八百万の神が出雲に集い、ご縁を巡って会議を開く旧暦10月は、一般的には神々が留守ゆえ別名を神無月。逆に出雲国は神在月、良縁を願うならこれを逃す手はない!
Index
目に見えぬ幽世を司る、大国主大神のお膝元へ
そもそも出雲が縁結びの聖地となったのは、古事記にも描かれた国譲り神話から。地上の国づくりを終えた大国主大神のもとに、高天原の天照大御神から自分の子孫に国を譲るようにと使者が遣わされる。紆余曲折を経て国譲りが行われた後、目に見える現実の世界・顕世は天照大御神の子孫が、目に見えない幽世は大国主大神が司ることに。その幽世の中でも特に重要なのが人と人の縁。ゆえに出雲は、良縁を求める人が目指す聖地になったのだとか。
神在月には、出雲大社だけでなく佐太神社や日御碕神社などでも神事が厳かに執り行われる。神々を迎えてから見送るまでの期間、人間は神々の邪魔にならぬように身を慎むのがお約束。地元では古くから歌舞音曲、喧騒は避けて静かに過ごしてきたのだとか。私たちも大声を出したりはしゃいだりせず、いつも以上に敬意を持って参拝すべし。
心身の穢れを祓い清めて心機一転、新たな縁の糸を手繰りに、霊験あらたかな古社や神々の物語を伝える地を巡りましょう。

1、稲佐の浜(出雲市)
神在月に八百万の神が寄り付く聖なる浜。
出雲大社の西へ1kmの地点に広がる白砂の浜辺。海を背に佇む弁天島が印象的だ。『出雲国風土記』の国引き神話では、はるか南にそびえる三瓶山を杭にして綱をかけ海の彼方から土地を引き寄せて島根半島とし、その綱が稲佐の浜から南に続く薗の長浜になったとされる。また古事記の国譲り神話では天照大御神の使者・建御雷神(タケミカヅチノカミ)と大国主大神が対峙した場所であるとも。神在月に八百万の神々が上陸する地点で、毎年旧暦10月10日の夜にはここで八百万の神を迎える「神迎神事」が執り行われ、出雲大社の神在祭がはじまる。
出雲市大社町杵築北
2、日御碕神社(出雲市)
古くから「日の本の夜を守る」夕日の聖地。
出雲大社から海沿いを車で15分ほど進むと、緑の中に鮮やかな朱色の社殿が現れる。経島を望む小さな湾の一画に鎮座する日御碕神社は、天照大御神を祀る日沉宮(ひしずみのみや)と素盞嗚尊を祀る神の宮からなり、古くから朝廷の崇敬を受けた。平安時代末期には京にまで聞こえる修験の聖地として栄え、武家の時代にも有力大名が手厚く保護。3代将軍家光の命で造営された社殿は、日光東照宮に通じる絢爛さを今に伝える。経島と水平線に沈む夕日は圧巻。日常を忘れてまっさらな自分に戻れる。
出雲市大社町日御碕455
3、佐太神社(松江市)
導きの神のもとで悪縁を切り、良縁を結ぶ。
奈良時代に編纂された地誌『出雲国風土記』にも記載された歴史ある神社。主祭神の佐太大神は出雲四大神の一柱にして導きの神。諸悪厄災を剣で切り祓う「悪切祈祷」が伝わり、摂社の田中神社は悪縁切りと良縁結びのご利益あり。男女の縁だけでなく、なかなか断ち切れない人間関係や悪癖を断つため遠路はるばる詣でる人も少なくない。背後の三笠山には伊弉冉尊(イザナミノミコト)を祀る母儀人基社(はぎのひともとしゃ)があり、旧暦10月に八百万の神が出雲に集まるのは母神である伊弉冉尊を偲ぶためとも伝えられる。
松江市鹿島町佐陀宮内73
4、八重垣神社(松江市)
ご縁の早さ遅さ、近く遠くを占う鏡の池へ。
出雲国に降り立った素盞嗚尊が八岐大蛇を退治して稲田姫命と夫婦となり宮を建てた地に鎮座。妻をめとった喜びを歌に詠み、これが日本初の和歌となったというエピソードも。ゆえに古くから縁結びのご利益ありと崇敬されてきた。稲田姫命が姿を映したと伝わる鏡の池では、占いのための紙を浮かべて硬貨を乗せ、沈む様子でご縁の行方を判じる占いも。早く沈めばご縁も早く、遅く沈めばご縁も遅い。近くで沈めば身近な人と、遠くで沈めば遠方の人とご縁があるとか。
松江市佐草町227
5、美保神社(松江市)
島根半島の両端で、えびすだいこく両参り。
全国のえびす社3385社の総本宮。御祭神は高天原から稲穂を持って天降り大国主大神の后神となった三穂津姫命と、大国主大神の御子神として国譲りに深く寄与した事代主神。ご神徳は福徳円満、海上安全、大漁満足、商売繁盛、歌舞音曲の上達。歌舞音曲の守り神である御祭神のため毎日朝夕に欠かさず奉納される巫女舞は実に厳かで美しい。大黒さまこと出雲大社の大国主大神とえびすさまこと美保神社の事代主神の両方にお参りすると、親子神のご利益でさらに良き縁に恵まれるとか。
松江市美保関町美保関608
anan 2468号(2025年10月22日発売)より
MAGAZINE マガジン

No.2468掲載
秋の推し旅2025
2025年10月22日発売
anan恒例の旅特集!今回は“大人の遠足旅”をテーマに国内外、この秋行きたい場所をピックアップ。朝ドラで注目の松江をはじめ、ワインや栗、新米を堪能する八ヶ岳&諏訪のヌーボー旅、いまおさえたい北陸3県ときめき旅のほか、旅慣れた賢者が勧めるタイ・ソウル・台北・香港の週末旅プランなど、内容盛りだくさん。 私たちの毎日を彩った、食、暮らし、健康、美容、ファッション、そしてカルチャーたち。その輝きの数々をキーワードに落とし込み、ジャンル別にあらためてピックアップ。今年大活躍の白石聖さん、しなこさんも豪華に登場!




























