脳を効率よく冷やすアクションで、快眠に導く。
「ぐっすり眠りたいなら、脳を冷やす“冷活”がカギになる」と話すのは、東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身さん。
「脳や臓器など、体の中心の機能を守るために一定に保たれる『深部体温』を下げることで入眠しやすくなることは一般的によく知られていること。しかし暑い時期は、気温が高く熱がこもりやすいので、脳の深部体温が下がりにくく、眠りの質に影響を与えます。脳は自律神経を通して、筋肉や臓器など体内のすべての器官の働きをコントロールする司令塔。その大切な脳がオーバーヒートしたまま眠りにつくと、自律神経の負荷が増し、疲れが取れにくくなり、頭痛などの不調を招く場合も。だから良い睡眠を得るために、脳を冷却して、休息モードにしてから眠ることが大事なんです」
そのためにお風呂、入浴後の過ごし方、寝室環境の3つに分けて、脳の冷活新習慣を紹介。
お風呂編:脳がのぼせないように、ぬるめの湯に短時間浸かる。
日中、仕事などで酷使して温度が上がった脳を手っ取り早く休息モードに持っていくための手段が、お風呂。
「入浴後は、熱が放出されて体温を効率よく下げることができます。深部体温は60~120分かけてゆっくり下がっていくので、就寝の60~90分前の入浴がおすすめ。しかし、暑い日は入浴することで、逆に脳に負担がかかりやすくなることもあるので、長湯は禁物。のぼせないような対策を心がけながら浸かりましょう」(梶本さん)
POINT1:夏はシャワーだけでもOK!
暑い時だけでなく、忙しい時や疲れている時など、どうしてもお風呂に入りたくない日は、無理に入らなくて大丈夫。少し熱めの温度のシャワーで、全身をしっかり温めよう。
POINT2:換気or涼風モードを活用。
浴室の温度や湿度が高いと、脳に負担がかかりやすくなるので要注意。浴室乾燥機がある場合は換気or涼風モードを活用。ない場合は窓やドアを開けて、湿気を追い出す対策を。
POINT3:通常よりお湯の温度は低めに。
暑い日は39~40°Cのぬるま湯がベスト。しかし個人差があるので通常より1~2°C低めでOK。日中、冷房空間で過ごすことが多く、体が冷え切っている場合は少し熱めに。
POINT4:10分以上湯船に浸からない。
暑い日にお風呂に入るメリットは、水圧と浮力で全身の血液の循環を促し、疲労回復や不調改善の効果が高まること。体を温めるのが目的ではないため、さくっと済ませて。
入浴後の過ごし方編:リラックスして過ごすことで脳を休息モードに切り替える。
入浴後に自然と体温が下がるメカニズムを利用して、穏やかに過ごすことで睡眠の質を向上させられる。
「副交感神経が優位になりやすいので、脳の興奮を落ちつけて、心と体をリラックスさせましょう。集中して頭を使ったり、ストレスがかかるようなことも脳のオーバーヒートを起こす原因になるため、アクティブな活動は控えて、ゆっくり過ごして」
スムーズに入眠できるよう、軽いストレッチやマッサージもおすすめ。
POINT1:暖色系の照明にする。
蛍光灯などの青白い光は、睡眠ホルモン「メラトニン」を抑制する作用が強いため、夜は室内の照明を白熱灯など、温かい色の光に変えるとよい。間接照明だけで過ごすのもあり。
POINT2:好みの香りや音楽でリラックス。
心地よい香りや好きな音楽など、リラックスできる状態に持っていけるようなナイトルーティンを意識的に取り入れるのもあり。習慣にすると眠りスイッチが入りやすくなる。
POINT3:200~300mlの水分を補給する。
就寝中の発汗は深部体温を下げる働きがあり、体から多くの水分が奪われるので、先に水分補給を忘れずに。200~300ml程度なら、夜中に尿意を催す心配も少ないので安心。
