足首の中心にある距骨(きょこつ)は、体全体の安定性や正しい姿勢の保持に深く関わっている。距骨を動かす関節の柔軟性を高めることで、脚の歪みやラインが整い、歩行姿勢も美しく改善!
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距骨を支える関節とインナーマッスルを強化!
足首は股関節や骨盤と同様に、歩き方や姿勢のバランスを調整する重要なパーツ。なかでも足首の動きの中枢を担うのが、距骨とその上下の関節。
「距骨は全身のバランスや動作に深く関わり、距腿関節と距骨下関節と連動して動きます。これらの関節の可動域が狭くなると、距骨が正しく機能しなくなり、姿勢の悪化や脚の疲れやすさ、外反母趾や足裏のタコ、さらには動作時に膝が内側に入って脚のラインが崩れるなど、さまざまな弊害があらわれます」(早稲田大学教授・金岡恒治さん)
もうひとつ、距骨の動きの安定を支える重要な部位が、足底のインナーマッスル。
「距骨まわりの関節と足底内在筋をしっかり動かして強化することで、歩行動作が美しくなり、足のトラブルも緩和されます」

距腿関節(きょたいかんせつ)・距骨下関節(きょこつかかんせつ)
距腿関節は距骨の上部に接する関節。足首を曲げてつま先を上げる「背屈」や、つま先を下げる「底屈」の動きに関与する。距骨の下部に接する距骨下関節は、足をひねる動きやバランスを担い、足を内側に倒す動き「回内」や足を外側に倒す「回外」に関わる。この2つの関節が連動して、足の複雑な動きを支えている。
距骨(きょこつ)
すねの骨とかかとの骨の間にある骨。筋肉が直接付着していない珍しい構造で、じん帯や周りの関節によって安定性が保たれる。足首の上下左右の動きに関わるほか、体重を受けとめて足全体に力を分散させたり、足裏からの振動を脳に伝えて姿勢や立位のバランスを調整するなど、足の動きや感覚のセンサー的な役割を果たす。
【CHECK!】気づかないうちにガチガチ? 足首のやわらかさチェック(※)
足首が硬い人は、「背屈」の可動域が狭くなっているかも。前スポーツ庁長官・室伏広治さん考案の下の動きでチェックしよう。しゃがみにくい、つまずきやすい、足が重く感じるなどの症状も、足首が硬いサインに。

壁の前で、握りこぶし1つ分の位置に片足のつま先を置く。かかとを床につけたまま、膝が壁につくか確認する。反対の足も同じように確認する。

[NG]姿勢が正しくできているか確認!
・姿勢が悪くなる
・膝が壁につかない
・足首まわりに痛みが生じる
・かかとが浮いてしまう
上記に1つでも当てはまる人は足首が硬い人。歪みを整え、足のインナーマッスルを鍛えよう。
脚&足の歪みを取り除く、距骨まわりと足のインナーマッスルケア
現代人は足のインナーマッスルを使う機会が少なく、距骨まわりも固まりがち。今回紹介するエクササイズは基本編を行うだけでも足の歪みにはもちろん、扁平足や歩き姿勢の改善にも効果が。オフィスやおうちでレッツトライ!
座ってできる! 基本編
まずは座ってできる基本のエクササイズから。ひとつひとつの動作は、関節や筋肉の動きを意識して、ゆっくり行うことがポイント。正円回しは靴を履いたままやってもOK!
座りの基本姿勢

背もたれに寄りかからず、浅い位置に座る。骨盤が後ろに倒れて腰が丸まると足首の動きにも影響が出るため、骨盤を立てて、肩の力を抜いてリラックスした状態を保つことが大切。
正円回し
正円を描くように足首を全方向に動かすことで距腿関節と距骨下関節の柔軟性が高まる。血流のポンプ作用を持つふくらはぎの筋肉も刺激され、冷えやむくみの軽減にも。最初はカクカクした動きでも、続けるとなめらかに。

椅子などに座り、つま先で大きく正円を描くようにゆっくり3回まわし、同様に反対まわしも行う。反対の足も同様に。
ショートフットエクササイズ
足のインナーマッスルが衰えると、足裏のアーチが下がって外反母趾やタコの原因にも。足裏にドームをつくるようにギュッと縮める動きで筋肉が刺激され、足元が安定して姿勢の改善や立位・歩行時の安定性も増す。

土踏まずの筋肉を動かすイメージで、親指の付け根をかかと側に寄せてまた元に戻す。3回行い、反対の足も同様に行う。
足指ジャンケン
日頃、靴の中で縮こまった足指をゆっくり大きく動かすことで、足指の筋肉や足裏のアーチを支える筋肉が活性化。血流やリンパの流れを促進してむくみが解消され、地面を掴む力が養われて歩行姿勢の安定にも。

[グー]足の指をすべて縮めてグーの形をつくる。
[チョキ]親指だけ上げてチョキの形をつくる。
[パー]すべての指を広げてパーの形をつくる。
グー、チョキ、パーを3回行い、反対の足も同様に。
朝や寝る前に! 応用編
足首の距腿関節と距骨下関節をほぐしてインナーマッスルを刺激したら、つま先をすねに近づけて“柔軟性”を高めるエクササイズを。足首まわりがしっかり動くように、裸足でやるのが◎。
コージ・ウォールプッシュ(※)
距腿関節の柔軟性を高める、こちらも室伏さん考案のエクササイズ。ヒールの高い靴をよく履く人は、足首の関節がつま先側に下がる状態が続き、つま先を上げる際の可動域が制限されやすい。足首をしっかり曲げて行おう。

(1)壁から足4つ分離れた位置に左足を置き、壁に両手をついて右脚を後ろに伸ばす。左足のかかとを床から離さずに左膝を曲げて両足首を背屈させ5秒キープ。

(2)両手で壁をしっかり押しながら右膝を壁に近づけ、左膝を伸ばして左足首を背屈させて5秒キープ。(1)と(2)を3回繰り返し、反対の足も同様に行う。
※初出:スポーツ庁 身体診断「セルフチェック」「改善エクササイズ」の手引き
お話を伺った方
Profile
金岡恒治
早稲田大学スポーツ科学学術院教授。体幹深部筋研究の第一人者でアテネや北京五輪の水泳チームドクターを務め、現在はスポーツ庁と連携し運動習慣の普及活動に注力。
写真・土佐麻理子 スタイリスト・仮屋薗寛子 ヘア&メイク・浜田あゆみ モデル・岩田絵莉佳(セントラルジャパン) 取材、文・熊坂麻美
anan 2465号(2025年10月1日発売)より