世の中が変わっていってるから曲も今まで通りじゃない方がいい。
「僕が曲を書くことが多いんですけど、元々他のメンバーが作ってる曲もあって。それを一回まとめて一個の作品にして出したかったんです。バニラズはメンバーそれぞれの個性が強いので、初の武道館のタイミングで、それを活かして他のバンドにできないことやりたいなって思ってて。だから、4曲ともバラバラで、結構自由に詰め込みました」
牧さんが作った表題曲「鏡」は、カラフルなインディーポップ調のアレンジがとても新鮮だ。
「緊急事態宣言中に作った曲です。今までと違う感情とも向き合ったし、いろんな曲を聴いて、今までと違うアプローチの仕方も勉強して。世の中が変わっていってるから、曲も今まで通りじゃないほうがいいなと思ったんです。普段と違い、僕がギターを弾いていなかったりもします」
「鏡」は、コロナ禍において様々なことがそぎ落とされ、本当に必要なものに向き合うようになった、世界の動きと重なる歌詞も印象的だ。
「今まで表だったものが裏になったり、その逆もあって。鏡って同じものが映るんだけど、そうじゃなくなってるなって。例えばSNSというフィルターを通すと、見た目だったり、豪華な暮らしだったり、“虚構”が映されていると思った。でもコロナってすごくリアリティのある現象で。いくら人間が取り繕ってもどうしようもない自然のパワーみたいなものを突きつけられることによって、いろんなことを考えさせられましたよね。マスクすると表情も見えなくて繋がってる感覚も薄い。でも元々音楽って顔が見えない人に向けて作ってて、言葉と演奏という聴覚だけでどれだけ人の心を揺さぶることができるかというもの。そういう気持ちも落とし込んだ曲ですね」
交通事故に遭い、約1年間の休養期間を経て復帰した、ベースの長谷川プリティ敬祐さんが作った熱いロックンロール曲「バームクーヘン」も収められている。
「プリティは、今また音楽を続けられていることに対して魂が燃えているんです。その『復帰できたんだから、自分の好きなことやるぞ!』っていう気持ちをそのまま詰め込めばいいじゃんって話をしましたね。リハビリとかで辛いことも多い入院中の唯一の楽しみがバームクーヘンを食べることだったらしいので(笑)、タイトルもそれになりました。バームクーヘンってレコード盤のことでもあるのでそういう意味でも良いと思ったんですよね」
デビュー当初の“ロックンロール”と“フォーク”という2本柱から、どんどん音楽性の幅を広げている。
「バンドというより、ひとつの音楽集団みたいな方向にもっていきたいんですよね。僕らは自由に新しいものを取り入れたいタイプ。過去の偉大なミュージシャンにいつまでも負けてるのは悔しいので、自由に新しいことを取り入れて、彼らができなかったことに挑戦していきたいと思っています」
『鏡 e.p.』。各メンバーが作詞・作曲・ボーカルを担当した全4曲。初の日本武道館公演記念作品。【完全限定生産盤(CD+DVD)】¥2,020 【通常盤(CD)】¥1,300(JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント)
ゴーゴーバニラズ 牧達弥(Vo&Gt)、長谷川プリティ敬祐(Ba)、ジェットセイヤ(Dr)、柳沢進太郎(Gt)によるバンド。'14年、メジャーデビュー。初のホールツアーに続き、11月23日、初の日本武道館公演を開催。
※『anan』2020年11月25日号より。写真・内山めぐみ インタビュー、文・小松香里
(by anan編集部)