POINT4:スマホやPCは極力見ない。
SNSや動画サイトは興味と関心を高め、覚醒を促す原因に。スマホやPCから出るブルーライトもメラトニンを抑制する働きがあるので、できれば寝る60分前にはやめること。
寝室環境編:就寝中も脳にとって快適な環境を作り、深い眠りを促す。
お風呂、入浴後の過ごし方で準備ができたら、最後のひと押し。布団に入ったら自然と眠くなるよう、脳に快適な環境を作ることも欠かせない。
「実は脳にとっての最適温度は22°C。しかし日本人は筋肉量が少なくて、22°Cでは寒く感じる人が多いので、脳を冷やして、体を冷やさない温度をキープすることが大切。エアコンを切って寝ている人でなかなか寝付けない方は、脳に熱がこもっている可能性が高いので、寝室温度を見直しましょう」
POINT1:照明を消す。
豆電球ほどの小さな光でも、睡眠を妨げることが分かっているので、できるだけ寝室は真っ暗にすること。ほのかな明かりがないと安心できない場合は、間接照明を活用して。
POINT2:室温は25~26°Cが理想的。
脳と体の適正温度を考えると25~26°Cが妥当だが、個人差があるので体が冷えない室内温度に。エアコンをつけたまま眠れない人は、扇風機や除湿機を使い熱がこもらない対策を。
POINT3:布団をかけて寝る。
脳は冷やして、体は冷やさないが鉄則。エアコンをつけて寝る場合は、顔から上だけ出して、首から足先まで布団をかけること。すると短い睡眠時間でもしっかりと疲れが取れる。
POINT4:鼻呼吸で脳に冷たい空気を送る。
鼻は脳の冷却装置といわれ、鼻呼吸することで、脳に冷たい空気を送り込むことができる。吸って、少し息を止めて、ゆっくり吐く、これを3回繰り返すと、スムーズに入眠できる。
グリシン入りドリンクで快眠を促すのも効果的。
エビやホタテなどの魚介類に多く含まれるアミノ酸の「グリシン」を摂取すると、手足の血流が増えて、深部体温が下がりやすくなるため、睡眠をサポートすることが医学的にも立証されている。食品だけで十分な量を摂取するのは難しいため、清涼飲料水や栄養ドリンクで補うのも手。就寝前に飲めば、夜間熱中症対策にもなる。
大正製薬 リポビタンアイススラリー for Sports
凍らせて飲む清涼飲料水。通常の氷よりも結晶が小さく、身体内部を効率よく冷却できる。深部体温を低下させることで入眠を促進。就寝30分前の飲用がおすすめ。グリシン3600mg配合。ハニーレモン風味。120g¥194(大正製薬 TEL:03・3985・1800)
ファイン ファイングリシンゼリー
1日分2包にグリシン3000mgを配合。さらに緑茶にも含まれているリラックスを促すテアニン、GABAもプラス。つるっとした喉越しで、デザート感覚で味わえる。ノンカフェインで糖類ゼロ。白ぶどう風味。6包入り¥430(ファイン TEL:0120・056・356)
アリナミン製薬 アリナミン ナイトリカバー
寝る前に飲むことも考えて開発された、寝ている間に疲労を回復する栄養ドリンク。抗疲労成分フルスルチアミン、グリシンなど、8種の有効成分が疲労と睡眠の質を改善。ジンジャー風味。50ml¥165*編集部調べ(アリナミン製薬 TEL:0120・567・087)
梶本修身さん 疲労回復専門医。「東京疲労・睡眠クリニック」院長。大阪市立大学大学院医学研究科 疲労医学講座特任教授などを歴任。理化学研究所生命機能科学研究センターで疲労と睡眠の研究を行う。著書に『すべての疲労は脳が原因』(集英社新書)など。
※『anan』2022年8月31日号より。イラスト・seko koseko 取材、文・鈴木恵美
(by anan編集部)