「小説を書けるのはアニメのおかげ」辻村深月の人生を変えたアニメ5選

2017.11.30
子どものときも、大人になっても! いつだってアニメは、私たちに寄り添ってくれる人生のバイブル的存在。あのシーン、あのセリフに、笑ったり、感動したり、勇気が出たり、行動したり、価値観を変えられたり……。深い人生観がつめ込まれた、大人が観るべきたくさんの名作をピックアップ。anan初のアニメ特集、はじまります! 今回は、辻村深月さんにお話をうかがいました。
アニメ

小さい頃から観続けてきたアニメがすべての源に。

私の父親はオーディオが趣味で、家庭用が出回るようになってすぐに、ビデオカメラやビデオデッキを買っていました。両親が共働きだったこともあり、私が家で退屈しないようにと、テレビで放送されるアニメをとにかくたくさん録画してくれていたんです。そのなかから好きな作品を選んで、ビデオテープが伸び切って画像がおかしくなるくらい繰り返し観ていたのが、アニメの原体験です。

アニメはファースト世代が『宇宙戦艦ヤマト』、次が『機動戦士ガンダム』、さらにその次が『新世紀エヴァンゲリオン』といわれているのですが、わが家のビデオコレクションには父世代のアニメも網羅されていました。そういった作品も普通に観ていたので、50代、60代の人たちともアニメの話で盛り上がれるんです。これまで観てきたアニメが共通言語になるような体験は、大人になると結構あって、たとえば『ガンダム』を全部観ているって言うと、年上の方から途端に信頼してもらえるようになる(笑)。ひとつの世界を網羅することによって広がる人間関係が、大人にはたくさんあるのが楽しいし、それっていつ始めても遅くないと思うんです。反対に、下の世代におすすめを教えてもらうのも面白くて、アニメはどんどん表現が進化しているから、観続けていると時代に置いていかれる感じがしないんですよね。

長編小説『冷たい校舎の時は止まる』でデビューしたとき、作品を読んでくれた周りの人に、「小説というよりアニメっぽいね」という感想をもらったことがあります。小説を書くうえでも私にとってアニメは影響だらけなのですが、アニメの素晴らしいところは、世界をひとつの層で見ていないことだと思います。アニメって設定が深いものが多いのですが、実写よりも先にそれが実現可能なメディアだったんですよね。自分が生きている世界とは別の扉がどこかにあるかもしれないっていうことを、初めて視覚的に見せてくれたのがアニメでした。

私の小説は現実をベースにしているけど、ほんのちょっと不思議な設定が多い。たとえば『ツナグ』のように、死んだ人と会えるような世界観を抵抗なく書けるのは、アニメを観てきたおかげだと思っています。かなり年配の読者からも「実際は絶対にあり得ないことなんだけど、あってもおかしくないように読める」とよく言ってもらえるのですが、それは私の発明でも何でもなくて、アニメで上質なお手本をたくさん見てきたからこそ、できること。アニメを観てきたことは、作家としての私の武器であり、財産です。

辻村深月さんの人生を変えたアニメ

『ドラえもん』【人格と小説の書き方の基本を作った、パソコンのOS的存在】
「これなくして今の自分はないと言えるほどに大切なのが、藤子・F・不二雄先生の作品。特に『ドラえもん』は私にとってのOSみたいな感じで、人格形成にまで影響を受けていると思います。こういうことをしたら人としてダメだというのを教えてもらったし、お話作りのお手本としてもあらゆる基礎がつまった一番の教科書です。テレビアニメ版と映画版、どちらも好きなのですが、今でも毎週放送されていることに幸せを感じます」

(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK

『銀河鉄道999』【想い続けるだけでもいいという恋愛観を育まれた名作】
「特に夢中になったのは劇場版。周りの男子はメーテルに夢中になっていたけれど、私は女海賊・エメラルダスの強さに惹かれました。彼女はトチローという男の人のことが好きで、彼のことをずっと探しているんです。告白したり、結ばれることを前提としないで、自分の心の中だけで好きな人のことを想い続ける恋愛の形があってもいいし、それがすごく素敵だなと思えた作品。エメラルダスとトチローは、私にとって理想のカップルです」

(C)松本零士・東映アニメーション

『新世紀エヴァンゲリオン』【いろんな人と感動を共有してつながることの楽しさを実感】

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「高校生のときに放送された作品で、私と同世代で影響を受けていない人はほぼいないはず。内容の深刻さやシリアスさもですが、人間の弱さを肯定したテーマなど禁忌がないところが斬新でした。今でいうオタクとリア充の壁を取っ払った作品で、教室のあちこちでみんながアニメの話をオープンにできるようになったのが当時は衝撃でした。それまでアニメを観なかった子とビデオの貸し借りをするようになり、人によって見方が違うのも新鮮でした」

(C)カラー/Project Eva.

『絶対無敵ライジンオー』【日常と同じ場所に大冒険があることを意識させてくれた】
「私が理想とする、ロボットアニメのすべてがつまった作品。クラスメイトが地球防衛組として団結して悪と戦うのですが、大事な模試の最中に出動要請があったりして、小学生の普通の悩みと地球を救う重大な任務が同居している。アニメはこうであってほしいと思うんです。最終回も衝撃的で、子どもをなめていない。自分が子どもに向けて何か書くときは、大人も面白いと思えるものでなければ通用しないのだと、常々言い聞かせています」

(C)サンライズ

『少女革命ウテナ』【女性としてどう生きるべきか規範を示し、支えてくれた】

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「この作品がなければ、今と同じ形で小説を書いていることはなかったと思います。最初に感動して、もう一度観直したらフェミニズムの話として完璧な一本の歴史を見せられた気持ちになって。これを作った幾原邦彦監督が男性であることにも、すごく勇気づけられました。主人公たちやこのアニメを作った人に軽蔑される生き方はしたくない、自分の好きなことを貫きたい、という規範になる部分がたくさんあって、女性としても支えられました」

(C)ビーパパス・さいとうちほ/小学館・少革委員会・テレビ東京 (C)1999 少女革命ウテナ製作委員会

つじむら・みづき ananで連載したアニメーションの制作現場を舞台にした小説『ハケンアニメ!』の文庫が好評発売中。『島はぼくらと』『朝が来る』『かがみの孤城』など著書多数。

ワンピース¥6,500(ダブルネーム/ダブルネームTEL:0120・786・120) アクセサリーは本人私物

※『anan』2017年12月6日号より。写真・女鹿成二 スタイリスト・辻村真理 取材、文・兵藤育子

(by anan編集部)

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