上咽頭の慢性炎症があらゆる不調の原因に。
医師として臨床の現場に立つ堀田修先生によると、コロナ禍以降、咳喘息や慢性疲労、頭痛など、体調不良に悩む人は増加傾向にあるという。
「そういった体調不良の原因の中に、上咽頭の慢性炎症が考えられます。上咽頭は、吸い込んだ外気の通り道。つまり細菌やウイルスの侵入を防ぐ免疫の要であると同時に、副交感神経の一種である迷走神経が集中していて、脳とも関わりが深い部位。そのため、上咽頭の炎症は免疫や脳に悪影響を及ぼし、様々な不調が起こるのです」
思い当たる体調不良がある人は、堀田先生が提案する上咽頭のケアを取り入れてみて。それでも不調が続くなら、上咽頭の炎症を抑える治療法を行う専門の医療機関に相談してみよう。
◎上咽頭とは?
鼻の奥のつきあたり、のどの上部分が上咽頭で、鼻から吸った空気が入る場所になる。外気に含まれるほこりや細菌、ウイルスなどが体内に侵入しないよう、異物を捕らえて押し出す粘液や、様々な免疫細胞が配備されている。
【CHECK1】こんな症状はないですか?
・喉が痛い、喉に違和感がある
・咳が長く続く
・ふわふわした(浮動性の)めまいがある
・頭痛
・鼻づまり
・痰がからむ
・疲れが取れない
・朝起きられない
・首こり、肩こり
・背部の重苦しさ
→当てはまるものが2つ以上ある場合
【CHECK2】胸鎖乳突筋の状態
胸鎖乳突筋に張りや痛みがある
胸鎖乳突筋とは、耳の後ろから胸骨に向かって走る筋肉のこと。ここを指で押さえたときに痛みがあると、慢性上咽頭炎の可能性あり。
CHECK1・2どちらか当てはまるなら…上咽頭炎の可能性が!
【急性上咽頭炎】細菌やウイルスに感染して発症。いわゆる風邪。症状は、喉の痛みや咳、鼻づまりなど。
【慢性上咽頭炎】急性上咽頭炎をきっかけに発症。自覚症状に乏しく、日本人の約8割が患っている説も。
“風邪は万病のもと”という言葉通り、あらゆる不調の原因になる上咽頭炎。上咽頭をケアして、不調から抜け出そう!
鼻呼吸の習慣づけをする。
慢性上咽頭炎を防ぐには、まず鼻呼吸、と堀田先生。
「鼻には、ほこりや細菌、ウイルスの侵入を防ぐために鼻毛、絨毛、粘液、免疫細胞などが備わっています。また、鼻から入った空気は適度に加湿・加温され、炎症を起こしにくくなっています。ところが口にはそのような仕組みがないので、口呼吸が身についていると、外敵が侵入して上咽頭炎を起こしやすくなります。口呼吸になりがちな人は鼻呼吸になるよう訓練して、上咽頭炎を防ぎましょう」
鼻呼吸ができているかチェックしてみよう
近年は花粉症の増加やスマホによる姿勢の悪化などが影響して、口呼吸をする人が増えているという。
起床時の舌の位置は?
○鼻呼吸:舌先の位置が上前歯の裏側もしくは上顎
×口呼吸:舌先の位置が下前歯の裏側
口呼吸の人の舌の特徴が当てはまっていないか?
・舌の側面に歯型がつく
・舌先がギザギザ
口呼吸の人は、舌先が上顎から離れていて、舌の位置が下がりがち。すると舌の側面や先が歯に当たり、フチがギザギザになりやすい。
鼻呼吸トレーニングをしよう
【TRAINING1】舌の位置が上がる、舌で上顎押しトレーニング
舌先を上顎に押しつける訓練を習慣づけすると、舌の筋肉が鍛えられて、舌の位置が上に。すると、口を開いていても喉が舌で塞がれるので、鼻呼吸がしやすくなる。
1、口を軽く開ける
2、舌先を上顎のくぼみに押し当てる
【TRAINING2】口まわりの筋肉を緩ませる「かっ・に~・ゆ~・で~」体操
上のイラストの口の形で「かにゆで」と発音する。舌の筋肉だけでなく口輪筋も強化できるので、ほうれい線予防にも効果的。
1、「かっ」舌先を上顎につける
2、「に~」口角を上げながら口を横に大きく開く
3、「ゆ~」唇の先をつぼめて突き出す
4、「で~」舌先を鼻につけるイメージで上に突き出す
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PROFILE プロフィール
堀田 修先生
内科医。堀田修クリニック院長。腎臓病の治療に際して、上咽頭の炎症が様々な病気を引き起こす可能性に着目。近著に『いつまでも消えないつらい疲れ・だるさの正体 慢性疲労を治す本』(あさ出版)ほか。