5人の人気俳優たちが監督に! それぞれの個性が光る短編映画。
「この企画では、映画を愛し、映画に愛される方々に監督のオファーをしています。“やってみたい”と直接声をかけていただくこともありますし、俳優さんとの会話やメディアでのコメントを通じて、“この人は監督に向いているのではないか”と伝わってくることも。今回で3度目となり、マッチングの精度がより上がっているのではと思います」
監督が決定したら、まずは脚本づくりからスタート。監督自ら書くこともあれば、脚本家を招くこともあるそう。キャスティングは俳優たちの交友によって決まることが多く、監督と深い信頼関係にある出演者が揃うとやはり意思疎通も円滑だ。演じる者同士だからか、初めて仕事をする相手でもすぐに分かり合えることが多いという。それから、ロケハンや衣装、美術や小道具に至るまで、すべて監督が指揮をとっていく。
「第3弾では、ルーティン化する部分と監督ごとに個別化する部分がより明確に。制作側のミッションとしても、監督の魂の深い部分に共鳴したいという意識がありました。そうすることで、より思い切った変化ができたかなと。作り手の色がしっかり表れる、この多様性こそが、短編映画というジャンルの持つ大きな魅力の一つではないでしょうか」
#1 『CRANK‐クランク‐』
監督:高良健吾
出演:中島歩、染谷将太
東京に暮らす若者のリアルな葛藤を描く。
メッセンジャーとして働き、東京中を忙しく走り回っている丸(中島歩)は、仕事帰りに立ち寄った町中華でメッセンジャー仲間のヒデ(染谷将太)と偶然出会う。妻の田舎へ移住しようと語り出すヒデの話を聞き、自分の未来が不安になった丸は夜の道を自転車で駆けていく。主役の二人はもちろん、井浦新や柄本佑、河井青葉など脇を固める豪華キャストにも注目。撮影は高良の映画デビュー作も手がけた名匠・山崎裕が担当。
#2 『COUNT 100』
監督:玉木宏
出演:林遣都
栄光と挫折を知るボクサーの不思議な体験。
かつてはチャンピオンだったプロボクサーの光輝(林遣都)。手酷い負けを経験したことで自信を失くし、故郷から共に出てきた彼女からも見放されそうになっている。そんなある日、「あなたの未来を変えてあげる」と書かれた奇妙なチラシを受け取ったことを機に光輝の生活が大きく動き出す。自身もボクシングの経験がある玉木宏が監督を担当し、撮影は『百円の恋』や『アンダードッグ』で知られる西村博光が手がけた。
#3 『Prelude~プレリュード~』
監督:土屋太鳳
出演:土屋太鳳、有村架純
過去を大切にしながら苦悩を乗り越えていく家族。
戦争の苦い記憶を持つ祖父(S-KEN)、バレリーナの道を志したものの挫折感を抱えた歩架(土屋太鳳)、悲しみの中に沈む母(岩瀬顕子)、自らも苦しい過去を抱えながら歩架たちを優しく見つめる親友の桃子(有村架純)。平穏な日常生活の中で大切な記憶を引き継いでいく、家族と仲間の物語。カメラマンを務めたのは、『ワンダフルライフ』や『花よりもなほ』など是枝裕和監督とのタッグで知られる山崎裕(#1も担当)。
#4 『いつまで』
監督:中川大志
出演:井之脇海、板垣瑞生、林裕太
同世代の監督と俳優がリアルな想いを切り取る。
親友の結婚式の後、終電を逃して田舎の小さな駅に降ろされた教師の洸(井之脇海)、サラリーマンの礼司(板垣瑞生)、画家の卵の泰正(林裕太)。3人は、「そこへ行けば願いが叶う」という駅員の勧めに従って夜の神社へと歩き出す。未来に漠然とした不安を抱える彼らは、夜道の途中でそれぞれの想いを吐き出していく。中川大志と同世代が脚本とキャストを務め、監督のありのままのメッセージが込められた等身大の作品が完成。
#5 『虎の洞窟』
監督:野村萬斎
出演:窪田正孝
悲劇の名作に着想を得た現代を生きる男の物語。
シェイクスピアの『ハムレット』と中島敦の『山月記』をモチーフに、孤独な青年の心象風景を抉るように描く。周囲から“社会のゴミ”と罵られ、自らの居場所を見出せない男(窪田正孝)は、ある日不思議な声に誘われて外へ駆け出す。すると、力がみなぎって虎になっている自分に気づくのだが……。窪田正孝の息をのむ演技はもちろん、警官役に勝村政信と梶原善、若者役に萬斎長男の野村裕基が出演するのも見どころ。
いば・よしあき 1967年生まれ。WOWOW制作部で『アクターズ・ショート・フィルム3』のチーフプロデューサーを務める。過去には古典落語をモチーフにしたオムニバスドラマ『にんげんこわい』などを手がけた。
WOWOW『アクターズ・ショート・フィルム3』 予算・撮影日数など同条件のもと、5人の俳優たちが25分以内のショートフィルムを制作。アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア」のグランプリを目指す人気シリーズの第3弾。WOWOWにて2月11日(土)20:00より放送・配信。
※『anan』2023年2月15日号より。取材、文・大場桃果
(by anan編集部)