兄ちゃんは世界一カッコいい。でも、興味はないです(笑)。
カメラのレンズが向けられると、最初は困ったような恥ずかしそうな。でも、途中から肚を括ったのか、諦めたのか、されるがまま、なすがままといった表情に。そんな一挙手一投足を見ていると、何だか妙に和んで笑ってしまう。いま、そんな柄本時生さんの不思議な魅力にハマる女子が増加中です。
――今回、ドイツで何度も上演さている『チック』という舞台への出演が決まっています。出演の決め手となったのはなんですか。
柄本:僕は、声をかけていただいた仕事なら、なるべくなんでもやります…って感じなんだと思います。
――でもきっと、やりたい作品や役柄というのはあるんですよね?
柄本:ないです、ないです。むしろ、やっちゃいけないというか…。やりたいものをやっていたら、楽しいだけじゃないですか。それって結局は楽しくないなって。
――楽しいだけでは俳優として成長しない、という意味ですか?
柄本:じゃないです。じゃないです。ただ、何かしら引っかかりがあって、考えさせられたりするようなお仕事の方が好き、というか。
――では、柄本さんの『チック』への引っかかりはどこでしょうか。
柄本:14歳の役っていうところですかね。もう14歳じゃないですから。
――大人が14歳を演じるのは、舞台ならではの面白さですよね。
柄本:こういう時、演劇の嘘ってすっごい面白いなと思うんです。僕は。
――では、台本を読んで、面白いと感じたポイントを伺えますか?
柄本:14歳ですね。例えば『スタンド・バイ・ミー』のように、子供と大人の境のような時期を描いたものってどれも面白いんですよね。大人は観て懐かしく思うし、子供は憧れる年頃なんだと思います。
――その年頃の役をどう演じようと思っています?
柄本:そういうのはない…です。演出家さんに言われたことをやるだけで、あとは面白い作品になるように頑張ります、っていうだけです。
――自分の意思は必要ない、と?
柄本:はい。僕はそうなんです…。
――俳優になろうと思われた時には、こういう作品に出てみたいという気持ちはあったんですよね。
柄本:僕の場合、兄ちゃん(柄本佑さん)に来た仕事が(年齢的に)兄ちゃんができなくて、僕に来たってだけですから。
――でも、引き受けた時には、やってみようと思われたわけで…。
柄本:詳しいことは何も説明されずに、とりあえず行ってほしいんだよねって言われたんです。で、駅からの道すがら、これからオーディションだからって言われるっていう(笑)。すでに向かっちゃっているし、さすがに回れ右はできないですよね。でも、そりゃあ興味なかったって言ったら嘘ですよ。
――最初のきっかけはそうかもしれませんが、続けていくには、それなりの意志が必要ですよね。
柄本:はっきり言ったら、高校生の時に大学受験を失敗して、社会人にならなきゃいけなくなったんです。そこから意識しましたね。まあ、その時にうまくいっていた方に流れていったって感じなんですけど。
――その選択に関して、ご両親の助言や反対などはありました?
柄本:うちの家族って変なんですよ。そもそも、親は共働きで家にいなかったし、最初っから親離れしてたみたいなもんでしたし…。
――それと関係しているのか、以前のインタビューで、お兄さんが大好きだと話していましたよね。
柄本:はっきり言ってブラコンです。大好きです。僕んなかでは、兄ちゃんが世界で一番カッコいいです。
――同性同士の兄弟って、憧れと同時にライバル心も芽生えたりするものだったりしませんか?
柄本:うーん…ないですね。だってあの人、運動神経が本当に悪いんですよ。僕の方が運動できますし。
――えっと…では、お兄さんがカッコいいと思うポイントとは?
柄本:ないですよ。なんかもう、理屈じゃないんですよね。…あと、こういうことを言えるのも、あの人に興味ないからなんです。普段何しているか全然知らないですから。
――仲、いいんです…よね?
柄本:すっごいいいんですけど、その理由は、お互いがお互いに興味がないからなんですよ。たぶん、興味を持ったら喧嘩するんだと思います。そもそも、家族全員、普段何してるかなんて興味ないです。
――お父さん(柄本明さん)やお母さん(角替和枝さん)は、カッコいいとはならないんですか?
柄本:ないですね。オヤジをカッコいいなんて思わないですよ。
――でも、素晴らしい俳優さんなわけじゃないですか。
柄本:だって…本当に面倒くさい人なんです。でも、そういう意味で言うと、和枝さんは面白いです。変なんです。すっごい感情的な人で、突然、「それは私に死ねって言ってるの?」とか言いますからね。笑っちゃいます。
――どういう状況になると、そういう会話になるんでしょうか。
柄本:僕もわっかんないんです(笑)。唐突に「ここに置いてあったものがない」って言いだす時があって、誰も知らないから、そう返すじゃないですか。そうすると「じゃあ、これに脚が生えて、どっか行ったっていうの?」って急に叫びだすんです。でもそれ、足元に落ちているんですよね。そんなオバさん、面白くないですか?
――その面倒くさいお父さんと、面白いお母さんのDNAを受け継いでいるわけですけれど。
柄本:すっげぇ恥ずかしかったのは、京都の東映と松竹の撮影所の間に喫茶店があるんですけど、その店に入った時にマスターが笑いながら話しかけてきて、「ホンマすごいなと思うんですけど、お兄さんもお父さんもそこ座りはるんです」って言われたんです。初めて入った店で、一番いい席だなと思って座った席だったんですけど。
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