意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「子宮頸がんワクチン」です。

女性だけの問題と片付けないで男女で考えたい。

society

子宮頸がんは、そのほとんどが、ヒトパピローマウイルス(HPV)に持続的に感染することで発症するといわれています。HPVは女性の50%は生涯で一度は感染し、主に性交渉によって感染するため、日本では2013年4月より、小学6年生から高校1年生までの女性を対象に、無料の定期接種を行うことにしました。

ところが、接種後に副反応に苦しむ人の訴訟問題も起き、厚労省は同年6月から予防ワクチン接種の積極的な呼びかけを中止しました。それにより、子宮頸がんのリスクは高まり、ワクチン接種推奨を再開するよう、医療従事者から警鐘が鳴らされたんですね。

子宮頸がんの患者は年間約1万1000人、亡くなる人が年に2900人程度いると報告されています。厚労省の曖昧な姿勢によって、ワクチンの接種率は1%以下に落ちてしまいました。

そして昨年末、厚労省は子宮頸がん予防ワクチンの積極的な接種呼びかけを再開することを決めました。推奨しなかった空白の8年間に対象年齢だった、1997年度~2005年度生まれの女性も、無償で接種できるように整備しました。この背景には、新型コロナウイルスの登場により、ワクチンはゼロリスクではないが有効性も実感できること、自己判断のもとに接種するもの、という認識が共有できたことも作用したのではないかと思います。

ただ、注意をしないといけないのは、新型コロナワクチンも子宮頸がんワクチンに関しても、副反応が出たと訴える人や、ワクチンに反対する個人を糾弾するのは筋違いということです。副反応の後遺症で苦しむ人は、少なからず存在します。国や専門機関は、しっかりとその情報を収集し、補償の体制を整わせる必要があると思います。

子宮頸がんワクチンは、男性が接種することでも罹患リスクを減らせます。HPVは中咽頭がんや肛門がん、陰茎がんなどの原因にもなるといわれています。世界では、77か国が男性の接種を承認しており、アメリカ、イギリス、オーストラリアなど24か国では、男性の公費接種が行われているんですね。女性だけの問題と片付けず、男女ともに考えたいテーマだと思います。

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堀 潤 ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。

※『anan』2022年3月16日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)

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私的な理由や感情論によらず、今この時点で必要だと考える(もしくは直感する)ことを行うという、どこか割り切った感のある日です。私情を挟むことでひいきが生じ、判断の目が曇ってしまうのなら、それは将来の禍根となり得ます。そのため、ここでは現状と今後のトータルバランスを考えた賢い選択をするほうがいいはず。

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