社会のじかん

7年で市場価値10倍に! 食糧不足の救世主「フードテック」とは?

ライフスタイル
2021.10.16
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「フードテック」です。

世界で進む食の技術革新。日本は後れをとらないで。

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フードテックとは、フード(Food)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語です。

たとえば急速冷凍。食品にマイナス30℃以下の冷気を吹きかけて、30分以内にマイナス18℃以下まで冷却します。この技術により、あらゆる食材を鮮度を保ったまま冷凍保存できるようになり、お寿司の冷凍も可能になりました。大手食品メーカーしか扱っていなかった急速冷凍が、一般商店向けに普及。コロナ禍で営業時間を短縮しなければいけなくなった飲食店が、急速冷凍の技術により、余った食材を長期保存したり、デリバリーや通販に回すなど、有効活用できるようになったのです。フードテックで目覚ましい進歩を遂げているのは、代替食品です。最近ではビーガンやアレルギーへの対応、健康志向により、大豆チーズや大豆ヨーグルトなど、大豆による乳製品の代用が進んでいます。肉の代わりに、大豆ミートや大豆ナゲットなどもよく目にするようになりました。

サンフランシスコの企業「イート・ジャスト」は、緑豆をベースにした植物性の卵を開発しました。卵液の状態でボトルに入れて、アメリカの主要マーケットで販売しています。

またイギリスのクォーン社は、糸状の菌を発酵させて、短時間でタンパク質を生成し食品にする技術を使い、高タンパクの肉の代替食品を生産。動物を殺す必要がない、代替肉のスタートアップ企業が年々増加しています。

世界の人口は2050年には97億人に達するといわれており、深刻な食糧不足が心配されています。また、牛を1頭育てるために必要な飼料の確保に大量の温室効果ガスを排出するなど、環境負荷が問題になっています。食糧不足、地球温暖化、食品ロスなど、SDGsの観点からもフードテックは欠かせないものになっています。

フードテック分野への投資額は世界的に2014年ごろから急増し、わずか7年で市場は10倍に伸びました。ところが、日本の投資額は海外に比べるとかなり少なく97 億円。アメリカのわずか1%程度です。世界のフードテック革命に日本不在という現実に、農林水産省は危機意識を高めています。

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堀潤 ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。

※『anan』2021年10月20日号より。写真・中島慶子 題字&イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)

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