
「プライベートを充実させたいとも思うけど、やっぱり競馬が楽しいんです」
馬を華麗に操り、勝利へと導くジョッキーの存在も、競馬の魅力のひとつ。国内外のレースで数々の勝利を収める実力派、坂井瑠星騎手の素顔に迫ります。
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「笑顔が最大の喜びであり、支え」
今年9月に28歳の若さでJRA通算600勝を達成し、11月にはアメリカで行われた世界最高峰レース「ブリーダーズカップ・クラシック」で優勝を果たすなど、経験・実力・人気を兼ね備えた坂井瑠星騎手。
「デビューしてもうすぐ10年、順風満帆だと思われることも多いですが、4〜5年目までは勝てない時期が長く、苦労しました。ようやく少し、自分が理想としてきたジョッキーに近づけたかなという気がします」
ジョッキーという職業の醍醐味について尋ねてみると…。

「ジョッキーとしては、勝利の瞬間が最高に気持ちいいです。ゴール板を先頭で駆け抜け、目の前に自分と馬しかいない風景は何度経験してもたまりません。でもそれ以上に、勝つことでまわりの人たちが喜んでくれるのがうれしいですね。馬に乗るのはジョッキーですが、それまでに大勢の人が関わっているんです。馬を支えるスタッフさんをはじめ、牧場の方、調教師さん、馬主さんなどの笑顔が最大の喜びであり支えですね」
各レースに出走するのは最大18頭だが、勝つのは1頭。後悔したくないからこそ、勝つための準備は怠らないという。
「誰よりも競馬が好きだし、誰よりも競馬を見ている自負があります。自分が乗る馬のことはもちろん、他のジョッキーの癖、レースに出走する馬の顔ぶれ、競馬場など、そのレースにおいて勝ちやすい乗り方が存在すると思っているので、常にあらゆるレースの動画や情報を見て研究しています」
「馬との五感を通した対話を大切にしています」
もちろん、馬とのコミュニケーションも必須だという。

「馬は喋れない分、表情が豊かで、耳の動きや目の輝き、息づかいなどで気持ちを伝えてくれます。馬に乗っている際、背中から感じられる情報も。馬は緊張すると背中が硬くなるので、鞭の使い方を変えたりして、馬との五感を通した対話を大切にしています」
馬にはそれぞれ個性があるが、牡馬と牝馬で性格がかなり違うのも面白いのだそう。
「牡馬はすぐサボりたがるので、しっかり走るよう指示するぐらいの方が実力を引き出せますが、牝馬はあまりしつこくすると怒ってしまうんです。馬って、怒ると耳が後ろにクイッと動くんですよ。そうなると機嫌を損ねてしまうので、なだめてお願いするように走ってもらうことも(笑)」
遊びに行く感覚でレースを観てもらいたい

プライベートでの楽しみは?
「平日は夜中に起きて調教のために厩舎に行き、週末は日本各地のレースで乗るような仕事中心の生活。寝ている時間が一番幸せです。でも暇より絶対に忙しい方がいいタイプなので、今の生活が性に合っています。自分のことはけっこう面倒くさがりなんですが、馬やレースのことになるとストイックに突き詰めるタイプですね。幼稚園の頃からの夢を実現して、やりたいことを仕事にできているので、純粋に好きでやっている感じです。趣味も欲しいと思いつつ、今は競馬が趣味になってしまいますね」
最後に、初心者でも競馬を楽しめる方法について聞いた。
「まずは一回、実際に競馬場に足を運んで生のレースを体感してもらいたいですね。競馬場でレースを観ると、まず馬の足音に圧倒されるはず。あの迫力は競馬場だからこそ感じられるものなので、ぜひ体感してもらいたいです。競馬場って男性が多いイメージかもしれないですが、最近はそんなこともなくきれいだし、女性や家族連れのお客さんも多いんですよ。ランチやカフェに行くような感覚で楽しめる場所になっています。その延長でレースを観てもらえたらうれしいですし、推しの馬やジョッキーに出会えたら、より楽しめるようになると思います」
Profile

坂井瑠星
さかい・りゅうせい 1997年5月31日生まれ、東京都出身。2016年デビュー。国内外にて幅広く騎乗経験を積み、'22年に秋華賞でJRA・GⅠ初制覇。JRAのGⅠを6勝('25年11月23日現在)。11月2日には、世界最高峰のレース「ブリーダーズカップ・クラシック」にてフォーエバーヤングに騎乗し優勝。日本馬および日本人騎手として初となる歴史的快挙を成し遂げた。
ニットジャケット ¥44,000 シャツ ¥30,800(共にクルニ/クルニ フラッグ シップ ストア TEL.03・6416・1056) パンツ¥6,600(リメール/リメール ストア TEL.03・6276・7644) その他はスタイリスト私物


























