6方向の可動域を持ち、立つ、歩く、座るなど、あらゆる動作の起点となる股関節。骨盤と太ももの骨を繋ぎ、上半身の重さを支える役目も果たしている。
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「股関節は、“体の土台”として非常に重要です。股関節を6方向に動かせれば、骨盤が正しい位置で安定し、姿勢が良くなって歩行や動作がスムーズに。連動するお尻や太ももの筋肉もきちんと働いて、引き締まるでしょう」(早稲田大学教授・金岡恒治さん)
股関節は、長時間のデスクワークや運動不足によって硬くなり、動かしにくくなるという。
「股関節を動かす筋肉の衰えや柔軟性の低下により、股関節の可動域は下がりやすいですが、毎日のエクササイズで改善できます。またウォーキングや階段の上り下りは、股関節まわりの筋肉の強化に最適です。運動が苦手な人も積極的に取り入れてみてください」
股関節は、前後左右、回転やひねりなど6方向に動く!

股関節6方向の動きと役割
屈曲
太ももを上体側に近づける動き。階段を上がる、椅子に座るなど、日常動作のほとんどに関与。腸腰筋や太もも前面の大腿直筋が「屈曲筋群」として関わる。
伸展
歩行や走行の蹴り出しに使う、太ももを後ろに引く動き。大臀筋やハムストリングが安定を支えている。伸展が弱くなると、歩幅が狭いチョコチョコ歩きに。
内転
脚を揃えるなどの、太ももを体の中心に向かって閉じる動き。内転筋群は骨盤底筋や腹斜筋と連動して働き、体幹を安定させて、反り腰や姿勢の改善にも関わる。
外転
太ももを体の中心から外側に開く動き。中臀筋や小臀筋が「外転筋群」として働き、歩行時の片足立ちになる瞬間などにバランスを保ち、骨盤の支え役として機能。
内旋
太ももを内側にねじる動きで、姿勢保持やスポーツ動作に関わる。内旋筋群がしっかり働くことで骨盤が前に傾き、重心の安定性が向上。腰痛予防にも効果が。
外旋
太ももを外側にねじる動き。外旋に関わる筋肉が骨盤を安定させ、歩行や走行時に骨盤の回旋運動をサポート。外旋筋群が硬くなると、猫背やO脚の原因にもなる。
股関節の可動性を簡単にチェック。これがキツイと、要注意!?
(初出:スポーツ庁 身体診断「セルフチェック」「改善エクササイズ」の手引き)

1、壁の前に立ち、片方の脚を90度に上げてひざを壁につける。

2、その姿勢のまま、足を左右に振って左手でくるぶしの左側を、右手でくるぶしの右側を触れるか確認する。
これはNG!
・片足で立った時、ふらつく。
・くるぶしに触れない・くるぶしに触ろうとすると姿勢が崩れる。
・90度まで脚を持ち上げられない。
NGに1つでも当てはまったら、エクササイズを
上のチェックで、くるぶしに触れなかったり、姿勢が傾いてしまった人もご心配なく。毎日できる範囲で、股関節まわりの筋肉を鍛えていけば、可動域は少しずつ広がります!
【朝:下半身引き締めルーティン】股関節を覆うインナーマッスルは朝動かす
屈曲や伸展などの股関節の動きを支えるインナーマッスルは、朝に刺激を加えることで、日中の姿勢や動作全体が安定しやすくなる。下半身の血流が促進され、冷えやむくみの予防効果があるほか、交感神経が活性化されて、体がシャキッと活動モードに!
バックブリッジ
【伸展】まずはこれだけ、起床時の基本エクササイズ
伸展に関わる大臀筋と太もも裏のハムストリングを鍛えつつ、骨盤底筋などのインナーマッスルも刺激。つま先で円を描く動きは股関節をなめらかにして可動域を広げる効果も。

1、仰向けに寝て、両ひざを立て、太ももとお腹が一直線になるようにお尻を上げる。
2、片脚を伸ばし、つま先で円を描くようにゆっくり左回り右回り3回ずつまわす。脚を替えて同様に。
バックブリッジができて、余裕がある人は以下の3つにもチャレンジ!
四つ這い片脚回し
【伸展】お尻と裏ももにもアプローチ
片脚を後方に持ち上げることで大臀筋がしっかり刺激されてヒップアップに繋がる。円を描くと深層筋が鍛えられ、股関節の動きもスムーズに。骨盤を水平にして行うのが大切。

1、肩の下の位置に両手をつき、四つ這いになる。
2、片方の脚を後ろに上げ、つま先で円を描くようにゆっくり左回り右回り3回ずつまわす。脚を替えて同様に行う。
サイドブリッジ
【外転】外転の主要な中臀筋を鍛える
ひじとひざで体を支えて体幹を鍛え、脚を外側に開いて回す動きで、外転筋群の中臀筋や小臀筋を強化。脚を回すのがむずかしければ、2の姿勢をキープするだけでもOK。

1、左ひじを床につき、左脚は後ろに曲げて右脚は伸ばす。
2、左ひじと左脚で体を支えながらお尻を上げ、右腕を上に伸ばしてバランスをとる。右足のつま先で円を描くようにゆっくり左回り右回り3回ずつまわす。反対側も同様に。
インサイドブリッジ
【内転】体幹と内転筋群を強化する
横向きで肩、腰、ひざが一直線になるようにキープすることで、腹横筋や腹斜筋などのインナーマッスルを刺激。脚をクロスする動きで、内ももの内転筋群を強化できる。

1、左手を床について両脚を伸ばし、右腕を上げてバランスをとる。
2、左足を少し上げてクロスさせ、3秒キープする。反対側も同様に行う。
お話を伺った方
Profile
金岡恒治
早稲田大学スポーツ科学学術院教授。体幹深部筋研究の第一人者でアテネや北京五輪の水泳チームドクターを務め、現在はスポーツ庁と連携し運動習慣の普及活動に注力。
写真・土佐麻理子 スタイリスト・仮屋薗寛子 ヘア&メイク・浜田あゆみ モデル・岩田絵莉佳(セントラルジャパン) 取材、文・熊坂麻美
anan 2465号(2025年10月1日発売)より