったという調査研究も。フィルムの画質で撮った写真にただ“味わい”を感じて楽しんでいるのではなく、現代のSNSという新しい文化とマッチさせたときに“なんか新しい。楽しい”と感じて、ブームが生まれたんです。インスタグラムやTikTokといった新しいツールと組み合わせ、自分たちの感性に合わせてカスタマイズしていくことで、過去の文化がまた見直されているのが、今のヒットコンテンツなのではないでしょうか」(塚越友子さん)

お笑い界でも、かつての芸のオマージュが大きなムーブメントになりつつあるという。

「最近大きな注目を集めているのが、8人組コントユニット『ダウ90000』。主宰の蓮見(翔)くんは超がつくほどのお笑い好きらしく、今まで見てきたお笑いの量がえげつないと聞いたことがあります。“新時代のお笑い”的に評されることも多いですが、これまで夢中になって見てきたお笑いの中から、いいところを蓮見くんなりに集めたもので表現しているんじゃないでしょうか。言葉や設定は現代にチューニングを合わせているけど、今まであったコンテンツをじっくり煮込んで、手の込んだものを見せてくれている。お笑いの歴史のアーカイブが上乗せされてネタができている感じがしますね。バラエティ番組も最近は学生さんを巻き込んだ企画が増えていて、今どきのちょっと恥ずかしがり屋な学生さんに合わせて企画は微調整しながら、『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』や『学校へ行こう!』などの懐かしいバラエティコンテンツが見直されている気がします。『それSnow Manにやらせて下さい』も学生さんと作り上げる企画が盛り上がっていますよね」(宮地ケンスケさん)

掛け合わせの妙によって令和にヒットしたカルチャーは他にも。

「個人的に注目しているのは、Netflixオリジナルドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』。子供たちが活躍する物語ながら、時代設定は’80年代で、当時のポップカルチャーが満載。僕の大好きなメタルミュージックがずっと流れていて、たまらないんです(笑)。若い世代からしたら疑似ノスタルジーも体験できる、タイムレスという意味でも面白い作品だと思います」(坂口孝則さん)

主なオマージュ系ヒットコンテンツ

1、「エジソン」水曜日のカンパネラ

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2、「オトナブルー」新しい学校のリーダーズ

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3、『シン・仮面ライダー』

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©石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会

4、『ストレンジャー・シングス 未知の世界』

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Netflixシリーズ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」シーズン1~4 独占配信中

単なるリメイクや続編ではなく、’80年代に敬意を込めたドラマや映画が近年次々に製作され、国内外問わずヒットを収めている。『シン・仮面ライダー』に続き、『ゴジラ』に新しい解釈を加えた映画『ゴジラ‐1.0』も11月3日公開される。

橋本菜津美さん 1993年生まれ、兵庫県出身。シンガーソングライター。兄・大祐とのコントユニット「橋本兄妹」としても活動。ラジオ『中将タカノリ・橋本菜津美の昭和卍パラダイス』放送中。

塚越友子さん 1973年、スイス生まれ。臨床心理士、公認心理師、産業カウンセラー。2008年、東京中央カウンセリングを開業し、悩める人々をサポート。メディア出演、研修講師も務める。

宮地ケンスケさん 1976年生まれ、高知県出身。お笑いトリオ「ニブンノゴ!」のメンバーとして活動。2018年より、放送作家や脚本家としても活躍。『全力!脱力タイムズ』などの構成も手掛ける。

坂口孝則さん 1978年生まれ、佐賀県出身。大阪大学経済学部卒。未来調達研究所株式会社所属。経営コンサルタントとして、講演や研修を行い、メディアにも出演するなど、多方面で活躍中。

※『anan』2023年10月4日号より。イラスト・AiLeeN 取材、文・関川直子

(by anan編集部)

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