痛みや経血の量をコントロール! 生理トラブルは解決できます。
初めてなったその日から何度も繰り返してきたのに、そのメカニズムとなると知っていそうで意外と知らないのが生理。押さえておきたいポイントを高橋先生とおさらい!
「受精卵が着床しなかった場合に、子宮の壁からはがれ落ちた内膜が血液などとともに経血として体外に排出されるのが生理で、一般的に5~7日間続きます。生理が始まった日から次の生理の前日までを数えた日数が生理周期で、28~30日が正常とされています。10~14歳の間に初潮を迎えることが多く、50歳頃に閉経します」
初潮や閉経の時期、期間や周期など生理にまつわることには個人差が大きい。そのため前述の数字から多少外れても過剰な心配はいらないが、病気が隠れている場合もあるので、検査を受けると安心。
また、経血量にも個人差があり、1回の生理期間中の経血量は20~140ml。そう言われてもなかなかイメージが湧かず、他人と量を比較するわけにもいかないので、自分の経血量が多いのかどうか判断がつきにくいことも。
「日中でも夜用のナプキンを使っている人、ナプキンやタンポンが1時間もたない人は量が多いといえます。量が多くて困っている方は、低用量ピルでコントロールすることもできます」
低用量ピルは、生理痛を軽減するのにも有効。
「生理痛がひどい人は、生理痛がない人と比べ、将来、子宮内膜症にかかる可能性が1.3倍といわれています。予防的な意味でも低用量ピルを選択肢として考えてみてもいいかもしれません。そして、大前提として“生理の大変さはコントロールできる”ということを痛みなどに悩む女性には知っていただきたいです。特にまだ妊娠・出産を考えていない方や、もう子どもを望まないという方で、生理がしんどければ生真面目に付き合わずコントロールする方法を考えてみるのもいいのでは」
子宮の構造
【子宮】
受精卵が着床すると胎児を育むベッドの役割を果たす。成人の子宮は鶏卵ほどのサイズで骨盤に守られている。
【卵管】
卵巣と子宮を繋ぐ約10~12cmの管で、受精は卵管内で起こる。また、卵子を子宮に運ぶ働きも担う。
【子宮内膜】
エストロゲンによって厚みを増し、受精卵の着床に備える。着床しない場合はがれ落ちる。これが生理。
【卵管采】
卵管の先端に位置するイソギンチャクのような形をした器官。排卵期に、卵巣から排卵された卵子を取り込む。
【卵巣】
妊娠に必要な卵子がストックされており、およそ月に1回の頻度で排卵される。女性ホルモンの分泌も担う。
【腟】
子宮と外陰部を繋ぐ内性器で長さ約7cm。腟内の乳酸菌が雑菌の侵入を防ぐ。おりものは腟などからの分泌物。
生理のトラブルシューティングQ&A
生理痛、経血量、周期…。つらさも人それぞれの生理トラブル。どの程度で産婦人科を受診すべきかわからないという方に。考えられる疾患とともに、対処法を教えてもらいました。
Q 生理痛がひどく、起き上がれないほどの痛みに襲われることも…。
A 痛みを感じたらすぐに生理痛薬を使って! 隠れた疾患にも注意を。
「生理痛の原因の一つは、子宮内膜がはがれる時に分泌されるプロスタグランジンという痛みを引き起こすホルモン。生理痛薬はこの物質が全身に回る前、つまり痛みを感じたらすぐに飲むのがコツ。激痛の場合は疾患が隠れていることも」
経血がレバーのように固まっていることが多いです。
A 固まって出てきたサイズによっては受診が必要です。
「血液が腟内で停滞して固まって“レバーのような塊”となって出ることはあります。ぎょっとするかもしれませんが、これ自体はさほど心配はありません。ただ、その塊が500円玉以上に大きい場合は、多量出血が疑われるので受診を」
Q 生理が月に何度もくることがあります。
A 月3回以上の場合は、大きな病気による不正出血の疑いアリ。
「毎回同じタイミングで2度目の出血があるのなら、排卵に伴う出血の可能性が高く、病気ではないので心配ありません。低用量ピルでコントロールもできます。ただ、1か月に3回以上の出血は、不正出血が疑われます。急いで病院へ」
Q 経血の量が多いです。日中、普通のナプキンでは収まらないため夜用をつけていることも。
A 経血の量のコントロールは可能! 出血量を減らす治療を。
「ナプキンとタンポンを併用しても漏れるほど多ければ受診を。出血量を減らす治療ができます。考えられる病気は子宮筋腫と、子宮内膜症の中でも子宮の筋肉にできる子宮腺筋症が。子宮の出口にポリープができて出血している可能性も」
Q 生理中、血が出る日数が極端に少ないことがあります。
A 周期が安定していれば過剰に心配せず大丈夫。経過を見ましょう。
「1~2日で終わるのは排卵がうまくいっていない可能性が高いです。決まった周期で生理がきているのなら経過を見てもいいでしょう。低用量ピルを飲んで出血量が減ったと心配する方がいますが、薬の正常な作用なので問題ありません」
Q 経血の色が黒に近いような、濁っている時がある。
A 血液が腟内に停滞した時間によって色は変化します。
「血液が腟内に停滞する時間が長くなるほど色が濃くなり、出てきた時に黒っぽく感じます。もし、黒っぽいカスがちょろちょろと出続ける場合は、出血が腟からなのか、子宮内や子宮頸部からなのか原因を突き止めるためにも病院へ」
Q 生理前は便秘になりやすく、生理が始まると下痢になりやすいです。
A 女性ホルモンにカラダが素直に反応できている証拠!
「生理前に便秘になりやすいのは、女性ホルモンのプロゲステロンが増えて体内に水分を溜め込み、腸内の水分が減るから。生理が始まるとプロゲステロンは減り、腸に水分が戻って下痢に。ごく正常なサイクルなので心配はいりませんよ」
Q 妊娠の可能性はないのに、生理がいつもの周期からかなり遅れている。
A 生理が3か月以上遅れたらすぐに受診を。
「排卵がうまくいかず、生理が遅れる人は少なくありません。周期が遅れたり、バラバラであっても3か月以内に少なくとも1回はくるのであれば慌てずとも大丈夫です。ただ、無月経が3か月以上続いたら産婦人科を受診してください」
産婦人科医・高橋幸子先生 埼玉医科大学勤務。全国の学校で性教育の講演を年間100回以上行うなど性に関する啓蒙活動を積極的に行う。著書に『おとめのカラダ大全 今さら聞けない避妊・妊娠・妊活・病気・SEXの超キホン』(KADOKAWA)などがある。
※『anan』2024年10月16日号より。イラスト・伊藤ハムスター 取材、文・小泉咲子
(by anan編集部)