阿部寛、マレーシア映画で庭師役に 「あまり見たことのない自分が映っていました」

エンタメ
2021.08.10
阿部寛さんが出演する映画『夕霧花園』は、台湾出身の監督が撮り、香港映画界で活躍するリー・シンジエさんが主演するマレーシア映画。第二次世界大戦中からマレーシアで身分を隠しながら生きた、庭師で彫師でもある中村有朋を演じた。
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「これまで侍も演じてきましたが、今回はまた今までにない日本人的な美学を持った人物で、演じるのは挑戦でした。その高い美意識を理解するには、まずは庭を学ばなければと。偉大な庭師の極秘映像を入手して見たり、そのお孫さんで同じく庭師の方に話を伺ったり、お寺の庭を見に行ったりもしたんですが、あまりに深い世界で理解するのが難しかった。ようやく掴めたのは、現地の広大なロケセットに立った時。大自然の山奥で、見渡す限り人工物が何もないところに、石が手前に一つ二つと立ててある。すべての角度から計算し尽くされた庭を見て、いろんな立場の人物の視点から描かれたこの作品の意味を感じ取れたんです」

ヒロインのユンリンは、日本占領下時代に妹を亡くし、彼女の夢だった庭を造るために、有朋に教えを乞う。歴史の描き方については、監督と話し合いを重ねた。

「日本人がステレオタイプに描かれすぎていたので、入念に確認させてもらいました。脚本が上がった段階で、懸念することは何もありませんでしたね。あとは、変な誤解が生まれないように現場でも擦り合わせました。こうした作業は、外国の作品に出る時は、毎回必要になります」

マレーシア女性のユンリンは、日本人に複雑な感情を抱いていたが、やがて有朋に惹かれていく。

「二人は国もそれぞれが背負っている立場も違います。それでも互いを理解し合おうとする男女の愛を繊細に描いた作品で、そこにはあまり見たことのない自分が映っていました。それがいいのかどうかは、まだ自分ではわかりません。作品を客観的に見るには時間がかかるんです。この間久々にやった『ドラゴン桜』も16年経ってやっと視聴者目線で前作を見られましたから」

『ドラゴン桜』の桜木のようなキャラの強い役も魅力的だが、有朋のように佇まいだけで語る役を演じ切れるのも、阿部さんの凄みだ。

「海外の方も『ドラゴン桜』や『結婚できない男』を好んで見てくれてたみたいですが、オファーが来るのはなぜか不思議と寡黙な役なんです。海外作品にはこれからも機会があればどんどん挑戦したいですね」

この作品の現場には、9つの国や地域から演者・スタッフが集まった。

「監督を中心に、集中して楽しみながらいいものを作ろうというプロ意識は、日本の現場と何も変わらず、違和感もありませんでした。特にインド人チームとはよく釣りに行って遊びました。ちょっと似ていて安心できるんでしょうかね(笑)。『ボス、魚釣れたよ!』って」

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『夕霧花園』 捕虜収容所で亡くした妹の夢を叶えようと日本庭園を造るマレーシア人ユンリン。その後裁判官となった彼女は、かつて愛した庭師の中村有朋が、スパイ容疑をかけられていることを知り、潔白を証明しようと動く。公開中。©2019 ASTRO SHAW, HBO ASIA, FINAS, CJ ENTERTAINMENT ALL RIGHTS RESERVED

あべ・ひろし 1964年6月22日生まれ、神奈川県出身。モデルとして活躍後、’87年、俳優デビュー。「TRICK」シリーズなど大ヒット作品に多数出演。映画『異動辞令は音楽隊!』が来年夏公開予定。

※『anan』2021年8月11日‐18日合併号より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・土屋詩童 ヘア&メイク・丸山 良 インタビュー、文・小泉咲子

(by anan編集部)

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