盲腸の手術で840万円!? オバマケア撤廃でどうなるアメリカ医療費

2017.3.26
意外と知らない社会の問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「オバマケア」です。
堀潤

トランプ大統領は就任直後、「オバマケア」の撤廃に向けた大統領令にサインをしました。「オバマケア」とは通称で、オバマ前大統領が推進した医療保険制度改革のことです。

日本は「国民皆保険制度」が徹底されており、全国民が医療保険に加入でき、子供や所得の少ない人の分は、所得の多い人が負担する仕組みです。ところがアメリカは自由診療のため、基本的に医療費がとても高いんですね。2015年の外務省の調べによると、ニューヨークの医療費が最も高額で、一般の初診料が約1万8000~3万6000円(1ドル120円計算)。盲腸で入院し腹膜炎を併発した場合、8日間で約840万円、日本は盲腸だと30万~40万円(そのうち本人負担3割)ですから、だいぶ差がありますね。

アメリカでは任意で民間の保険に加入しますが、国民の6人に1人、約4800万人の人が無保険状態だったのです。リーマンショック以降、格差が広がり、保険加入者も医療費が支払えずに自己破産する人が出てきてしまいました。オバマ前大統領は、国民が広く医療を受けられるようにと、保険加入を義務付け、低所得者に補助金を出すなどの改革「オバマケア」を2014年に施行。それまで病院に行けなかった低所得者が治療を受けられるようになり、効果を上げた一方で、全体の保険料が上がったことに対し批判の声も。「小さな政府」を目指す共和党は一貫して「オバマケア」に反対。財政を悪化させて、保険会社を締め付けますし、保険の強制加入は国民の自由を縛るもの、という考えだからです。

世界の医療費事情をみると、1人当たりの年間医療費が断トツに高いのがアメリカで80万円以上。それ以外の国は大差がありません。イギリスでは原則自己負担ゼロですし、ドイツも2013年から外来患者の自己負担をなくしました。トランプ大統領はオバマケアの代替プランを出すと言っていますが、具体的なものはまだ出ていません。日本で当たり前のように受けている国民皆保険。昭和13年に提案されたころは社会主義的と批判もあったそうですが、誰でも安心して医療を受けられるのはありがたいことですね。

ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN

※『anan』2017年3月29日号より。写真・中島慶子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)


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