吉高由里子さん
吉高由里子さんの3年ぶりの舞台は、出演を熱望していた蓬莱竜太さんの作・演出する『シャイニングな女たち』。
今の自分と対峙させられるような感覚になる作品です
「蓬莱さんの作品は、“演劇を観てきた”とは思えないぐらい、自分の中で忘れかけていた感情を奥底から取り出されたような感覚になるんです。誰かと共有するんじゃなく、何がどう響いたかを自分自身の心の中で確かめていくような作品で、いま生きている自分と対峙させられるようなまっすぐさを感じます」
主人公が偶然にも大学時代のフットサル部仲間のお別れの会に遭遇し、はからずもかつての仲間たちと再会する。キャプテンを務めていたにもかかわらず、自分に声がかからなかったのはなぜなのか。そこから、過去と対峙してゆくことになる。
「やられた側はその瞬間の空気まで鮮明に覚えていても、やった側の記憶って薄れていっちゃうんですよね。この作品と対峙することで、自分も、誰かを傷つけてしまったかもしれない過去が思い出されて、そのことに傷ついて悲しくなったりするのかなと思うと…(苦笑)。ただ、日常的に他人のお別れの会に紛れ込むって、きっとどこか自分の中に欠落を感じていたり寂しさがあるからだと思うんです。自分が幸せなときって、悲しいものに寄っていかないだろうから、味のしなくなったガムを噛み続けているような日々をおくっているのかもしれません」
蓬莱さんからは、吉高さんならあまり暗くなりすぎずやってくれるんじゃないかと言われたのだとか。
「そう言われると逆に、どんな暗いことが待っているんだろうって思いますよね(笑)。忘れたい、覚えていてほしくないようなことが、次々とあぶり出されてくるような作品になるんじゃないでしょうか」
取材中「舞台みたいなあんな恐ろしい場所、できれば立ちたくないですよ」と笑顔でぶっちゃけた吉高さん。映像とは違い、本番の幕が開いたらやり直しがきかない場所。
「これは映像の現場でもですが、自分のせいで現場を止めたくないんです。とくにやり直しができない場所だから、舞台をやっている間、くじけそうになったときに自分で自分を立て直す精神力が鍛えられる期間な気がするんです」
それでもやっぱり挑戦してしまうのは、なぜなのだろう?
「やってしまった反省よりも、やらなかった後悔の方が、私は人生で一番怖いことだなって思ったりするんです。失敗したときの反省は、時間がたてば成仏していくけれど、やればよかったという後悔は、いつまでも成仏していかないんですよね」
俳優として目覚ましいキャリアを積み上げながらも、つねに柔軟で軽やかな印象がある。しかし何気ないこの言葉に、吉高さんの内側の、演じることに対する執着のような熱を見た気がした。
「いつまででもできる職業ではあるけれど、いつでも辞められる職業でもあるじゃないですか。だから、いつまでモチベーションって続くんだろうっていう感じはあります。それでも今やり続けている理由は、自分よりも“他人”の存在かもしれないです。自分の幸せってなんだろうって思ったときに、自分が何かをやって人が喜んでくれたり、笑っていたりするのを見るのが好きなのかもしれない。体力的に大変な現場も、自分だけじゃないから乗り越えられる。自分だけのことだったら、たぶん続いてないと思います」
Profile
吉高由里子
よしたか・ゆりこ 1988年7月22日生まれ、東京都出身。近作に、主演を務めた大河ドラマ『光る君へ』のほか、ドラマ『風よ あらしよ』『星降る夜に』など。舞台出演は2022年の『クランク・イン!』以来となる。
information
パルコ・プロデュース 2025『シャイニングな女たち』
社会人として働く傍ら、他人のお別れの会に紛れ込み、ビュッフェを食べて帰るという行為を繰り返していた金田海(吉高)。ある日、紛れ込んだお別れの会で、大学時代の仲間たちと再会し…。上演中~12月28日(日) 東京・PARCO劇場 作・演出/蓬莱竜太 出演/吉高由里子、さとうほなみ、桜井日奈子、小野寺ずる、羽瀬川なぎ、李そじん、名村辰、山口紗弥加 全席指定1万2000円ほか パルコステージ TEL. 03-3477-5858 大阪、福岡、長野、愛知公演あり。詳細はこちら
写真・野呂知功(TRIVAL) スタイリスト・申谷弘美 ヘア&メイク・中野明海 インタビュー、文・望月リサ
anan 2475号(2025年12月10日発売)より





























