旅行者にもやさしい銭湯で京都ならではの銭湯体験を。
西と東では、浴場の装飾や脱衣所での作法にも違いがある。そこで、まずは京都ならではの銭湯体験ができる老舗から。いずれも大正時代創業の「長者湯」と「鴨川湯」には、浴場のカラフルなモザイクタイル、柳行李(やなぎごうり)を木製ロッカーに収納する習慣など、京都特有の意匠や仕様が残る。サウナが無料だったり、地下水を薪で沸かすところは同じだが、施設としての味わいにはそれぞれの個性も。代々家族で経営し、家庭的な温かみが魅力の「長者湯」に対し、古い銭湯の再生を手掛ける「ゆとなみ社」系列の「鴨川湯」では、手書きの浴室新聞やオリジナルグッズの展開など、若い世代が親しみやすい雰囲気づくりに力を注ぐ。
「若者を銭湯へ」の掛け声のもと、銭湯人口の若返りに寄与する「ゆとなみ社」のような存在もあれば、全く違うアプローチで注目される銭湯もある。それが「梅小路ポテル京都」内の銭湯「ぽて湯」だ。銭湯絵師が描くしっぽりとした銭湯絵や、浴場全体を彩るモザイクタイル、こだわりの固定式シャワーなど、細部まで作り込んだ“ザ・銭湯”を「ホテルの外風呂」に。昔懐かしい銭湯の風情とホテルの快適性を兼ね備えた浴場施設は、初心者にはうってつけだろう。この夏は京都ホッピングの合間に銭湯でリフレッシュ。京都の暑さ対策に、まちの銭湯を積極的に活用してみて。
鴨川湯(北大路)
銭湯の次世代を担う「ゆとなみ社」がまちの銭湯をアップデート。
「サウナの梅湯」をはじめ、京都を中心に計9軒の銭湯を率いる「ゆとなみ社」が2023年夏に継業。昔ながらの風情を残しつつも、銭湯を愛する若いスタッフにより細部のテコ入れを敢行。興味をそそる外観、ゆったりと過ごせる待ち合い、気の利いた湯上がりドリンク、普段使いしたくなる銭湯グッズの数々など、銭湯初心者に刺さる仕掛けが新たなファンを獲得。浴場に貼られたスタッフ手書きの壁新聞「鴨川湯だより」や名店揃い踏みの鏡広告も楽しい。左京区下鴨上川原町56 TEL:080・3916・6540 14:00~翌1:00 火曜休 料金/大人¥490 https://yutonamisha.com/sento/kamogawayu/
長者湯(西陣)
まるで民俗博物館。歴史的価値の高い意匠の数々に見惚れる。
3代目の間嶋正明さんが家族で切り盛りする、地域に根差した銭湯。唐破風(からはふ)と呼ばれる独特の屋根の造形は同銭湯のシンボルであり、京都市の歴史的意匠建造物にも指定されている。昨年30年ぶりの大規模改修を行い檜のサウナを新設したが、柳行李で統一した脱衣かごやお釜式ドライヤーなど、創業以来のこだわりが随所に見られる。脱衣所には尺貫法時代の目盛りが付いた希少な体重計も。2007年公開の映画『舞妓Haaaan!!!』の撮影地としても有名。上京区上長者町通松屋町西入ル須浜東町450 TEL:075・441・1223 15:10~24:00 火曜休 料金/大人¥490 Xは@choujayu
梅小路銭湯 ぽて湯(梅小路)
充実の設備を誇るホテル内の銭湯は銭湯初心者にも心強い。
「梅小路ポテル京都」は2020年開業。横丁エリアにある「ぽて湯」ではホテル宿泊客と地元民が仲良く汗を流す。銭湯の使い方を分かりやすくレクチャーするイラストガイドが掲示されており、初心者も安心。ソープ類完備、タオルの有料レンタルもあり、身ひとつで利用できる。牛乳石鹸とコラボした銭湯アイテムも好評。浴場内には半露天風呂やサウナも。真向かいの「梅小路醗酵所」には湯上がりにうれしいドリンクが。下京区観喜寺町15 TEL:075・284・1100 15:00~20:00(宿泊者は~24:00、6:00~10:00) 料金/大人¥800(宿泊者は宿泊料に含む) https://www.potel.jp/kyoto/
※『anan』2024年7月17日号より。写真・中部里保 取材、文・鈴木敦子
(by anan編集部)