――主題歌「アイドル」が、グローバルなヒットになりました。
ikura(以下i):嬉しさとともに驚きもあります。ここまで世界中のみなさんに届くとは予想していなかったので。
Ayase(以下A):想像以上の反響に驚いていますね。
――原曲は、Ayaseさんがコミックスを読まれた際に制作されたそうですね。
A:そうなんです。シリアスな展開もあるのですが、物語として面白すぎて、これを楽曲として表現したいと個人的にデモを作りました。サウンドは当時のものがそのままベースになっています。
――その後、原作者の赤坂アカ先生がYOASOBIさんのために書かれた短編小説「45510」を基に歌詞を書かれたと。
A:「アイドル」という存在、それを取り巻く芸能界をテーマにしました。小説を音楽にするユニットなので「45510」を中心に、漫画から受けたインスピレーションや、オープニングとして視聴者がワクワクする楽曲としてバランスをとっていきましたね。
i:ボーカルとしても「アイドル」らしさを意識しています。今回の曲にはラップパートもあるのですが、ラッパーのようにカッコよく表現するのではなく、アイドルのキュートさやキャッチーさを考えながら声色を作りました。
――『【推しの子】』以外にもアニメの主題歌を数多く担当されていますが、心がけていることは?
A:アニメのオープニングは毎週流れるものになるので、物語の始まりだけでなく、全体像を捉えることを心がけています。物語が進む中でだんだんと面白みが増していくような、視聴者にも(物語の展開に)気づきが与えられるような楽曲が目指しているところです。
――『【推しの子】』では芸能界の裏側も描かれますが、おふたりから見てもリアルに感じますか?
A:はい。特に、炎上のようなネガティブな現象に対して描かれるキャラクターたちの心情が。
i:確かに、キャラクターたちの心の動きは、同じ人間であるのを実感させられるくらいリアル。
――『【推しの子】』ではSNSの意見に揺れる若者たちが描かれています。おふたりにも様々な意見が届くと思いますが、自信や自己肯定感を保つ秘訣はありますか?
A:いや、僕自身は自己肯定感がまったくなくて。というより、SNSがこれだけ普及した世の中だと、持ちにくいと思いますね。
i:ミュージシャンとしてではなく、自分が生きる上での自己肯定感で言うなら、私は高い方だと思います。幼少期にアメリカに住んでいたのが大きくて、自分らしさが尊重される環境でした。日本だと周りに合わせるのが正しいとされる場面も多いように感じるので、その違いはあるかなと。
――なるほど。では、おふたりがYOASOBIを続ける上で大切にしているモチベーションとは?
A:最強のJ‐POPアーティストになることを目標としているので、評価されることはひとつの軸です。ただ、今後はこの「アイドル」のヒットを超えないといけない…という新たな重圧も正直あります。なので、ヒットとは別に、身近な人が頑張りを認めてくれることが、自分にとって励みになっていますね。
i:私は、Ayaseさんが作った曲にフィットする最高のボーカルを乗せることが大きなモチベーションです。今回の「アイドル」も、見たことのない自分に出会えた喜びがあります。挑戦の連続で心身ともに疲弊するのですが、これからも楽しみながら頑張ります。
ヨアソビ コンポーザー・Ayaseと、ボーカル・ikuraによる小説を音楽にするユニット。2019年に結成。「アイドル」はBillboard世界チャート(米国を除く)で1位に。
TVアニメ『【推しの子】』 原作は、赤坂アカと横槍メンゴによる同名漫画(2020年より『週刊ヤングジャンプ』にて連載中)。伝説的な人気を誇る夭逝のアイドル・アイと彼女の子で双子のアクアとルビーを中心に、華やかだがシビアで残酷な芸能界やアイドルの世界をリアルに描いた作品。各配信サイトで配信中。©赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・【推しの子】製作委員会
※『anan』2023年7月19日号より。取材、文・森 樹
(by anan編集部)