その戯曲とは、「30代の頃、しょっちゅう一緒に芝居を作っていた」長塚圭史さんが13年前に書いた『アジアの女』。大災害で壊滅した町に住み続ける兄妹と、彼らを取り巻く人々を描いた物語だ。
「演劇の醍醐味がふんだんにある作品。稽古で生まれるものを大事にしたい」
「3.11よりも前にこれを書いていたと思うと、すごい想像力ですよね。ただ、今回の演出家は吉田鋼太郎さんやし、長塚の顔を浮かべずに鋼太郎さんの稽古場で生まれるもんを大事にしたいと思てるんです」
その吉田さんとも、10数年前に長塚さんを介して知り合った仲だ。
「長塚に紹介されてお会いした数年後、飲み屋で偶然一緒になった時に、『余計なことせんでも舞台で食べていけるから舞台をやれ』って言ってくださって視界が開けたんです。そうやって、いつも自分の人生の重要なところに鋼太郎さんがいる。初めて共演した時には、本読みの段階から常に120%でくる鋼太郎さんと毎日対峙して稽古してるうち、自分の芝居が上手(うま)なってるのがわかって震えました。俳優としても演出家としても信頼されるのは、そういうとこなんちゃうかと思います」
主演は石原さとみさん。その印象は、「自分のやりたいことがはっきりしていて、理想をちゃんと持った芯の強い人」。なんと今作の企画には石原さん自身も参加したとか。
「人間って、どんなに悲しくても面白いことに遭遇したら笑いたなる。長塚の戯曲には、そういうことがふんだんに書かれているんです。でもそれは、稽古場で時間を過ごさないと見つけられないもの。それこそが演劇の醍醐味でもあるんで、一緒に見つけていけたらと思てます」
『アジアの女』 大災害で壊滅した町で、半壊の家に住み続けている兄(山内)と妹(石原)。そんななか、元編集者の兄を訪ねて、作家(吉田)がやってくる。彼は「自分に物語を書かせろ」と迫ってくるが…。9月6日(金)~29日(日) 渋谷・Bunkamura シアターコクーン 作/長塚圭史 演出/吉田鋼太郎 出演/石原さとみ、山内圭哉、矢本悠馬、水口早香、吉田鋼太郎 S席9800円(税込み) 当日券あり ホリプロチケットセンター TEL:03・3490・4949 https://horipro-stage.jp
やまうち・たかや 1971年10月31日生まれ。大阪府出身。劇団☆新感線など人気劇団の舞台に数多く客演するほか、近年は映像作品にも数多く出演。出演映画『引っ越し大名!』が公開中。
※『anan』2019年9月11日号より。写真・土佐麻理子 インタビュー、文・望月リサ
(by anan編集部)
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