題材は、いま話題のTinder。「新たな演劇との出合いを作りたい」
「大きな劇場での公演が続きましたから、今回は少人数の出演者で、細かなリアクションが客席にきちんと伝わる小さな劇場で、濃密でキャッチーな作品を作りたいと思って」
新作『スーパーストライク』で描くのは、海外発の出会い系アプリとして話題の「Tinder」を介したひとりの男性と3人の女性たち。
「スマホの画面に次々映し出される異性の写真を、アリかナシで選り分けていくんですけれど、女子高生までもが友達同士でアリとかナシとか言いながら見ている。これを演劇にできないかと思いました。ただ、そのために前半はほとんど電話のシーンで、出会うまでにだいぶ時間があるんです。別々の空間にいる設定だけに、役者の動きが限られるなか客席を舞台に引きつけておくには、セリフ自体ややり取りの面白さで見せていくしかない。それは私にも役者にとっても挑戦になるのかな、と」
物語の中心に配されるのは、「自身の確立した演技体を持つ」田村健太郎さん。そこに「存在感のポップさゆえに痛々しいシーンでも軽やかに演じられる」長井短さんとファーストサマーウイカさんという布陣。
「男性はごく普通のいい人なんだけれど、一生懸命さの方向が少し間違っている。その彼が、アプリをきっかけに全然思いもよらないところに行ってしまうお話です。これまでは、アテ書きをしていましたが、役者さんが自分で味付けできるよう、今回の脚本は敢えて少しラフにしているんですよ。自分の不得意なことも書いて、もっと演出で魅せることができないかとも考えています。去年と今年で演出力もつきましたし、作品が変容していくことを恐れずに、稽古場で作り上げられたら」
言葉の端々から受けるのは、自らのテリトリーを越え、新たな一歩を踏み出そうとする根本さんの覚悟。
「自分自身もお客さんにも、新たな演劇の発見になればと思います」