心を“花”に託してパフォーマンス。メンバーの新境地を見逃すな。
テーマは“花”。乃木坂46の9人のメンバーが「桜」「菊」「梅」など7つの古典作品に描かれた花に化身。そのパフォーマンスを気鋭の映像作家が撮り下ろし、モチーフになった日本美術作品(複製)と共にインスタレーションとして展示する試みだ。「乃木坂46の表現する世界観と日本文化のコアな部分が、実はつながっていることを知ってもらいたくて企画しました」と東京国立博物館学芸員の松嶋雅人さん。
「西洋や中国の芸術の方向性がリアリズムだとするなら、日本の場合はファンタジー。日本文化の根源といえるのは和歌ですが、古来人々は、山河や花々に自分の心情を託して、歌にしてきたのです。自然災害が多い日本では、悲惨な現実を目の前にしたとき、生き延びるためにポジティブにならざるを得なかった。明日への希望や理想を歌い舞うことで乗り越えようとしたのでしょう」
そうした「ファンタジー」は乃木坂46の楽曲や世界観に通じるものがあると松嶋さん。この展覧会では、古(いにしえ)の人が花に託した思いを受け取ったメンバーが、今度は自分自身が花となって思いを表現する。パフォーマーとしての真摯な姿を目の当たりにすることになりそうだ。
制作には7人の映像作家が携わる。多くが乃木坂46のミュージックビデオの制作を手掛けてきた名だたるクリエイター。オリジナルグッズや公式図録などラインナップも充実だ。
Performer:齋藤飛鳥、Theme:桜
No1.「花下遊楽図屏風」 Artist:大久保拓朗
桜と海棠が咲き誇る中、貴婦人や貴公子が歌舞伎踊りを見物するシーン。世情が荒廃した戦国時代に描かれており、当時の人々が夢見たフィクションの世界を齋藤飛鳥さんはどう表現する!?
花下遊楽図屏風 狩野長信筆 東京国立博物館蔵
※本展覧会では複製を展示
※右隻中央は原品では消失。複製は、ガラス乾板の画像から復元し合成した。
Performer:賀喜遥香、Theme:菊
No5.「見返り美人図」 Artist:横堀光範
江戸市中を歩く美少女はなぜ振り返ったのか? 「男性に呼び止められたから」と松嶋さん。モニターが左右入れ違いに並び、雑踏にいるような感覚で鑑賞できる。
見返り美人図 菱川師宣筆 東京国立博物館蔵
※本展覧会では複製を展示
Performer:梅澤美波、Theme:梅
No7.「振袖 白縮緬地 梅樹衝立鷹模様」 Artist:伊藤衆人
春先に凛と咲く梅。華やかな振り袖に描かれたその花を演じるのは梅澤美波さん。モチーフにあるスクリーンに似た衝立から発想し、コラージュのような映像を演出。
振袖 白縮緬地梅樹衝立鷹模様 東京国立博物館蔵
※本展覧会では複製を展示
春夏秋冬/フォーシーズンズ 乃木坂46 東京国立博物館 表慶館 東京都台東区上野公園13‐9 9月4日(土)~11月28日(日)9時30分~17時(金・土曜は~20時。入館は閉館の60分前まで) 月曜(9/20は開館)、9/21休 一般・大学生1800円ほか ※事前予約制 TEL:03・5809・0725
※『anan』2021年9月8日号より。取材、文・松本あかね
(by anan編集部)